IT企業の新入社員に向けた損益計算書の利益の種類についての解説
IT企業に限らず、どんな企業でも経営の成果を把握するためには「損益計算書」を読むことが大切です。損益計算書(PL、Profit and Loss statement)は、一定期間における企業の収益と費用をまとめたもので、最終的にどれだけの利益が出たか、もしくは損失が出たかを示すものです。
今回は、特に「利益」に注目して説明します。損益計算書にはいくつかの種類の利益が出てきますが、それぞれが企業の異なる側面を評価するために重要です。これから、それぞれの利益が何を意味するのかを一つ一つ見ていきましょう。
1. 売上総利益(Gross Profit)
まず最初に出てくるのが「売上総利益」です。これは、売上高から売上原価を差し引いたものです。
売上総利益 = 売上高 - 売上原価
売上高は、企業が製品やサービスを販売して得た金額です。IT企業の場合、例えばソフトウェアのライセンス販売や、クラウドサービスの利用料などがこれに含まれます。
売上原価は、製品やサービスを提供するためにかかった直接的な費用です。例えば、サーバーの維持費用や、ソフトウェア開発にかかったエンジニアの人件費などが該当します。
売上総利益は、ビジネスそのものがどれだけ効率的に利益を上げているかを示す指標です。つまり、製品やサービスを売るためにどれだけのコストがかかっているのかが分かります。
2. 営業利益(Operating Profit)
次に重要なのが「営業利益」です。これは、売上総利益から販売費や一般管理費(販管費)を引いたものです。
営業利益 = 売上総利益 - 販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費(販管費)とは、企業が事業を運営するためにかかる費用です。ここには、広告費、営業活動にかかる費用、オフィスの賃料、従業員の給料などが含まれます。
営業利益は、企業の本業でどれだけの利益を生み出しているかを表します。IT企業の場合、本業とはソフトウェアの開発や販売、サービスの提供などが該当します。この利益は、企業の「日常の事業活動」がどれだけうまくいっているかを判断する基準になります。
3. 経常利益(Ordinary Profit)
「経常利益」は、営業利益に営業外収益を足し、営業外費用を引いたものです。少しややこしいですが、営業活動以外の部分も含めた利益を表します。
経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用
営業外収益には、例えば銀行に預けているお金の利息や、他社の株式からの配当金などが含まれます。一方で、営業外費用には、借入金に対する利息や、投資の損失などが該当します。
この利益は、本業以外の収益や費用も考慮した企業全体の収益力を示します。IT企業であっても、たとえば投資先の株価の変動などが影響する場合があるため、経常利益のチェックは欠かせません。
4. 税引前当期純利益(Profit Before Income Taxes)
次は「税引前当期純利益」です。これは、経常利益に特別利益を加え、特別損失を差し引いたものです。
税引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 - 特別損失
特別利益は、通常の事業活動とは異なる一時的な利益です。例えば、IT企業が使っていた設備やビルを売却して得た利益などが該当します。一方、特別損失は逆に、一時的な大きな損失です。災害による損害や、事業の整理・再編成にかかるコストがこれにあたります。
税引前当期純利益は、税金が引かれる前の最終的な利益です。企業が一時的な要因も含めた全体の収益状況を判断するために使います。
5. 当期純利益(Net Profit)
最後に登場するのが「当期純利益」です。これは、税引前当期純利益から法人税などの税金を差し引いた、最終的な企業の利益です。
当期純利益 = 税引前当期純利益 - 法人税等
この利益が、企業の最終的な「儲け」です。IT企業が得た純粋な利益であり、株主に還元されたり、次の投資に回されたりします。例えば、成功したプロジェクトや新しい製品の開発が当期純利益を押し上げる要因となります。
まとめ
これまで説明したように、損益計算書にはいくつかの異なる種類の利益が登場し、それぞれが企業の異なる側面を評価する指標となります。
- 売上総利益は、製品やサービスの直接的な収益力を示す。
- 営業利益は、事業活動全体がどれだけ効率的に行われているかを評価する。
- 経常利益は、本業以外の収益や費用も含めた企業全体の収益力を示す。
- 税引前当期純利益は、一時的な要因も含めた全体の収益状況を表す。
- 当期純利益は、税金を差し引いた最終的な企業の利益。
これらの利益を理解することで、企業の健康状態や将来的な展望をより深く考えることができます。
IT企業の新入社員として、まずはこれらの基本的な利益の構造を理解し、損益計算書を読み解く力をつけていくことが重要です。今後はさらに、他の財務諸表や、具体的な数値の分析方法についても学んでいくと良いでしょう。
投稿者プロフィール
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セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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