ヒューマンスキルとは?意味からIT企業におすすめの研修まで詳しくご紹介

IT技術者には、今後DXを推進するためにも高いヒューマンスキルを身に着けてほしいけれど、漠然としていて何から取り組めばよいかよくわからないと悩んでいる人はいませんか?

この記事では、ヒューマンスキルの意味からIT企業におすすめの研修まで詳しくご紹介します。

ヒューマンスキルとは?

お茶を飲んで休憩する4人のビジネスマン

ヒューマンスキルとは「人間力」と訳すことができ、周囲の人を理解し良好な人間関係を構築する能力という意味です。

アメリカの経営学者でハーバード大学元教授のロバート・カッツによって、カッツモデルの3つのスキルのうちの1つとして提唱されました。

カッツモデルとは働く人に必要な能力は3つのスキルに分けられ、必要とする割合は階層別に異なるとする理論です。

カッツモデルにおいて、働く人に必要とされたスキルは次の3つです。

スキルの種類概要構成要素の一覧
テクニカルスキル(業務遂行能力)・担当業務を行うのに必要な知識や技術・定型業務能力 ・PC能力 ・語学力 ・情報収集能力 ・専門知識 ・ITリテラシー ・会計知識 ・法務知識
ヒューマンスキル (対人関係能力・人間理解能力)・周囲の人を理解し良好な人間関係を構築する能力・コミュニケーション力 ・傾聴力 ・交渉力 ・提案力 ・内発的動機づけ ・向上心 ・リーダーシップ ・主体性 ・協調性
コンセプチュアルスキル(概念化能力)・物事の本質を見極めそれに基づいて判断する力・ロジカルシンキング(論理的思考) ・ラテラルシンキング(水平思考) ・クリティカルシンキング(批判的思考) ・多面的視野 ・柔軟性 ・受容性 ・知的好奇心 ・探求心 ・応用力 ・洞察力 ・直感力 ・チャレンジ精神 ・俯瞰力

一方、カッツモデルによって定義づけられた階層とは次の3つです。

階層の種類概要それぞれのスキルが必要な割合
ロワーマネジメント(監督者層)・係長、主任、リーダー、プロジェクトマネージャーなど・テクニカルスキル 50%程度 ・ヒューマンスキル 25%程度 ・コンセプチュアルスキル 25%程度
ミドルマネジメント(管理者層)・支店長、課長、部長など・同じ
トップマネジメント(経営者層)・会長、社長、副社長、CEO、COOなど・テクニカルスキル 25%程度 ・ヒューマンスキル 25%程度 ・コンセプチュアルスキル 50%程度

ヒューマンスキルは周囲の人との関わり方を示す能力のため、どの階層においても必要とされるのが特徴的だと言えるでしょう。

ヒューマンスキルの構成要素

交渉が成立して握手を交わすビジネスマン

ヒューマンスキルとは何かを理解するために、ヒューマンスキルの構成要素についてもう少し詳しく解説します。

構成要素概要
コミュニケーション力・自分の考えや意思、感情を相手に伝える能力 ・相手の考えや意思、感情に共感できる能力
傾聴力・相手を理解することを目的に話の背景や相手の感情も含めて聴く力
交渉力・自分と相手が納得できる妥協点を見つけて話し合う力
提案力・自分の考えや会社の方針を相手にわかりやすく伝える力
内発的動機づけ・自分の意思やモチベーションが行動の原動力になっている状態
向上心・現状に満足することなく目標を掲げてそれに向かって努力する力
リーダーシップ・目標を設定して、その方向へ組織を導いていく能力
主体性・仕事に進んで取り組む力
協調性・自分と異なる立場の人と協力しサポートし合いながら生産性を高める力

これらのうちどの要素を多く身に着けているか、また新たな要素を身に着けるまでにかかる時間は人によって異なることを覚えておきましょう。

IT業界でヒューマンスキルが注目される背景

職場でのコミュニケーションスキル

IT業界でヒューマンスキルが注目される背景には、どのようなことがあるのでしょうか。

2023年に情報処理推進機構が発表した「DX白書2023」で日本の企業375社、アメリカの企業301社に対してデジタル事業に対応できる人材の確保についてたずねた所、次のような結果となりました。

