MySQLにおける排他制御(Concurrency Control)は、複数のトランザクションが同時に実行される場合に、データの整合性を保つために使用される機能です。排他制御を使用することで、同時に実行されるトランザクションがデータに対して競合しないように管理し、データの矛盾や不整合を防ぐことができます。
MySQLでは、主に2つの方法で排他制御を実現することができます:
ロック(Locking):
ロックは、トランザクションがデータに対して排他的なアクセス権を持つことを保証するための仕組みです。ロックを使用することで、複数のトランザクションが同じデータを同時に変更することを防ぎます。
共有ロック(Shared Lock):
複数のトランザクションが同時にデータを読み取ることができますが、他のトランザクションからの排他的な変更は制限されます。
排他ロック(Exclusive Lock):
トランザクションがデータを排他的に読み取りおよび変更できます。他のトランザクションは、排他ロックが解除されるまで待機する必要があります。
ロックはMySQLによって自動的に管理されますが、明示的なロック操作も使用できます。明示的なロック操作には、SELECT … FOR UPDATE文(排他ロックの取得)、LOCK TABLES文、UNLOCK TABLES文などがあります。
トランザクションの分離レベル(Transaction Isolation Level)は、複数のトランザクションが同時に実行される際に、データの可視性や競合の扱い方を定義する設定です。MySQLでは、次の4つの分離レベルがサポートされています。
READ UNCOMMITTED(未コミット読み取り可能):
トランザクションが他のトランザクションがまだコミットしていないデータを読み取ることができます。
このレベルでは、Dirty Read(未コミットデータの読み取り)やNon-Repeatable Read(非反復読み取り)といった問題が発生する可能性があります。
一般的に、この分離レベルは避けるべきです。
READ COMMITTED(コミット済み読み取り可能):
トランザクションは他のトランザクションがコミットしたデータのみを読み取ることができます。
Dirty Read(未コミットデータの読み取り)は防止されますが、Non-Repeatable Read(非反復読み取り)は発生する可能性があります。
REPEATABLE READ(反復可能読み取り):
トランザクションは開始時に読み取ったデータを、トランザクションが終了するまで一貫して参照できます。
他のトランザクションからの変更が反映されないため、Non-Repeatable Read(非反復読み取り)は防止されます。
ただし、他のトランザクションが新しいデータを挿入する場合には、Phantom Read(幻影読み取り)と呼ばれる問題が発生する可能性があります。
SERIALIZABLE(直列化):
トランザクションは直列化され、全体的な競合が回避されます。
Dirty Read(未コミットデータの読み取り)、Non-Repeatable Read(非反復読み取り)、Phantom Read(幻影読み取り)のいずれも発生しませんが、同時性が低下する可能性があります。
MySQLでは、デフォルトの分離レベルはREPEATABLE READです。
トランザクションの分離レベルは、以下のように設定できます:
SET TRANSACTION ISOLATION LEVEL level;
ここで、levelには上記の分離レベル(READ UNCOMMITTED、READ COMMITTED、REPEATABLE READ、SERIALIZABLE)のいずれかを指定します。
また、排他制御に関連する重要な概念として、デッドロック(Deadlock)があります。デッドロックは、複数のトランザクションが相互に必要なロックを保持し、進行不可能な状態に陥った状態を指します。MySQLでは、デッドロックの検出と解決を自動的に行いますが、デッドロックが発生する可能性がある場合には、適切なトランザクションの設計やロックの使用方法に注意が必要です。
データベースの性能とデータの整合性を確保するために、適切な排他制御を選択し、トランザクションの設計と実行に注意を払うことが重要です。