IT企業における人材育成のROIの測定方法について
IT企業にお勤めの人材育成担当者の方へ。
「IT企業の人材育成においてどのようにROI(費用対効果)を出せば良いのだろうか」
「IT企業の人材育成では他社はどのようにROI(費用対効果)を出しているのだろうか」
と気になりませんか。
結論から言えば、人材育成に関するROIを出そうと必死になっている企業は多いものの、効果的な出し方を出来ている企業は大企業から中小企業までを含めてもほとんどありません。
なぜなら、目的を明確化し、自社なりの目標がなければ正確なROIは出せないためです。
この記事を読むことにより、自社に最適なROIの出し方を理解することができます。
ぜひ、最後まで読んでいって下さい。
人材育成におけるROIとは
人材育成におけるROIとは、企業が人材育成に投資した費用と、その投資により得た収益の比率を表す指標です。
ROIは「Return On Investment」の略語であり、投資によって得られた利益がどれだけの割合で元本に対して増加したかを表す指標となっています。
ROIを算出する計算式は以下の通りです。
【計算式】
ROI(%) = 「利益」÷「投下資本」( × 100)
例えば企業が100万円を人材育成に資本投下して、300万円の利益を得た場合は以下のように計算されます。
【計算例】
ROI(%) = 300万円 ÷ 100万円 × 100= 300%
単純な計算式ではありますし、全てに適用することは難しいですが、この計算式が最もシンプルなパターンです。
フィリップスのROIモデルで算定する方法
ジャック・フィリップスが提唱した人材育成のROIモデルがあります。
カーク・パトリックが提唱した4段階モデルという人材育成の効果測定に1段階追加した5段階でROIを測定する手法です。
以下のような5段階でROIを算出します。
- 1段階:reaction(満足度):研修受講者の満足度を測ります
- 2段階:learning(学習):研修受講者の知識や態度などに変化があったかどうかを測ります
- 3段階:behavior(行動変化):研修受講者の行動に変化があったかどうかを測ります
- 4段階:result(成果):研修受講者がどのように業績をアップさせたかを測ります
- 5段階:ROI(費用対効果):投資した金額と得られた効果を測定します。
フィリップスのROI算定方法は研修を受けた人材がどれだけの効果を得ているか段階を踏んで可視化することができます。
細かく測定できる一方で完璧に費用対効果を求められるわけではありません。
なお、従業員の人材育成・能力開発の方針と営業利益の間には高い相関があるという中小企業庁のデータもあります。
以下のグラフをご覧ください。
もちろん、相関関係と因果関係を混同してはいけません。
「人材育成方針を立てている」→「営業利益が高い」のか「営業利益が高い」→「体力に余力があり人材育成方針をたてられる」のかは疑って見る必要はあります。
皆様はどう思われますでしょうか?
IT企業における人材育成は最重要課題だが費用対効果も重視される
高度経済成長期の日本のIT企業では人材育成に関して費用対効果という観点から見るとそれほど重要視されていませんでした。
なぜなら、人材育成に関する費用はお金がかかることが当たり前であり、終身雇用のため人材に投資することは当たり前の時代があったためです。
また、人材育成など人事部門が関与する仕事はブラックボックスで機能していることが当たり前でした。
しかし、時代が進むにつれて経営環境が激変し、ブラックボックスであった人事部門の仕事にも費用対効果が求められるようになりました。
日本全体が不景気に突入し、適切な費用対効果を人材育成にも定めるべきだという考え方が台頭したためです。
人材育成を軽視している企業はほとんど存在しませんが、投資したに見合ったリターンを会社がどれだけ得られるかにはシビアになっている企業が多いというのが実情です。
これまでのように人事領域の仕事だからといって、経営陣がコストについて言及しないというような状況はなくなったと言っても過言ではありません。
反対に、正確な数値を出す方法が確立できれば教育投資を積極的に行ってもらうことができるようになり、人材の能力を高めることが出来るようになります。
