AIが「想像」する力を手に入れる仕組み:変分オートエンコーダーの秘密

こんにちは。ゆうせいです。

画像生成AIなどが、この世に存在しない人の顔をスラスラと描き出す様子を見たことがありますか?あのような「無から有を生み出す」魔法のような技術の基礎を支えているのが、変分オートエンコーダー(VAE)というモデルです。

でも、変分(Variational)なんて、日常生活ではまず聞かない言葉ですよね。なぜこんな難しそうな名前がついているのでしょうか?その由来を知ると、AIがどうやって「概念」を学習しているのかが見えてきますよ!


「変分」の由来は、数学の魔法「変分推論」にあり

結論からお伝えします。変分という名前は、統計学や物理学で使われる変分推論(Variational Inference)という計算手法を応用していることに由来しています。

これだけではチンプンカンプンですよね。もっと噛み砕いてみましょう。

AIがデータを学習するとき、本当は「データの背後にある真のルール」を知りたいと考えています。しかし、そのルールはあまりにも複雑すぎて、完璧に計算しようとするとスーパーコンピューターでも一生終わらないほどの時間がかかってしまいます。

そこで、「本物は難しいから、せめて形が似ていて計算しやすい別のルールで代用しよう!」という妥協案を採用します。この「本物にできるだけ近い、扱いやすい形を探し出す手法」こそが変分推論なのです。

例えるなら、正確な地図を作るのが難しいため、とりあえず手元にある粘土をこねて、実際の地形に一番近くなるように形を整えていく作業のようなものです。この「形を変化させて最適化する」ニュアンスが、変分という言葉に込められています。


専門用語を高校生レベルで解説!

VAEを理解するために欠かせない、3つのキーワードを紹介します。

1. 潜在変数(Latent Variable)

目に見えるデータ(画像など)の背後に隠れている「特徴」のことです。

例えば、人の顔写真を見たとき、AIは「笑顔」「メガネをかけている」「髪が長い」といった要素を数値として抽出します。これらが潜在変数です。

「テストの点数」という目に見える結果の背後にある「地頭の良さ」や「努力量」のような、直接は見えないけれど結果に影響を与える要素だと考えてください。

2. エンコーダー(Encoder)とデコーダー(Decoder)

  • エンコーダー:情報をギュッと圧縮する役割。写真を見て「笑顔でメガネの男性」という短い特徴(潜在変数)に変換します。
  • デコーダー:圧縮された情報から元の姿を復元する役割。「笑顔でメガネの男性」というメモから、新しい顔画像を書き起こします。

3. 確率分布(Probability Distribution)

VAEの最大の特徴は、特徴を「点」ではなく「範囲(分布)」で捉えることです。

普通のAIが「笑顔度は80点!」と決めつけるのに対し、VAEは「だいたい75点から85点の間くらいかな」という、ゆとりを持った捉え方をします。この「ゆとり」があるおかげで、少しだけ特徴をずらして新しい画像を生成することが可能になるのです。


数式で見る「近さ」の測り方

VAEでは、自分が作った「代用のルール」が、どれくらい「本物のルール」に近いかを計算する必要があります。その際によく使われるのが、KLダイバージェンスという指標です。

誤差の大きさ = $KL$ ダイバージェンス $($ 代用のルール $||$ 本物のルール $)$

この式の値が 0 に近づけば近づくほど、AIは「本物に近い、質の高い想像」ができるようになります。


変分オートエンコーダーのメリットとデメリット

メリット

  • 新しいデータを作れる:ただのコピーではなく、学習した特徴を組み合わせて「ありそうでなかったもの」を生み出せます。
  • 特徴の整理が得意:データが持つ本質的な意味を、扱いやすい形に整理してくれます。

デメリット

  • 画像がぼやけやすい:「だいたいこの辺」という確率的な処理をするため、細かい部分の描写が苦手で、少し霧がかかったような画像になりがちです。
  • 計算の設計が難しい:数理モデルが複雑なため、正しく学習させるための設定に専門的な知識が必要です。

さらなる学びへのガイド

変分という言葉の裏側にある「最適化の美学」を感じていただけたでしょうか?もしあなたがこの分野をもっと探検したいなら、以下のステップがおすすめです。

  1. オートエンコーダー(VAEの基本形)を学ぶ:まずは「変分」がつかない、もっとシンプルな情報の圧縮技術から見てみましょう。
  2. ガウス分布(正規分布)を復習する:VAEが「ゆとり」を持たせるために使っている数学的な道具です。
  3. GAN(敵対的生成ネットワーク)と比較してみる:VAEのライバルであり、より鮮明な画像を作れる別のAIモデルについても調べてみてください。

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。