人事の役割は「会社にゆらぎをもたらすこと」なのか?育成担当者が知っておくべき本質

こんにちは。ゆうせいです。

今回は、少し哲学的で、しかし育成という業務の根幹にも関わる重要なテーマを解き明かしていきます。

「人事の仕事は、会社に“ゆらぎ”をもたらすことである」

この言葉に、あなたはどう感じましたか?

「ゆらぎって、つまり混乱?」「安定させるのが人事じゃないの?」
そんな疑問が浮かんだ方にこそ、この記事を最後まで読んでほしいと思っています。


ゆらぎとは何か?:安定と変化の狭間にあるもの

まず、「ゆらぎ」という言葉を定義しましょう。

ゆらぎ = 「予定調和を壊す予兆」

科学の世界では「ゆらぎ」は、物質がある一定の安定状態から外れる微小な動きのこと。
たとえば、風が吹いていない日でも、ロウソクの炎がわずかに揺れているのを見たことはありませんか?

これが「ゆらぎ」です。完全な静止ではないけれど、暴風のような変化でもない。
ちょっとした揺れ。しかしその揺れが、大きな変化のきっかけになることもあるのです。


人事が担う「ゆらぎ」の役割とは?

会社という組織は、基本的に「安定性」を求めます。ルール、評価制度、職務分掌、社内文化……
すべては“同じように機能し続ける”ことを前提にデザインされています。

でも、人の成長、チームの変化、組織の進化には「揺さぶり」が必要です。
その揺さぶりこそが、人事のもたらす「ゆらぎ」なのです。

例①:異動や配置転換

新しい部署に異動したとき、社員は「何が求められているのか」を考え直します。
これは、自分の能力や価値観に“ゆらぎ”をもたらす現象です。

例②:評価面談やフィードバック

他者からの評価に直面することで、自分の仕事の解釈に揺らぎが生じます。
その揺らぎが、「もっとこうしたい」という行動変容につながります。


育成担当者としての実務的な意義

「人事=ゆらぎの仕掛け人」という視点を持つと、育成施策の意義がガラリと変わります。

育成とは、“安心安全な動揺”をつくること

ただの研修ではなく、「考えさせる」「揺さぶる」「問い直させる」場を提供する。
それが育成担当者の使命です。

ワークショップやOJTは「問いの場」

例として、以下のような育成設計を見てみましょう。

施策名意図する「ゆらぎ」想定される行動変容
新任リーダー研修自分のマネジメント観への問い直し指示型から支援型へ転換
キャリア面談現職の意義への再解釈自主的な異動希望や学習行動
他部署との対話会自分の常識が他部署と違うことの発見多様性への受容と創造性

「ゆらぎ」を恐れる上司にどう伝えるか?

ときに、上司や経営陣から「余計な刺激を与えるな」という声が出ることがあります。

そんなとき、次のように説明してみてください。

「変化は常に“違和感”から始まる。ゆらぎは、未来をつくる準備運動です」

むしろ、何のゆらぎもない組織は、ぬるま湯の中で腐っていく危険性をはらんでいます。


数式で表す「人の成長」

仮に人の成長を以下のように表してみましょう。

  • 成長率 = (現状の負荷 × 気づきの深さ) ÷ 安心度

または

  • 成長率 = (Challenge × Awareness) ÷ Psychological Safety

ここでの「気づき」や「負荷」が、まさに人事が与える「ゆらぎ」です。
ただし、安心感(心理的安全性)がなければ、それはただの「苦痛」になってしまうため注意が必要です。


今後の学びとアクション:あなたが“設計すべきゆらぎ”とは?

この考え方を踏まえて、育成担当者として次のような問いを持ってみてください。

  • いまの育成施策は、参加者にどんな「ゆらぎ」をもたらしているか?
  • どの程度の「安心」を用意し、どれだけの「揺さぶり」を与えているか?
  • ゆらぎのあとに、行動につなげる“フォロー”の仕組みはあるか?

ゆらぎを計画的に設計できる育成担当者は、組織を進化させる触媒になります。

ぜひ、「揺らすことを恐れない」視点で、次の施策をデザインしてみてください!


次は、「ゆらぎに強い人材」をどう見極めるか、というテーマにも挑戦してみましょう。選抜・配置・フィードバックにもつながる、実践的な視点が広がっていきますよ。