人材開発支援助成金とは?受給条件から申請方法まで詳しく解説 2023年度
IT企業にはDXを担える人材を育成することが期待されているので、従業員の更なるスキルアップを目指したいけれど、かかる費用に頭を抱えている人はいませんか?
この記事ではそんな人に知ってほしい、人材開発支援助成金について詳しく解説します。
人材開発支援助成金とは?
人材開発支援助成金とは、従業員に職務に関連した専門知識や技能を習得してもらうための職業訓練を行った場合、企業へ訓練にかかる費用や訓練をする期間の給与を助成する制度です。
2022年4月から始まった助成金ですが、IT企業が積極的に活用しているのが特徴的と言えるでしょう。
複数のコースから訓練内容を選べるためIT企業が育成したい人材像がある場合、かかる費用を減らし今のニーズに合った人材を育成できます。
ただし不正受給をした場合関わった人も含めて厳しく処罰されるため注意しましょう。
人材開発支援助成金の支給対象となる事業主
人材開発支援助成金の対象となるのは、条件を満たす事業主と事業主団体などです。
IT企業は事業主に含まれますが、9種類の条件を満たす必要がある上細かな数値の規定もあるため、あらかじめ厚生労働省のパンフレットで詳細を確認することをおすすめします。
人材開発支援助成金の支給対象となる労働者
人材開発支援助成金が支給される対象は、次の3つの条件を満たす労働者です。
・訓練を受ける間は被保険者で、事業所に所属している
・訓練実施計画届で提出した「訓練別の対象者一覧」に記載された被保険者
・訓練を受ける必要のある時間の80%以上の訓練を受けた
被保険者とは雇用保険法第4条で定められた被保険者で、有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者を除きます。
IT企業は業務がたくさんあるため研修への参加率が下がりがちですが、助成金を受け取るためには定められた時間の80%以上の訓練を受けてもらわないといけないため、あらかじめ欠席をしないよう伝えておくことが重要です。
また次の場合、上記以外に下記の条件も満たす必要があります。
項目 | 条件 |
育児休業中の人 | 自主的に訓練などを受け3か月以上の育児休業取得期間中の人 |
復職後の人 | 訓練開始日が職場復帰後1年以内で、3か月以上の育児休業期間終了後に職場復帰した人 |
妊娠・出産・育児による離職後に再就職した人 | 訓練開始日が再就職後3年以内で、妊娠・出産・育児により離職したものの、子供の小学校就学までに再就職した人 |
IT企業で働く女性が出産した場合、復職後にスキルが追い付くか不安になる人もいるかもしれませんが、そのような人も支給対象になるため仕事に復帰しやすくなります。
また労働者の今のスキルが条件に入っていないため、IT企業では採用しにくかった未経験者を採用し助成金を活用して育成するといった方法も取れるようになるのです。
これらのことから人材不足に悩むIT企業においてはさまざまな活用方法が考えられる補助金だと言えるでしょう。
人材開発支援助成金の支給対象となる訓練
人材開発支援助成金が支給される対象は、次の訓練です。
訓練の種類 | 概要 |
OffーJT | ・事業内訓練 ・事業外訓練 |
OJT | ・大臣が認定した実習を併用する職業訓練の計画に沿って、適格な指導者が計画的に行うOJT |
一部のOJTはオンラインでも実施できるので、忙しいIT企業の従業員にとっては訓練を受けやすくなるでしょう。
人材開発支援助成金の支給対象となる経費・賃金
人材開発支援助成金が支給される対象は、次の経費と賃金です。
訓練の種類 | 訓練内容 | 経費の種類 |
OffーJT | 事業内訓練 | ・外部講師への手当や謝礼金 ・外部講師の交通費 ・施設や設備を借りた費用 ・学科や実技訓練に必要な教科書、教材の購入費 ・訓練コースを開発する費用 |
事業外訓練 | ・あらかじめ受講案内で定めた入学料、受講料、教科書代など |
また訓練期間内においては、従業員の所定労働時間内の賃金に対する助成金も支給されます。
