第3章 機械学習の基礎理論

機械学習は、データからパターンや規則性を抽出し、未知のデータに対して予測や判断を行うための技術です。本章では、機械学習の定義とその枠組み、主要な学習手法である教師あり学習と教師なし学習、さらに強化学習の基本概念、そしてモデル構築において避けるべき過学習とその対策について学びます。


3.1 機械学習とは何か

機械学習は、従来のプログラミング手法と異なり、「データに基づいて自動的に学習し、改善する」仕組みを備えています。
主なポイントは以下の通りです。

  • 学習プロセス:
    コンピュータに大量のデータを与え、その中から入力と出力の関係性やパターンを見出すプロセスです。これにより、明示的なプログラミングなしに、タスク遂行のためのルールや特徴が自動的に獲得されます。
  • モデル:
    学習によって得られる知識は「モデル」として表現され、未知の入力データに対する予測や分類、判断を行う際に利用されます。
  • アルゴリズム:
    様々な統計的手法や最適化技術、確率論的手法を駆使して、データから有用な情報を抽出するための計算手法が利用されます。

機械学習は、パターン認識、分類、回帰、クラスタリングなど、多様なタスクに応用され、画像認識、音声認識、自然言語処理、異常検知など広範な分野で活用されています。


3.2 教師あり学習と教師なし学習の基本アルゴリズム

機械学習の手法は大きく「教師あり学習」と「教師なし学習」に分類されます。それぞれの概要と代表的なアルゴリズムについて解説します。

3.2.1 教師あり学習

教師あり学習は、入力データとそれに対応する正解(ラベル)が与えられた状態で学習を進める手法です。
主な特徴と代表アルゴリズムは以下の通りです。

  • 特徴:
    • 明確な目的変数(ターゲット)が存在するため、モデルの評価が容易
    • 分類や回帰といった具体的なタスクに向いている
  • 代表的なアルゴリズム:
    • 線形回帰/ロジスティック回帰: シンプルな数理モデルで、連続値の予測や2値分類に用いられる
    • 決定木/ランダムフォレスト: データの特徴に基づいて木構造を生成し、予測や分類を行う
    • サポートベクターマシン(SVM): 高次元空間上でデータを分離する最適な境界を見つける
    • ニューラルネットワーク: 多層のネットワークを通じて非線形な関係性を学習する

3.2.2 教師なし学習

教師なし学習は、ラベル付けされていないデータからパターンや構造を見出す手法です。
以下のような用途に適用されます。

  • 特徴:
    • データの内在する構造や分布、グループ(クラスタ)を把握する
    • 次元削減や特徴抽出、異常検知などに利用される
  • 代表的なアルゴリズム:
    • クラスタリング:
      • k-means法、階層的クラスタリングなど、類似性に基づいてデータをグループ分けする
    • 主成分分析(PCA): データの次元を削減し、重要な特徴を抽出する
    • 自己組織化マップ(SOM): ニューラルネットワークを用いた次元削減とクラスタリングの手法

3.3 強化学習の概要

強化学習は、エージェントが環境との相互作用を通じて、試行錯誤により最適な行動戦略(ポリシー)を獲得する手法です。
強化学習の基本概念は以下の通りです。

  • エージェントと環境:
    エージェントが行動を選択し、環境から報酬(リワード)を受け取る。これにより、どの行動が有利かを学習する。
  • 報酬と目的:
    エージェントは、累積報酬を最大化することを目指して、次第により良い行動方針を見つけ出します。
  • 主要なアルゴリズム:
    • Q学習: 状態と行動の組み合わせごとに価値(Q値)を更新し、最適な行動を選択する手法
    • 方策勾配法: 行動方針そのものを直接パラメータ化し、報酬に応じて最適化する手法

強化学習は、ゲームAI、自律走行、ロボティクスなど、環境との継続的な相互作用が求められる領域で注目されています。


3.4 過学習と正則化の考え方

モデル構築において避けるべき課題のひとつに「過学習(オーバーフィッティング)」があります。
過学習は、学習データに過度に適合しすぎた結果、未知のデータに対して汎用性が低くなる現象です。

3.4.1 過学習の原因と影響

  • 原因:
    • 複雑すぎるモデルの使用
    • 学習データが少ない、またはノイズが多い場合
    • 特徴量が多すぎることによる次元の呪い
  • 影響:
    • 訓練データに対する精度は高いが、検証データや実運用時の予測性能が低下する

3.4.2 正則化手法による対策

過学習を防ぐためには、モデルの複雑さを適切に制御する正則化が有効です。
代表的な正則化手法には以下が挙げられます。

  • L1正則化(ラッソ):
    モデルパラメータの絶対値に比例したペナルティを加え、不要な特徴量の係数をゼロに近づける
  • L2正則化(リッジ):
    パラメータの二乗に比例したペナルティを加え、パラメータの大きさを抑制する
  • ドロップアウト:
    ニューラルネットワークの学習中に、ランダムに一部のノードを無効化することで、特定のノードへの依存を減らし、汎用性を向上させる
  • 早期打ち切り(Early Stopping):
    検証データの性能が改善しなくなった時点で学習を停止し、過剰な適合を防ぐ

これらの手法を適切に組み合わせることで、学習したモデルが実際の運用環境でも高い性能を発揮できるように調整することが可能です。


まとめ

本章では、機械学習の基本的な概念とその枠組み、そして主要な学習手法について解説しました。

  • 教師あり学習と教師なし学習 は、目的に応じた適切なアルゴリズム選定が重要であり、各手法はその特性に応じた応用が求められます。
  • 強化学習 は、環境との動的な相互作用を通じて学習を行うため、実時間の最適化問題に効果を発揮します。
  • 過学習への対策 としての正則化手法は、モデルの汎用性を高めるために不可欠な要素です。

これらの基礎知識を踏まえ、以降の章ではより具体的なアルゴリズムの実装方法や、応用事例を通じた実践的な問題解決のアプローチについて深掘りしていきます。




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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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