色彩心理学とは?定義からビジネスの場で活かす方法まで詳しく解説

IT業界における人材不足で仕事の負荷が大きくなる中、従業員には心の健康を維持しながら仕事をしてほしいけれど、どのような対策が望ましいのかよくわからず頭を抱えている人はいませんか?

この記事では、そんな人に知ってほしい色彩心理学について詳しくご紹介します。

色彩心理学とは?

色彩心理学を用いて色が人間の心理や行動にどんな影響があるか考える人

色彩心理学とは、色が人間の心理や行動にどのような影響を与えるのかを研究する学問です。

色彩心理学は2003年にアメリカで生まれた比較的歴史の新しい心理学ではありますが、ドイツの詩人で自然学者でもあったゲーテの「色彩論」でその土台が作られました。

その後アメリカの三大色彩学者と呼ばれるアボット、世界初のカラーコンサルタントでもあったビレン、チェスキンの3人によって今の色彩心理学の形となったのです。

色が人に与える影響

色が人に与える影響はさまざまな論文や実験で証明されていますが、色彩心理学では次の4つに分類します。

項目概要具体例
心理的な効果・影響色で人間の心理に影響を与える・自殺の名所とされる建築物の色を塗り替えると自殺者が減少する
生理的な効果・影響色で人間の神経に影響を与え・部屋の色で感じる温度が異なる
・部屋の色で時間の速度の感じ方が異なる
・食べ物や食器の色で味の感じ方が買わる
感情的な効果・影響色で人間の感情に影響を与える・壁の色を塗り替えると囚人の暴力が止む
文化的な効果・影響人間の持つ文化的な背景によって色の捉え方や受け取り方が変化する・同じ色でも文化的な背景によってポジティブにもネガティブにも捉えられる

文化的な効果・影響については、国や地域によって色の捉え方が次のように異なるのがわかっています。

 黄色
日本・情熱・信頼・生命・好奇心
中国・幸運・永続性・厄除け・高貴
アメリカ・情熱・誠実・安全・親しみやすさ
エジプト・死・誠実・繁殖力・一時的
フランス・上流階級・自由・犯罪・上流階級

例えば黄色は中国では高貴な色として受け止められますが、アメリカでは親しみやすさを感じる色として受け止められるので、ほぼ逆の捉え方をする場合もあるのを覚えておきましょう。

色彩心理学における色の意味

色彩心理学で心理状態を知るためたくさんの色の中から好きな色を選ぶ

色彩心理学では好きな色を選ぶと、その色から今の心理状態がわかるとされます。

選んだ色ごとに、現在その人がどのような状態にあるとされるのかを見ていきましょう。

赤を選んだ人の現在の状態は次の通りです。

 ポジティブな感情ネガティブな感情性格の傾向おすすめの勉強方法おすすめの職業健康面で気を付けたいこと
・エネルギーがある
・情熱的
・活動的
・義理人情に厚い
・直情的
・短気
・怒りっぽい
・疲れている可能性がある
・バイタリティがある
・お金を稼げる
・物欲が強くなりすぎる傾向にある
・身体を動かすのが得意
・正義感が強い
・厳しい指導で伸びるタイプ  ・経営者
・スポーツ選手
・インストラクター
・職人
・モデル
・ダンサー
・格闘家
・のぼせ
・冷え症

エネルギーにあふれ、活動的になっているタイミングだと言えるでしょう。

上昇志向も強くなっているので、何か目標を決めてそれに向かって行動するのもおすすめです。

黒を選んだ人の現在の状態は次の通りです。

 ポジティブな感情ネガティブな感情性格の傾向おすすめの勉強方法おすすめの職業健康面で気を付けたいこと
・強い信念がある
・意志が強い
・威厳がある
・心を閉ざしている可能性がある
・ストレスがたまっている
・深い悲しみを感じている可能性がある
・自己確立をしようと立ち向かう
・弱い自分は見せたくない
・アイデンティティをなくしている
・スモールステップで少しずつ目標を達成する・今のままでは適性が見えにくい・慢性的な不調