過去に外注でOff-JTを依頼した経験のないIT企業の場合でも、講師の交通費、設備費、生徒の教材費まで助成金の対象となるので外注を依頼しやすくなるでしょう。
人材開発支援助成金で選べるコース
人材開発支援助成金には、次の9つのコースがあります。
・特定訓練コース
・一般訓練コース
・教育訓練休暇等付与コース
・特別育成訓練コース
・人への投資促進コース
・事業展開等リスキリング支援コース
・建設労働者認定訓練コース
・建設労働者技能実習コース
・障害者職業能力開発コース
厚生労働省のホームページには各コースの活用事例が掲載されており、IT企業の利用事例があるのは特定訓練コース、一般訓練コース、人への投資促進コースの3つであることから、これらの受給条件や申請方法を詳しくご紹介します。
特定訓練コース
特定訓練コースとは10時間以上の効果が高いと見られる訓練を実施した場合、訓練の経費や期間内の賃金の一部などを助成してもらえるコースで、訓練の種類は次の通りです。
訓練の種類 | 概要 | 訓練対象者 | 基本要件(支給する条件) |
労働生産性向上訓練 | ・労働生産性の向上を目的とした訓練 | ・事業主や事業主団体の被保険者 | ・OFF-JT ・訓練時間は10時間以上 ・①~⑦までのうちどれかを受けさせる 職業能力開発促進センターや職業能力開発大学校などで行うハイレベルな職業訓練中小企業等経営強化法で認定された事業分野別経営力向上推進機関が行う訓練中小企業大学校が行う訓練など厚生労働大臣が指定する専門実践教育訓練か特定一般教育訓練ITSSレベル2となる訓練生産性向上人材育成支援センターが行う訓練などその分野で労働生産性を上げるのに必要な専門性・特殊性が認められる技能に関する訓練 |
若年人材育成訓練 | ・35才未満の若い労働者に対する訓練 | ・事業主や事業主団体の被保険者になった日から5年以内で35才未満の人 | ・OFF-JT ・訓練時間は10時間以上 |
熟練技能育成・承継訓練 | ・熟練技能者の指導力向上と技能を受け継ぐのを目的とする訓練と認定職業訓練 | ・事業主や事業主団体の被保険者 | ・OFF-JT ・訓練時間は10時間以上 ・①~③のどれかにあてはまる 熟練技能者の指導力向上を目的とする訓練熟練技能者から技能を受け継ぐのを目的とする訓練認定職業訓練 |
認定実習併用職業訓練 | ・事前に厚生労働大臣の認定を受けた実習併用職業訓練を行い、ジョブ・カードによる職業能力の評価をする | ・事業主や事業主団体の被保険者で15才以上45才未満の人 ・次の①~③のどれかに当たる人 雇用した日から訓練開始日までが3ヵ月以内の人大臣認定の申請前に雇用されている短時間労働者などで、引き続き同じ事業主で通常の労働者に転換した人雇用されている通常の労働者 | ・OFF-JTとOJTを効果的に組み合わせる ・訓練期間は6ヶ月以上2年以下 ・訓練時間数の合計が1年あたり850時間以上 ・訓練時間数の合計に占めるOJTの割合が20%以上80%以下 ・訓練が終わったらジョブ・カードでスキルを評価する ・訓練対象者の①のうち新しく大学を卒業した人以外、②、③の人はキャリアコンサルタントかジョブ・カード作成アドバイザーにキャリアコンサルティングを受けた後ジョブ・カードを交付してもらう |
熟練技能者の定義は決まっているため、ホームページで内容を確認することをおすすめします。
特定訓練コースにおいて人材開発支援助成金を申請する方法は次の通りです。
- 訓練実施計画届の提出
- 訓練を行う
- 支給申請書を提出
- 支給するかどうかを決める
申請書類は厚生労働省のホームページから書式をダウンロードできますが、行った訓練の内容により必要な書類が異なるため、ホームページにあるチェックリストで確認しましょう。
また申請の前提として、職業能力開発推進者を選び事業内職業能力開発計画を立てるのも忘れてはいけません。
厚生労働省のホームページには、コミュニケーションの不得意な人材が多いという課題を持つIT企業が、特定訓練コースを活用しITプロジェクトリーダー研修を受講することで、社内のコミュニケーションが活発化し組織力が上がったとの事例が紹介されています。