職種やや過剰である過不足はないやや不足している大幅に不足しているわからない自社には必要ない
プロダクトマネージャー日本1.6%10.4%30.7%37.6%10.4%9.3%
アメリカ31.6%47.5%10.3%5.6%3.3%1.7%
ビジネスデザイナー日本1.3%9.1%27.2%42.9%9.9%9.6%
アメリカ15.0%49.8%22.3%6.6%3.7%2.7%
テックリード日本0.8%5.1%27.7%37.6%11.5%17.3%
アメリカ16.3%45.2%23.9%8.3%3.7%2.7%
データサイエンティスト日本0.3%5.6%24.8%47.5%12.3%9.6%
アメリカ16.9%35.2%20.9%16.3%6.0%4.7%
先端技術エンジニア日本0.5%5.9%19.2%41.3%10.4%22.7%
アメリカ15.9%36.9%25.9%9.6%5.6%6.0%
UI/UXデザイナー日本1.1%6.7%21.1%36.5%13.3%21.3%
アメリカ14.6%43.9%18.6%11.3%4.7%7.0%
エンジニア/プログラマ日本0.3%10.4%30.7%34.4%10.1%14.1%
アメリカ15.9%41.9%20.9%9.0%7.0%5.3%

日本とアメリカを比較すると全体としてどの職種でも日本の方が不足感が高いのですが、特にヒューマンスキルが求められるプロダクトマネージャーで比較すると、日本では不足感を感じている企業が68.3%だったのと比較して、アメリカでは15.9%と約4倍の差があったのです。

一方、IT企業688社、先端IT従事者961人、非先端IT従事者1,164人に今後身に着けさせたいスキル、身に着けたいスキルについてたずねた所、次のような結果が出ました。

 IT企業先端IT従事者非先端IT従事者
人、プロジェクトやタスクのマネジメントスキル63.8%53.8%53.4%
業務関連のコミュニケーションスキル60.0%52.9%39.9%
関連の業務知識49.1%46.5%36.0%

企業、従業員ともヒューマンスキルに関わるマネジメントスキルやコミュニケーションスキルを、業務知識よりも高い割合で身に着けた方がよいと考えているのがわかります。

ヒューマンスキルはIT企業がDXを円滑に推進するにあたって必要なスキルのため、IT企業からも実際に働く技術者からも注目されていると言えるでしょう。

参考:情報処理推進機構「DX白書2023」

IT企業が従業員のヒューマンスキルを上げるには?

IT企業が従業員のヒューマンスキルを向上させるには、どのような取り組みをすればよいのでしょうか。

3つご紹介します。

従業員に現状のヒューマンスキルを知ってもらう

ヒューマンスキルを測定できる厚生労働省のポータブルスキル測定ツールの最初の画面

画像出典元:厚生労働省「ポータブルスキル測定ツール」

ヒューマンスキルを適切に上げてもらうためにも、まずは従業員に現状のヒューマンスキルについて知ってもらうのが望ましいでしょう。

厚生労働省jobtagのホームページでは、「ポータブルスキル見える化ツール」でポータブルスキル(業種や職種が変わっても持ち運べるスキルの1つであるヒューマンスキルがどのくらいかを測定できます。

ヒューマンスキルはこのツールの中で「人との関わり方」として社内対応、社外対応、上司対応、部下マネジメントの4つの項目で評価されます。

「ポータブルスキル見える化ツール」の入力手順は次の通りです。

  • 「持ち味の測定」画面で得意だと思う程度に応じて29点の持ち点を9つの項目に割り振る
  • 「到達度の測定」画面で自分の到達度を入力する

診断結果として入力した数値と近い職務と職位が5つ示されるため、現在持っているヒューマンスキルでどのような職務や職位が遂行できるのかが一目でわかります。

参考:厚生労働省 jobtag「ポータブルスキル見える化ツール」

1on1などでフィードバックを行いPDCAサイクルを回す

1on1などの面談における振り返りでヒューマンスキルについてフィードバックを行い、行動計画を立ててPDCAサイクルを回すようにすると、組織全体のヒューマンスキルが少しずつ上がっていきます。