人材育成はコストではなく投資。企業として考え方を持つことが大切
人材育成はコストではなく投資という意識を持つことが大切です。
なぜなら、人材育成に関する費用は企業を成長させるために欠かせないものだからです。
人材育成には以下の効果があります。
- 従業員のスキルアップ
- 企業の競争力アップ
- 企業の収益力アップ
- 従業員のモチベーションアップ
- 離職率の低下(スキルアップで自信がつく)
人材が成長すると企業として出来る事が増え、収益がアップすることが多いです。
また、従業員自身がスキルアップすることにより自信がつき、難しい仕事に積極的に立ち向かうことが出来るようになります。
人材育成に関する投資は可視化しにくいですが、後々大きなリターンとなって企業が支えてくれます。
参考までに中小企業庁の発表している人材育成の効果のデータを図1に掲載します。
人材育成部門にこれから必要となる高い視座
日本企業では遅れがちだったDX化、デジタル化推進の流れがIT企業だけではなく全ての企業に押し寄せています。
少子高齢化により企業がITの力を活用出来なければ待っているのは確実な衰退だからです。
例えば製造業はこれまでITとは縁遠い存在でしたが、これからは生き残りをかけてIT教育をする必要性に迫られています。
つまり、IT企業は他業種に負けずさらに専門性を磨かなければ勝ち残れない可能性が高いのです。
他業種がレベルアップしてくる以上、IT企業こそ専門性を磨かなければ生き残れません。
企業が行える現実的な人材育成のROI測定法2つ
企業が行える現実的な人材育成のROI測定方法について2つを解説します。
採用コストとの比較によるROI測定
採用コストと人材育成コストを比較することによりROI測定を行う方法があります。
外部から優秀な人材を採用するケースと、自社で優秀な人材を育成するのではどちらの費用対効果が高いのかという観点からの測定法です。
もちろん欠員補充などの採用に関しては人手不足を解消しなければいけないため採用を優先するべきです。
しかし、優秀な人材を外部から採用する前に自社の人材の能力を高められないかを試すことには大きな意義があります。
採用コストに関しては転職エージェントを活用した場合に採用した人材の年収の30%と消費税を支払う必要性があります。
また、人材採用のために人事担当者が面接にかける時間や、内定を出すために作成する書類の作成時間などを考慮すると200万円程度が正社員1人を採用するためにかかるコストとなります。
一方、社員を優秀な人材に研修を受けてもらい能力アップを試す場合には100万円以下で実践できます。
優秀な人材を採用する前に自社の人材をレベルアップできないかという視点を持つことが大切です。
教育未実施者と教育実施者の利益金額を比較する
IT企業が現実的にROIを算出するために重要なことは、教育未実施者と教育実施者の利益金額を比較することです。
従業員が現在就業している業務によっては計算できないかも知れませんが、ある程度の費用対効果を出すことができます。
また、教育未実施者と教育実施者を比較すると良い効果があります。
それは、教育を実施した結果に差が大きければ大きいほど研修に大きな効果があったと分かることです。
細かく分析していくことによってこれから研修先を選定するにあたってのどのスクールに効果があったのかなどが見えてきます。
人材育成のROIを改善するためにIT企業が行うべきこと
「人材育成のROIを改善するためにはどのような方法があるのだろうか」と気になりませんか。
具体的には、以下の方法があります。
- 適切な研修先を選ぶ
- 人材育成の手法を考える
- 人材育成関連の助成金をフル活用する
それぞれについて解説します。
1.適切な研修先を選ぶ
適切な研修先を選ぶことにより人材育成のROIが改善します。
なぜなら、自社に合った研修先を選ぶことにより確実に効果が望めるためです。
例えばどこの研修先では効果が得られなかったけれど、他の研修先では確実に効果があったということが頻繁に起こるためです。
特に社員が知識や技術を得て行動力がついたというケースでは大きなROIを得ることが可能です。
2.人材育成の手法を考える
人材育成のROIを高めるためには、人材育成の手法そのものを考えることが大切です。