似た課題を抱えているなら特定訓練コースの利用を検討してみましょう。
一般訓練コース
一般訓練コースとは雇用する正社員に対して、仕事に関連した専門的な知識や技能を身に着けてもらうために20時間以上の訓練(特定訓練コース以外)を行うと、訓練費用や訓練期間中の賃金の一部などを助成するコースで、訓練の種類は次の通りです。
訓練の種類 | 概要 | 訓練対象者 | 基本要件(支給する条件) |
一般訓練コース | ・特定訓練コース以外で、仕事に関連した専門的な知識や技能を身に着けるための職業訓練 | ・事業主や事業主団体の被保険者 | ・OFF-JT ・訓練時間が20時間以上 |
一般訓練コースにおける人材開発支援助成金の申請方法は特定訓練コースと同じです。
厚生労働省のホームページには、中途採用が多いという課題を持つIT企業でシステム開発の全体像をつかみ、システム開発業務の基礎を理解する目的でOFF-JTを行った所、中途採用者全体の能力の底上げになったという活用事例が紹介されています。
同じような課題を抱えているなら一般訓練コースの利用を考えてみましょう。
人への投資促進コース
人への投資促進コースとはデジタル人材・高度人材を育成する訓練、労働者が自主的に行う訓練、定額制訓練(サブスクリプション型)などを実施した場合に、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部などを助成するコースで、訓練の種類は次の通りです。
訓練の種類 | 概要 | 労働者の条件 | 事業主の条件 | 訓練の条件 |
高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練 | ・高度デジタル人材の育成のための訓練や大学院での訓練 | (海外大学院の場合)次の3つを満たす 日本の大学などを卒業し、学士以上の学位を取得した人か、海外の高等教育機関で、 日本の学士以上に相当する学位を取得した人入学先大学院での主な使用言語の能力が、一定水準以上の人大学学部以降の成績について、在籍した全ての期間における累積GPAが3.00(最高値を4.00とした場合)以上の人 | ・主な事業が日本標準産業分類の大分類の「情報通信業」 ・情報通信業以外の場合次の①~④のどれかを満たす 産業競争力強化法に基づく事業適応計画の認定を受けている独立行政法人情報処理推進機構(IPA)によるDX認定を受けているDX推進指標を使って経営幹部、事業部門、IT部門などの関係者で自己診断を行い IPAに指標を提出し、この自己診断を踏まえた「事業内職業能力開発計画」を作成しているDXを進めるため事業主が企業経営や人材育成の方向性の検討を行い、それを踏まえて事業内計画などを定めている | ・OFF-JT ・訓練時間は10時間以上 ・職務に関連した専門的な知識や技能を身に着けるための訓練 |
情報技術分野認定実習併用職業訓練 | ・IT分野未経験者の即戦力化のための訓練 | ・事業主や事業主団体の被保険者で15才以上45才未満の人 ・次の①~③のどれかに当たる人 雇用した日から訓練開始日までが3ヵ月以内の人大臣認定の申請前に既に雇用されている短時間労働者などで、引き続き同じ事業主で通常の労働者に転換した人既に雇用する通常の労働者 ・キャリアコンサルティングを受け、ジョブ・カードを交付されている ・情報処理・通信技術者の職種に関連する業務経験がないか、過去の職業経験の 実態などから訓練への参加が必要な人 | ・次のいずれかを満たす 主な事業が日本標準産業分類の大分類の「情報通信業」IT関連業務を主に担当する組織やDXを推進する組織がある ・訓練終了後にジョブ・カード様式3-3-1-1 職業能力証明シートにより職業能力の評価を実施する | ・情報処理・通信技術者に関連する業務に必要となる訓練 ・IT関係の資格(ITSSレベル2以上)取得している人か実務経験が5年以上のOJT指 導者が実施するOJT ・次の4つを満たし大臣認定を受けた訓練 企業内のOJTと教育訓練機関のOFF-JTを効果的に組み合わせて行う訓練期間は6か月以上2年以下訓練時間の合計は1年850時間以上訓練時間の合計に占めるOJTの割合は20%以上80%以下 ・OFF-JTは事業外訓練のみ |