ヒューマンスキルは客観的な視点から見て改善していく必要があるため、フィードバックを受けた上で行動することが重要なのです。

組織的にヒューマンスキルの改善に取り組めるようになったら、ヒューマンスキルを評価する制度を導入するのも忘れないようにしましょう。

研修を行う

ヒューマンスキルに関する研修を積極的に行うのもよい方法です。

職種や職位によっても必要とされるヒューマンスキルの内容は異なるため、職種別、また階層別に研修を行うのがおすすめです。

前の項目でご紹介したように、ヒューマンスキルはIT企業が身に着けてほしいと感じているだけではなく、IT企業で働く従業員自身が必要だと感じているスキルのため、現在抱えている課題について社内アンケートを取り、そこから逆算して内容を組み立てていくと、ニーズに合った研修ができるでしょう。

セイ・コンサルティング・グループではIT企業のヒューマンスキル研修をサポートしています

セイ・コンサルティング・グループでは自社でヒューマンスキル研修を行うのが難しいIT企業様向けに、さまざまな種類の研修、また研修のカスタマイズをご提案しています。

セイ・コンサルティング・グループで行うことのできるヒューマンスキル研修の概要は次の通りです。

研修の種類キーワード達成目標対象
IT技術者とDX推進者のためのコミュニケーション研修・論理思考 ・ノンバーバルコミュニケーション ・プレゼンテーション・自分の力でロジカルに考えることができる ・自分でプレゼンテーションのプランが立てられる ・他の人と協力してプレゼンテーションが実施できる・IT技術者 ・DX推進者
IT技術者とDX推進者のためのコミュニケーション研修・力関係 ・心理 ・逆提案・交渉が好きになる ・顧客に簡単な提案ができるようになる ・自分で利害関係者との調整ができる・IT技術者 ・DX推進者
IT技術者とDX推進者のためのリーダーシップ・ビジョン提示 ・コーチング ・マネジメント特性 ・リーダーシップ特性・リーダーシップとは何か理解する ・リーダーの振る舞いを理解する ・自分で部下や後輩の育成ができる ・目指したいリーダー像がわかる・IT技術者 ・DX推進者
チームビルディングとモチベーションアップ・ほめる ・しかる ・アンガーマネジメント ・報連相・チームの混乱期を歓迎できる ・メンバーの褒め方を7つ以上使いわけられる ・モチベーション理論について理解し他の人に説明できる・IT技術者  
IT技術者とDX推進者のためのドキュメンテーション研修・日本語力 ・文章力 ・構成力・技術ドキュメントに適切な情報量を盛り込める ・誤解がなくわかりやすい文章が作れる ・読者の視点から適切な言葉を使いわかりやすい構成の文章が作れる・IT技術者 ・DX推進者
チームリーダーのための人に教える技術・質問 ・指示 ・納得 ・モチベーション・自分で考えて行動できる人材を育てるための教え方を身に着ける ・メンバーのやる気を引き出す教え方を身に着ける・プロジェクトマネージャー ・リーダー
フォロワーシップ・提言力 ・貢献力・リーダーとメンバーの潤滑油となり働きやすい環境を作れる ・どんな環境でも自分の能力を発揮できる ・リーダーとメンバーの信頼関係を深められる・チームメンバー ・フォロワー

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ヒューマンスキル - セイコンサルティンググループ (saycon.co.jp)

まとめ

ヒューマンスキルとは「人間力」と訳すことができ、周囲の人を理解し良好な人間関係を構築する能力という意味で、IT企業、またそこで働く従業員にこれから、身に着けた方がよいスキルとして注目されています。

この記事も参考にして、ぜひ自社に合った方法で組織としてのヒューマンスキル向上に努めてみてください。