DX推進ができる人材とは?定義から育成方法まで詳しくご紹介
自社のDX推進における目標を達成するため、それを担う人材育成に取り組むことになったけれど具体的な人材像が思い浮かばず何から取り組んだらよいのかわからないと悩んでいる人はいませんか?
この記事ではDX推進ができる人材の定義から育成方法まで詳しくご紹介します。
DX推進ができる人材の定義
経済産業省は、日本の多くの企業においてDX推進への取り組みが遅れている要因の1つとしてDXについての素養や専門性を持つ人材の不足があると考え、2022年に次の2つの指針からなるデジタルスキル標準を定めました。
指針の種類 | 対象者 | 概要 |
DXリテラシー標準 | 全てのビジネスパーソン | ・DXに関するリテラシーとして身につけた方がよい知識の学習の指針を定義している ・個人が自身の行動を振り返るための指針で、組織・企業が従業員に求める意識・姿勢・行動を検討するための指針を定義している |
DX推進スキル標準 | DXを推進する人材 | ・DX推進に必要な人材類型(ビジネスアーキテクト、デザイナー、データサイエンティスト、ソフトウェアエンジニア、サイバーセキュリティ)について、類型ごとにロールと必要なスキルを定義している |
デジタルスキル標準を活用することで、DX推進をする人材の定義が明確になるため、企業にとっては採用や育成がしやすくなります。
DXリテラシー標準を満たす人材像
経済産業省ではDXリテラシー標準を満たす人材像の例を次のように示しています。
・自社のDXの方向性を考え従業員に示すことができる経営者
・会社の事業内容や業務に知見がありDXに関するリテラシーも身に着けた人材
・DXに関する専門性が高い人材
DXリテラシー標準を満たす人材が増えるとDXを自分事として捉えるようになるため、会社全体が変革に向けて行動できるようになるでしょう。
DX推進スキル標準を満たす人材像
経済産業省ではDX推進スキル標準を満たす人材像を次の5つの区分に分け、人材類型として定義づけています。
人材類型の種類 | 概要 |
ビジネスアーキテクト | ・DXへの取り組みにおいてビジネスや業務の変革を通じて実現したいこと(目的)を設定した上で関係者をコーディネートし、その協働関係の構築をリードしながら目的実現へのプロセスを一貫して推進する人材 |
デザイナー | ・ビジネス、顧客、ユーザーの視点を総合的にとらえて商品やサービスの方針や開発のプロセスを策定し、それに沿った商品やサービスのデザインを担う人材 |
データサイエンティスト | ・DXを推進するにあたって、データを活用した業務変革や新しいビジネスの実現に向け、データを収集、解析する仕組みの設計、実装、運用を担う人材 |
ソフトウェアエンジニア | ・DXを推進するにあたって、デジタル技術を活用した商品とサービスを提供するためのシステムやソフトウェアの設計、実装、運用を担う人材 |
サイバーセキュリティ | ・業務プロセスを支えるデジタル環境においてサイバーセキュリティリスクの影響を抑制するための対策を担う人材 |
これらの人材類型はさらに詳細に区分されてロールが設定され、必要なスキルも明確化されているため、もっと詳細な人材像を知りたい人は経済産業省のホームページから確認してみましょう。
DX推進ができる人材育成の現状
DX推進ができる人材育成は現状どのくらい進んでいるのでしょうか。
3つの観点からご紹介します。
IT人材のスキルを適切に評価できていない
2022年に独立行政法人情報処理推進機構が発表した「デジタル時代のスキル変革等に関する調査(2022年度)」において、IT企業792件、事業会社1,225件を対象に企業調査を行い、社内のIT人材を評価・把握するための基準についてたずねたところ次のような結果が出ました。
企業の種類 | ある | ない | わからない |
全体 | 24.2% | 67.4% | 8.4% |
IT企業 | 49.2% | 41.5% | 9.2% |
事業会社 | 8.1% | 84.1% | 7.8% |
IT企業では約4割、事業会社では約8割の会社がIT人材を評価・把握するための基準がないという回答だったため、DX推進をするためにはIT人材のスキルを適切に評価できる環境を早急に整える必要があるのがわかります。
DXの成果が上がらない企業はデジタルリテラシー向上の取り組みが不十分
「デジタル時代のスキル変革等に関する調査(2022年度)」でDXの成果とデジタルリテラシー向上への取り組みについてたずねたところ次のような結果でした。
全社的に取り組んでいる | 一部の部門において取り組んでいる | 部署ごとに独自、個別に取り組んでいる | 取り組んでいない | わからない | ||
IT企業 | 全体 | 60.8% | 16.8% | 11.0% | 9.3% | 2.1% |
DX成果あり | 63.1% | 16.5% | 10.2% | 7.6% | 2.5% | |
DX成果なし | 50.9% | 18.2% | 14.5% | 16.4% | ― | |
事業会社 | 全体 | 33.9% | 24.0% | 12.1% | 27.4% | 2.6% |
DX成果あり | 36.0% | 26.4% | 11.4% | 23.7% | 2.5% | |
DX成果なし | 27.9% | 17.1% | 14.0% | 38.0% | 3.1% |
IT企業でも事業会社でも、DXの成果がある企業ではデジタルリテラシー向上への取り組みを積極的に行っているため、DX推進をするためには従業員全体のデジタルリテラシー向上が必要なのがわかります。