定額制訓練 | ・サブスクリプション型の研修サービスによる訓練 | ・追加条件なし | ・追加条件なし | ・定額制サービスによる訓練 ・労働時間内に実施される ・OFF-JTで事業外訓練 |
自発的職業能力開発訓練 | ・労働者が自発的に受講した訓練 | ・自発的に職業能力開発を行う人 | ・自発的職業能力開発経費負担制度を定め、その制度に基づき、被保険者に対して経費を負担する事業主 | ・自発的職業能力開発経費負担制度を利用し、被保険者が自発的職業能力開発を行うために実施する訓 練 ・訓練時間数は20時間以上 ・職務に関連した専門的な知識や技能の習得をさせるための訓練 ・事業外訓練 |
長期教育訓練休暇等制度 | ・働きながら訓練を受講するための休暇制度や短時間勤務等制度 | ・長期教育訓練休暇制度導入・適用計画届の提出日の時点で、事業所での被保険者である期間が連続して1年以上 | ・「制度導入・適用計画」に基づき、支給対象制度の要件を満たす制度を新たに導入し、雇用する被保険者に対して制度の施行日を初日とした3年間に休暇か短時間勤務等制度を適用させ、その被保険者が訓練を受けた事業主 | ― |
長期教育訓練休暇等制度には他に支給対象制度の条件があるため、厚生労働省のホームページから確認してみてください。
人への投資促進コースにおける人材開発支援助成金の申請方法は次の通りです。
訓練の種類 | 申請方法 |
・高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練 ・情報技術分野認定実習併用職業訓練 ・定額制訓練 | 事業内計画の作成など計画提出訓練実施支給申請 |
・自発的職業能力開発訓練 | 事業内計画の作成など制度導入計画提出訓練実施支給申請 |
・長期教育訓練休暇等制度 | 事業内計画の作成など計画提出制度導入訓練実施支給申請 |
厚生労働省のホームページには、採用活動をするとIT業界未経験者が多いという課題を持つIT企業で人への投資促進コースを活用したプログラミング講座を行った所、未経験者が一人前のSEになったという活用事例が紹介されています。
似た課題を抱えているなら人への投資促進コースの活用を検討してみましょう。
セイ・コンサルティング・グループでは人材開発支援助成金を活用したOFF-JTのご相談も承ります
セイ・コンサルティング・グループでは人材開発支援助成金を活用したOFF-JTのご相談も承っております。
弊社のホームページの「研修内容」では提供している標準カリキュラムをご紹介しているため、人材開発支援助成金の支給を受けるための条件を満たせるかどうか心配と感じられる方もいますが、最初に助成金を使いたい旨ご相談いただければそれに合わせてカスタマイズを行うことができるのです。複雑な助成金手続きは、専属コンサルタントの手厚いサポートがあり安心です。
人材開発支援助成金がIT企業の人材育成における課題解決に結び付く助成金なのはご紹介した事例からも明らかなため、コストを削減しながら人材育成を行いたい方は是非ご相談ください。
研修内容 - セイコンサルティンググループ (saycon.co.jp)
IT企業の人財育成に関することなら0120-559-463受付時間 9:00-18:00 [ 土・日・祝日除く ]
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人材開発支援助成金とは、企業が従業員に対して職務に関連した専門知識や技能を習得してもらうための職業訓練を実施した場合、訓練にかかる費用や訓練期間中の給与を助成する制度で、IT企業の人材育成にも有効だと言えるでしょう。
この記事も参考にして、ぜひ助成金を活用した人材育成を検討してみてください。