人生に一度リセットをかけて、再出発の準備をしているタイミングだと言えるでしょう。

一度立ち止まってネガティブな感情をさらけ出すことで、また新たな夢へと向かっていけるのではないでしょうか。

青を選んだ人の現在の状態は次の通りです。

 ポジティブな感情ネガティブな感情性格の傾向おすすめの勉強方法おすすめの職業健康面で気を付けたいこと
・平和的
・信頼できる
・冷静な判断ができる
・言いたいことが言えない
・孤独な面がある
・権威に弱い
・べき思考が強い
・穏やか
・自己探求ができる
・時間を区切って集中して勉強する・作家
・画家
・編集者
・弁護士
・先生
・アナウンサー
・司会
・Webデザイナー
・IT関連
・ストレスを貯めすぎないようにする

冷静で、落ち着いた思考の基に行動ができるタイミングだと言えるでしょう。

自分を深く掘り下げて考えられるので、自己成長にもつながりやすいのではないでしょうか。

ピンク

ピンクを選んだ人の現在の状態は次の通りです。

 ポジティブな感情ネガティブな感情性格の傾向おすすめの勉強方法おすすめの職業健康面で気を付けたいこと
ピンク・優しい
・思いやりがある
・母性がある
・親切で世話好き
・わがままな傾向
・愛を求めすぎる傾向
・ひがみっぽくなる傾向
・性別に関係なく女性性が豊か
・繊細で傷つきやすい
・興味の持てるもの、好きなことについて勉強する・看護師
・介護士
・保育士
・秘書
・ハンドメイド作家
・カウンセラー
・ペットシッター
・トリマー
・月経不順
・生理時の腹痛、腰痛、下痢など

周囲の人にたくさんの愛情を注げるタイミングだと言えるでしょう。

人とのつながりを大切にできるので、チームワークでは自分の力をより発揮できるかもしれません。

白を選んだ人の現在の状態は次の通りです。

 ポジティブな感情ネガティブな感情性格の傾向おすすめの勉強方法おすすめの職業健康面で気を付けたいこと
・純粋
・繊細
・正直
・正義感がある
・完璧主義な傾向 ・傷つきやすい
・潔癖
・警戒心が強い
・柔軟性が高い
・ペース配分を意識する・制作、営業など一定期間で評価が得られる職業・不眠
・イライラ

1から何かをスタートするのに最適なタイミングだと言えるでしょう。

理想が高く妥協しないので、物事を成功させやすくなるのではないでしょうか。

紫を選んだ人の現在の状態は次の通りです。

 ポジティブな感情ネガティブな感情性格の傾向おすすめの勉強方法おすすめの職業健康面で気を付けたいこと
・精神的な癒しを与えられる
・奉仕できる
・カリスマ性がある
・現実逃避の傾向がある
・喪失感を感じている可能性がある
・憂鬱
・バランスの良いニュートラルな思考
・美意識が高い
・がんばりすぎない・アパレル関連
・各種デザイナー
・美容師
・フリーランス
・肩こり
・腰痛

バランス感覚に優れているタイミングなので、さまざまな人の意見に耳を傾け良い部分を取り入れられるでしょう。

チーム内での調整役を担うようにすると、人間関係が良くなり目標が達成しやすくなるかもしれません。

緑を選んだ人の現在の状態は次の通りです。

 ポジティブな感情ネガティブな感情性格の傾向おすすめの勉強方法おすすめの職業健康面で気を付けたいこと
・安らぎを与えられる
・協調性がある
・聞き上手
・八方美人になりやすい
・うらやましいと思う気持ちが強い
・優柔不断
・周囲の人の相談を受けやすい
・保守的な思考
・興味のあることは時間をかけて掘り下げる・作家
・芸術家
・建築家
・映画監督
・肩こり
・めまい
・耳鳴り
・目の疲れ
・胃の痛み