DXの成果が上がらない企業はラーニングカルチャーが浸透していない
「デジタル時代のスキル変革等に関する調査(2022年度)」でラーニングカルチャーを個人の学習を支援・推奨する制度的、非制度的な組織風土と定義づけその浸透についてたずねたところ、次のような結果が出ました。
(回答は①とてもよくあてはまる②ある程度あてはまる③どちらともいえない④あまりあてはまらない⑤全くあてはまらない)
IT企業・DX成果あり | IT企業・DX成果なし | 事業会社・DX成果あり | 事業会社・DX成果なし | |
各個人が「学び続けること」が組織の競争力の源泉と位置付けられている | ①32.2% ②42.8% ③17.8% ④5.5% ⑤1.7% | ①18.2% ②43.6% ③30.9% ④5.5% ⑤1.8% | ①19.3% ②47.4% ③21.3% ④7.6% ⑤4.4% | ①17.8% ②38.0% ③24.0% ④10.1% ⑤10.1% |
管理職は、組織の成果創出だけでなく、メンバーの成長・支援も重要な仕事と捉えている | ①36.9% ②45.3% ③14.8% ④2.5% ⑤0.4% | ①21.8% ②50.9% ③20.0% ④3.6% ⑤3.6% | ①28.3% ②54.2% ③11.7% ④3.0% ⑤2.7% | ①22.5% ②47.3% ③15.5% ④7.0% ⑤7.8% |
学びのゴールやその実現に必要な情報(人材像・キャリアパス・必要スキルなど)が社内に整備されている | ①5.5% ②39.0% ③38.1% ④14.0% ⑤3.4% | ①0% ②29.1% ③40.0% ④29.1% ⑤1.8% | ①2.7% ②19.3% ③42.0% ④26.7% ⑤9.3% | ①0.8% ②19.4% ③29.5% ④26.4% ⑤24.0% |
DXの成果が上がらないIT企業、事業会社は学ぶことと評価が紐づけられておらず、社内でも学ぶことへのサポートが受けにくい環境であるのがうかがえます。
参考:独立行政法人情報処理推進機構「デジタル時代のスキル変革等に関する調査」
DX推進ができる人材を育成するメリット
DX推進ができる人材を育成すると企業には次のようなメリットがあります。
・経営層が自ら自社のDXの方向性を考え従業員に伝えられる
・DXリテラシーを身に着けた人材とDXに関する専門性の高い人材が協働することでDXが早く進む
・DXによる変化を従業員が受け入れやすくなる
世の中で起きているDXや最新の技術に会社全体が敏感になり、新たなビジネスにも活かせるようになるでしょう。
DX推進ができる人材の育成方法
DX推進ができる人材は具体的にどのように育成すればよいのでしょうか。
方法を3つご紹介します。
研修
座学の研修ではデジタルスキル標準に示されているスキルを系統立てて学ぶだけではなく、「DXについて学び続け、変革をおそれないマインド」を持てるようにする必要があります。
前の項目でもご紹介した通り、学ぶことと評価が紐づけられておらず、社内でも学ぶことへのサポートが受けにくい環境にある企業はDXの成果が上がりにくいことがわかっているためです。
具体的にはDX関連技術を体験型学習で身に着けるのと同時に、マインドセットとしてリーダーシップ研修、教える技術の研修、コミュニケーション研修などを行うとよいでしょう。
OJT
座学で学んだことを実務に取り入れる訓練がOJTです。
やみくもに仕事の現場で訓練を行うのではなく、事前にOJTの目的や個人の目標をはっきりさせて実践に結び付けることが大切だと言えるでしょう。
OJTの手順は次の通りです。
手順 | 概要 |
Show(やってみせる) | ・業務を実際にやってみせて流れや全体像を理解してもらう段階 |
Tell(説明・解説する) | ・より細かく業務について説明や解説をする段階 |
Do(やらせてみる) | ・実際に業務をやってもらう段階 |
Check(評価・指導をする) | ・業務の中でできていたこととできなかったことをフィードバックする段階 |
1つずつ成功体験を積んでもらうことで従業員のモチベーションが上がり、自信にもつながるでしょう。
ネットワークの構築
DXに関する情報はたくさんあるため個人が全てを知るのは難しい環境にあります。
そのような中効率的に情報収集をするには、従業員1人1人が意識して社内外にネットワークを構築するのが望ましいでしょう。
DXに関するウェビナー参加、コミュニティへの参加、第一人者のSNSのフォローなど、小さな行動1つ1つが少しずつ大きなネットワークとなり、会社のDX推進へとつながっていきます。
セイ・コンサルティング・グループではDX推進ができる人材の育成を研修でお手伝いしています
セイ・コンサルティング・グループではDX推進ができる人材の育成方法のうち研修をお手伝いしています。
具体的にはデジタルスキル標準に示されているプログラミング、WebデザインなどのDX関連技術を学んでもらうだけではなく、リーダーシップ研修、プロジェクトマネジメント研修、コミュニケーション研修などでDX推進をするためのマインドセットまで行うことができるのです。
社内研修だけで自社のDX推進を担う人材の育成は難しいと感じた方は、次のページもごらんください。
研修メニュー - セイコンサルティンググループ (saycon.co.jp)
まとめ
DX推進ができる人材像は経済産業省の「デジタルスキル標準」で示されているため、それを参考にスキルを身に着けてもらい、同時進行でDXについて学び続けるというマインドセットも行うと効率良くDXが推進できるでしょう。
この記事も参考にして、ぜひ自社でDX推進ができる人材の育成に積極的に取り組んでみてください。