プレイングマネージャーとは?IT企業において増加する背景からメリット・デメリットまで詳しく解説
プレイングマネージャーとは自分の担当する業務をこなしつつ、チームのマネジメントや部下育成にも携わる人材のことを指します。
プレイングマネージャーは担当業務における個人の目標と、管理職としてのチームの目標を両方達成する必要があるのが特徴的です。
業務についての高いスキルや経験、マネジメントスキルの両方を兼ね備えなければならないため、係長、課長、部長などが選任されることが多いでしょう。
プレイングマネージャーの現状
「プレイングマネージャー」という言葉をGoogleで検索してみると、サジェストキーワードとして「辛い」「限界」「無理」といったネガティブワードが出てきますが、なぜなのでしょうか。
2020年にリクルートワークス研究所が発表した「プレイングマネージャーの時代」において、従業員100名以上の企業に所属する課長相当の管理職2183名を対象に行ったアンケート調査の結果から、プレイングマネージャーの現状をご紹介します。
個人業務に割いている時間の割合
アンケートでプレイングマネージャーが個人業務に割いている時間についてたずねた所、次のような結果が出ました。
仕事の中で個人業務に割いている時間 | 20%未満 | 20%~30% | 30%~40% | 40%~50% | 50%~60% | 60%~70% | 70%~80% | 80%以上 |
割合 | 19.3% | 13.1% | 12.4% | 11.5% | 11.0% | 8.2% | 5.2% | 6.6% |
個人業務に割いている時間が20%未満の人が一番多くて19.3%ですが、個人業務が50%を超えている人も31%いるため、プレイングマネージャーはあまりマネジメント業務にばかりは時間をかけられない現状がうかがえます。
プレイングマネージャーが個人業務も行う理由
アンケートでプレイングマネージャーに個人業務も行う理由についてたずねた所、次のような結果でした。
個人業務も行う理由 | 割合 |
業務量が多く、自分もプレイヤーとして加わる必要があるため | 57.3% |
部下の力量が不足しており、自分もプレイヤーとして加わる必要があるため | 37.3% |
自分がプレイヤーとして加わらないと、当期のチームの業績目標が達成できないため | 30.3% |
プレイヤーとして仕事をすることが、部下育成につながっているため | 19.8% |
プレイヤーとして仕事をすることで、仕事の新たなやり方や進め方を試しているため | 14.9% |
「率先垂範」でないと、部下がついてこないため | 12.5% |
プレイヤーとしての力量を落としたくないため | 11.8% |
プレイング業務を行うことで仕事の達成感が得られるため | 10.4% |
あてはまるものはない | 6.3% |
プレイヤーとして仕事をすることで、部下に慕われるため | 4.2% |
個人業務を行う理由としては利他的な理由を挙げた人の方が多いですが、「仕事の達成感を得るため」「部下に慕われるため」といった利己的な理由を挙げる人も一定数いるのが特徴的だと言えるでしょう。
また利他的な理由の内容を見渡してみると、個人業務をすることでチームの成果と生産性を上げるよう試行錯誤している姿が浮かび上がってきます。
プレイングマネージャーが行う個人業務の内容
アンケートでプレイングマネージャーが行う個人業務の内容についてたずねた所、次のような結果が出ました。
個人業務の内容 | 業務に必要な観点 | 割合 |
自分(マネジャー自身)にしか遂行できない業務 | 経験 | 36.3% |
経験が豊富な部下が遂行できる業務 | 55.3% | |
3年程度の職務経験がある部下が遂行できる業務 | 21.0% | |
新人や職務経験が浅い部下でも遂行できる業務 | 9.9% | |
やり方や進め方をゼロから考える業務 | 手順 | 25.2% |
これまでとは全く異なるやり方や進め方が求められる業務 | 33.3% | |
やり方や進め方を変える余地のある業務 | 57.1% | |
やり方や進め方が完全に決まっている業務 | 15.2% | |
他部署・社外の関係者と協働が必要な業務 | 協働 | 40.2% |
上司との協働が必要な業務 | 30.5% | |
部下との協働が必要な業務 | 51.9% | |
自分1人で完結する業務 | 35.0% |
プレイングマネージャーが個人業務を行う場合、経験が深くないとできない業務や周囲の人との協働が必要な業務を優先的に行っているのがわかります。
またやり方や進め方を変える余地のある業務をまず自分で行ってみることで、更なる効率化を模索している様子もうかがえます。
参考:リクルートワークス研究所「プレイングマネージャーの時代」
IT企業においてプレイングマネージャーが増加する背景
IT企業においてプレイングマネージャーが増加する背景には、どのようなことがあるのでしょうか。