なぜなら、費用対効果が最も高い手段を選ぶことが大切だからです。
例えば自社内の優秀な社員に講師をしてもらい内製化しているというケースでは費用面では優れているものの、優秀な人材が本来業務に充てるべき時間が奪われています。
これでは人材育成が出来ても優秀な人材が本来生み出せるお金が減っているわけですから、とてももったいないです。
優秀な講師が在籍する研修会社に社員の技術研修などを任せた方が、費用がかかったとしても効率よく教育研修を実施することができます。
3.人材育成関連の助成金をフル活用する
人材育成関連の助成金をフル活用することによりROIを高めることが可能です。
なぜなら人材育成関連の助成金は資本投下した金額の何割かをバックしてくれるためです。
企業規模を問わず活用可能であり、しかも、訓練中の賃金も国が一部支給してくれます。
例えば高度デジタル人材訓練や、情報技術分野認定実習併用職業訓練があります。
参考:厚生労働省 人材開発支援助成金人への投資促進コース)
労働者の知識・技能の向上にご活用ください
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001020398.pdf
ROIを意識する場合、受講にかかったお金の一部が返ってくる制度を活用すると大幅にROIの改善が見込めます。
人材育成を行う上で重要な外注先の選び方
人材育成を行う上で重要な外注先の選び方について解説します。
専門性が高いかどうか
IT業界は変化が激しく新しい技術やトレンドが次々と誕生しています。
そのため人材育成を外注する際には、研修会社が最新の技術やトレンドについて常に情報を収集し、専門的な知識と経験を持っているかどうかを確認することが重要です。
セイ・コンサルティング・グループは専門性の高い教育を実践しており、最新のトレンドを踏まえて技術教育を行います。
カリキュラムが企業のニーズに合っているかどうか
IT企業により人材育成の必要性や目的が異なります。
そのため、カリキュラムをカスタマイズできる研修会社が望ましいケースがあります。
また、企業の現状や課題に応じて適切なトレーニングを提供できるかどうかも重要な判断材料となります。
セイ・コンサルティング・グループでは柔軟性の高い研修を実施しており、新人エンジニア研修からヒューマンスキル研修、プロジェクトマネジメント研修まで幅広い研修コースを用意しています。
また、カリキュラムをパワーポイント1枚から変更することも可能です。
研修先選びにお悩みの方は気軽にお問い合わせください。
実績が高いかどうか
企業が研修の外部委託を考えたとき、実績が高いかどうかはとても重要です。
なぜなら、費用対効果の高い研修を考えたときに実績のない研修先では高い効果を見込めない可能性があるためです。
セイ・コンサルティング・グループは20年を超える歴史を持ち、高い実績を誇ります。
費用対効果(ROI)が高いかどうか
研修先選びで特に重要となるのが、費用対効果が高いかどうかです。
研修会社の費用は研修会社が提供するトレーニングの内容や期間、カスタマイズの有無、講師の経験や専門性などによって異なります。
IT企業は研修会社の費用を事前に比較検討し予算内で最も適切なものを選ぶ必要があります。
ただし、費用の安さだけで研修会社を選ぶのは避けるべきです。費用とトレーニングの品質や効果をバランスよく考慮することが重要です。
セイ・コンサルティング・グループは販売促進費や営業など余分な経費を削ぎ落し、効果の高い研修を提供する筋肉質な経営を実践しています。
研修先の適切な費用金額でお悩みの方は気軽にお問い合わせください。
まとめ
今回はIT企業における人材育成のROI測定方法について解説しました。
特に本文中で解説した適切な教育研修の依頼先の選び方について注目してください。
自社に合った適切な研修先を選ぶことにより、費用対効果の高い教育研修を実施することができます。
さらにリターンについては定量的な評価だけではなく、定性的な評価をすることも重要です。
定性的な評価という点で研修の事前・事後課題を受講者の方に課している岸和田製鋼株式会社様の事例は参考になると思います。
自社に最適な方法や研修先を選択し、良い人材育成を行いましょう。