思慮深く、物事の本質をついた意見やアイデアが思いつきやすいタイミングです。

自分の心が本当に求めているものが見えてくるので、後悔しない決断ができるでしょう。

参考:佐々木仁美「色の心理学」

参考:春田博之「色に聞けば、自分がわかる」

色彩心理学をITビジネスで活用する方法

色彩心理学の知識を活かしてたくさんのサンプルの中から色を選ぶ女性

色彩心理学をITビジネスで活用するには、どのような方法があるのでしょうか。

3つご紹介します。

デザイン

前の項目で色が人に与える影響として、「心理的な効果・影響」「生理的な効果・影響」「感情的な効果・影響」「文化的な効果・影響」の4つがあるとご紹介しました。

そのため、IT企業においては顧客に与えたいイメージの色をブランドロゴ、ホームページなどのデザインに取り入れると、その意図通りの結果を得られます。

デザインをする時に知っておきたい色のイメージをご紹介します。

色の種類与えられるイメージ色が人に与える影響の種類具体的な色
膨張色錯覚で膨張して見える・生理的な効果・影響・白
・黄色
・ピンク
収縮色錯覚で収縮して見える・生理的な効果・影響・黒
・灰色
暖色見るだけで暖かさを感じる・生理的な効果・影響・赤
・オレンジ
・黄色
寒色見るだけで寒さや冷たさを感じる・生理的な効果・影響・青
・青緑
・青紫
陽気な色見るだけで明るい気持ちになる・感情的な効果・影響・同じ色でも明度と再度が高い
陰気な色見るだけで暗い気持になる・感情的な効果・影響・同じ色でも明度と再度が低い
興奮色見るだけで心拍数を上げ気分を高揚させる・生理的な効果・影響
・感情的な効果・影響
・赤みが強く明度と再度が高い
鎮静色見るだけで心拍数を下げ気分を落ち着かせる・生理的な効果・影響
・感情的な効果・影響
・青みが強く明度と再度が低い
重い色見た人に重い印象を与える・心理的な効果・影響・黒
・茶色
・紺色
軽い色見た人に軽い印象を与える・心理的な効果・影響・白

自社が顧客にどのようなイメージを持ってもらいたいかを具体的に考えた上で、デザインに色彩心理学を取り入れるとより効果的でしょう。

カラーマーケティング

カラーマーケティングとは色彩心理学を利用したマーケティングのことを指します。

カラーマーケティングには次のような効果があります。

  • 企業理念を伝える
  • ブランディング
  • 商品やサービスのコンセプトをわかりやすく伝える
  • 競合他社との差別化
  • 顧客の購買意欲を高める

例えばIT企業大手のGoogleでは、マーケティング、ブランディング、職場の環境などに与える色の力を研究し、色が従業員の創造性や生産性を高める効果があると発表しました。

またGoogleの検索エンジンにおけるリンクは信頼性を高めるため青色が使われていますが、研究を重ねて最もクリック率の高い青色を特定し、その色を使うようにしているのです。

近年はGoogleのリンクの色は「#1a0dab」なので、この色を使ってクリック率が上がるかどうかを実験してみるのもよいでしょう。

セルフケア

2015年2月より企業にはストレスチェックが義務づけられており、従業員がメンタルヘルス不調に陥らないような職場環境を作ることが重要視されてきつつあります。

従業員の心の状態を把握したいなら、色彩心理学に基づいたリュッシャー・カラーテストを行うと、1人1人の無意識の心の状態を客観的に診断でき、メンタルヘルス向上に役立てることができます。

リュッシャー・カラーテストとはスイスの精神療法医であるマックス・リュッシャー博士が作ったもので、リュッシャー・カラーと呼ばれる8つの色に対する好き嫌いにより人の精神状態を計ることができるのです。

IT企業の従業員がリュッシャー・カラーテストについて理解を深めれば、自分のメンタルヘルス不調を察知しゃすくなり、随時必要なセルフケアを行えるでしょう。

参考:厚生労働省「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等」

セイ・コンサルティング・グループでは色彩心理学を用いたメンタルヘルス・マネジメント研修を行っています

セイ・コンサルティング・グループではIT業界で働く方向けに、色彩心理学を用いたメンタルヘルス・マネジメント研修を行っています。

具体的にはリュッシャー・カラーテストを用いて現状の分析を行ったり、色をコミュニケーションに活かしたりする方法を学べるのです。

メンタルヘルスの重要性を理解し、従業員全員が働きやすい環境を整えたい方は、ぜひ次のページもごらんください。

4.1 IT技術者とDX推進者のための心を整える技術 - セイコンサルティンググループ (saycon.co.jp)

まとめ

色彩心理学とは、色が人間の心理や行動にどのような影響を与えるのかを研究する学問ですが、IT企業においてはマーケティングから従業員のメンタルヘルス対策まで幅広く活用できるため、使い勝手のよい学問だと言えるでしょう。

この記事も参考にして、ぜひ色彩心理学の知識を自社に合った形で活かしてみてください。