2023年に情報処理推進機構が発表した「DX白書2023」で、375社を対象にDXを推進する人材の量が確保できているかについてたずねた所、次のような結果でした。
項目 | 割合 |
やや過剰である | 1.3% |
過不足はない | 9.6% |
やや不足している | 33.9% |
大幅に不足している | 49.6% |
わからない | 5.6% |
またDXを推進する人材の獲得・確保についてたずねた所、次のような結果だったのです。
方法 | 割合 |
社外の専門家との契約 (コンサルタントなど) | 37.1% |
特定技術を有する企業や個人との契約 | 28.3% |
外部採用(中途採用) | 44.3% |
社内人材の育成 | 54.9% |
既存人材(他部署からの異動も含む) の活用 | 47.7% |
DXを推進するため各企業はIT人材を確保する必要がありますが、社内での育成や人材活用だけでは追い付かず、IT企業への外注を考えているのがわかります。
このことからIT企業では多くの案件を少ない人材で効率的にこなさなければならなくなり、プレイングマネージャーの増加につながっていると言えるでしょう。
IT企業にプレイングマネージャーを導入するメリット
IT企業にプレイングマネージャーを導入するメリットにはどのようなことがあるのでしょうか。
3つご紹介します。
チームメンバーから信頼されやすい
プレイングマネージャーは、部下にとってマネージャーよりも共通点が多い存在のため、心理学における「類似性の法則」が働きチームメンバーから信頼されやすくなります。
類似性の法則とは自分と中身や外見が似ていたり、共通点が多かったりすると親近感を持ち好感を抱きやすいという心理効果で「性別」「出身地」「学歴」「思想」「言動」などさまざまな属性に対して働くのです。
人間は属性が似ていない人には自分を否定されやすいため不安になりますが、属性が似ている人には自分を肯定的に捉えてもらいやすいため、部下は属性の似ているプレイングマネージャーに対し親近感を持ちやすいのです。
生産性が向上する
IT企業は常にその技術を更新し続けていくことが求められますが、プレイングマネージャーがいることでいち早く得た技術やノウハウが共有されるため、現場の生産性が向上します。
またチームに課題がある際もいち早くそれを発見し、対策を考えられるため業務が滞りにくくなるでしょう。
現場の声が管理側に届きやすくなる
プレイングマネージャーは現場で個人業務もこなしながらマネジメントをしているため、現場の声を管理側に伝えやすくなります。
現場の状況が正しく管理側に伝わることから課題解決が適切に行われ、生産性の向上とモチベーションの維持につながるでしょう。
IT企業にプレイングマネージャーを導入するデメリット
IT企業にプレイングマネージャーを導入するデメリットにはどのようなことがあるのでしょうか。
2つご紹介します。
オーバーワークになりやすい
プレイングマネージャーは個人業務とマネジメント業務を両方行うためオーバーワークになりやすく、これは働く人たちが個々の事情に応じて柔軟な働き方ができるようにすることを目的とした働き方改革の考え方にも逆行しています。
上司はプレイングマネージャーがキャパシティオーバーにならないよう業務が適切な量になるよう調整したり、スケジュール管理をしたりして配慮するようにしましょう。
人事評価の基準が曖昧になりやすい
プレイングマネージャーは個人とチーム両方の目標に向かって仕事をするため、次のような状況になることが考えられます。
・個人の目標は達成したがチームの目標は達成できなかった
・チームの目標は達成したが個人の目標は達成できなかった
このような場合、プレイングマネージャーの人事評価をどのようにするかは企業としても悩ましいことでしょう。
プレイングマネージャーが個人の仕事とチームの仕事を両方中途半端にしないためにも、このような場合どのように評価するのかをあらかじめ決めておくことが重要です。
セイ・コンサルティング・グループはITエンジニアのプレイングマネージャー化をサポートしています
IT業界においてプレイングマネージャーはネガティブなイメージを持たれがちですが、セイ・コンサルティング・グループではプレイングマネージャーこそ最新技術を追求してお客さまから感謝され、稼ぐことができると考えています。
そのため、IT企業さまには詰め込みの知識教育にならない、知識と人間力のバランスの良いマネジメント研修をご用意し、エンジニアの方が「技術力と人間力を兼ね備えたプレイングマネージャー」になれるようにサポートしているのです。
そんなセイ・コンサルティング・グループのヒューマン・マネジメント研修の内容を少しのぞいてみたい方は、次のリンクもクリックしてみてください。
まとめ
プレイングマネージャーとは自分の担当する業務をこなしつつチームのマネジメントや部下育成にも携わる人材のことで、DXを推進できるIT人材へのニーズが高まっていることからIT企業でもその数は増加しています。
この記事も参考にして、ぜひプレイングマネージャーが働きやすい環境を作ってみてください。