人材育成計画とは?人材育成計画書の作り方から記入例まで詳しく解説

これから競争が激しくなるIT業界を生き抜いていく上で、人材育成は企業として不可欠なのはわかっているけれど、何から始めてよいのかわからず困っている人はいませんか?

この記事ではそんな人に知ってほしい人材育成計画の立て方から人材育成計画書の記入例まで詳しく解説します。

人材育成計画とは?

人材育成計画を作ることで企業が変化の激しいIT業界を生き残るイメージ

人材育成計画とは、企業が従業員を自社にとって理想的な人材に育成するために必要な項目を具体的に挙げたもので、「人材育成計画書」として共有されます。

自社にとって実行しやすい人材育成計画にするためには、次のポイントを踏まえるとよいでしょう。

  • 企業の経営戦略に基づいて目指す人物像を定義づけておく
  • 中長期的な視点に基づき、現実的な計画とする
  • 現状の人材のスキルや経験に合った計画とする
  • who(誰が)、what(何を)、when(いつ)、where(どこで)、why(どんな目的で)、how(どのように)の5W1Hが整理された計画とする
  • 人材育成の方法や手段を複数整備しておく

人材育成計画は立てたら終わりではなく実行するためにあるものなので、実現可能な計画を作るのが大切です。

人材育成計画を具体化する人材育成計画書の作り方

情報システム職種のビジネスパーソン

人材育成計画書は人材育成計画に基づいた育成の対象となる従業員一人一人に対して作成される計画書のことで、次のような項目が記載されることが多いでしょう。

  • 従業員の氏名
  • 目標
  • スケジュール(年ごとや月ごとなど)
  • 研修や業務で行った内容
  • 現状
  • 今後の課題
  • 育成担当者や上司からのコメント

人材育成計画の内容を踏まえた人材育成計画書の作り方を7ステップにわけてご紹介します。

事前準備

新しく競争に参入した企業が多いIT業界においては、人材育成計画の作成に関するノウハウがないことも多いでしょう。

そんな時に参考となるのが、厚生労働省のホームページで公開されている職業能力評価基準のページです。

企業が人材育成計画を新しく策定するにあたって、事前準備として目を通しておきたい資料を職業能力評価基準のページの中から4つご紹介します。

職業能力評価基準

職業能力評価基準とは従業員が仕事をするために必要な知識、技術や技能、成果につながる職務遂行能力は何かを業務、職種、職務別に整理したものです。

職業能力評価基準では、企業が従業員に対して期待する責任や役割の範囲と難易度により次の4つのレベルを設定しています。

レベル概要役職の例
レベル1・担当者として上司の指示や助言を踏まえて、定例的な業務を確実にできるのに必要な能力水準・担当者
レベル2・グループやチームの中心メンバーとして、創意工夫を凝らして自主的な判断、改善、提案をしながら業務を遂行するために必要な能力水準・係長
・主任
レベル3・中小規模組織の責任者や高度専門職として、上位方針を踏まえて管理運営、計画作成、業務遂行、問題解決などを行い、企業利益を創出する業務をするために必要な能力水準・課長
・マネージャー
レベル4・大規模組織の責任者や最高度の専門職として、広く総合的な判断や意思決定を行い、企業利益を先導・創造する業務を行うために必要な能力水準・本部長 ・部長

また全体構成と職種別能力ユニット一覧を見ると仕事の概要が把握できるので、自社の従業員が行っている職種ごとにどのような仕事ができるようになるのが望ましいのかがわかるようになっています。

例えばIT業界の場合参考にできるのが事務系職種の「情報システム職種」ですが、能力ユニットが次のように分類されています。

  • 情報システム基礎
  • システム化計画、設計基礎
  • システムの運用、管理基礎
  • 業務アプリケーションの選定、活用基礎
  • 情報化企画
  • 業務の分析、評価、改善
  • システムの開発
  • ITソリューションの選定、活用
  • システムの運用
  • 成果のマネジメント
  • 情報システム専門
  • 情報システム・マネジメント
  • 情報システム高度専門
  • 情報システム上級マネジメント

各能力ユニットの詳細としてレベル、職務遂行のための基準、必要な知識がまとめられているので人材育成計画を作成する際、個人別にどのような知識を身に着け、どのような能力水準を目指すのかを考える時の参考となるでしょう。

キャリアマップ

キャリアマップには、職業能力評価基準に基づいたキャリア形成の道筋とレベルが習熟できる標準年数が記載されており、従業員に対してキャリア形成への道筋をわかりやすく示すことができます。

人生育成計画を作成しても、従業員本人が何を目指してキャリアアップを図っていけばよいのかを理解できなければ、モチベーションの低下を招いてしまうため、企業としてはキャリアマップを活用して従業員にそれぞれのキャリアの方向性を理解しやすい形で伝えるのが大切です。

職業能力評価シート

職業能力評価シートとは、「職業能力評価基準」で、職種・職務・レベル別に定められている「職務遂行のための基準」を簡略化したもので、従業員に自分の能力レベルや次のレべルに上がるには何が不足しているのかを具体的に示すことができます。

職業能力評価シートの結果を集計することで、組織全体の育成における課題が見えてくるため、人材育成計画が立てやすくなるでしょう。

職業能力評価基準活用事例集

IT業界において職業能力評価基準をこれから活用していきたいなら、厚生労働省が公表している「職業能力評価基準活用事例集」が参考になるでしょう。

例えば2017年に公表された、Web系のアプリケーション開発を行っている株式会社エス・アイ・エスの事例では、技術者個人のスキルレベルが客観的にわからない、キャリアパスと連動した人材育成の仕組みがないという2つの課題を解決するために職業能力評価基準を導入した事例が紹介されています。

全社的な取り組みのためプロジェクトの責任者を代表取締役社長として推進をしましたが、従業員の意識、能力が変化し、目標の明確化ができた好事例となっています。

参考:厚生労働省「職業能力評価基準」

経営戦略に基づいて目指す人物像を決める

事前準備ができたら、次は経営戦略に基づいて自社が目指すのはどのような人物像なのかを決めましょう。

経営層の意見だけを反映すると現場がほしい人材とのずれが生じる可能性があるため、管理職やチームメンバーにもヒアリングを行うのがおすすめです。

目標を設定する

次に人材育成計画の目標を設定しますが、最終的な到達目標だけではなく細分化した目標も作っておくとスモールステップで達成しやすくなります。

目指す人物像と現在の従業員との間には必ずギャップがあるはずなので、その差を意識すると目標が立てやすくなるでしょう。

現状を把握する

現在の育成状況や従業員のスキルを把握します。

現状を丁寧に把握することで、自社の目標が適正なのか、また目標達成までにはどのくらいの時間がかかるのかがわかりやすくなるでしょう。

必要なスキルを把握する

職業能力評価基準も参考にして、目指す人物像に必要なスキルや資格、経験などを把握しましょう。

情報を整理したら期限、優先順位なども考えておくと実践しやすくなります。

目標達成のための手段を考える

従業員を目指す人物像に向かって育成し、目標を達成するためにはどのような方法を取ればよいのかを考えます。

社内外における研修、e-ラーニング、OJT、部署移動とまずはさまざまな選択肢を検討し、自社の現状に合わせて決めるのがよいでしょう。

全社に共有し実行する

完成した人材育成計画を全社で運用します。

時間の経過とともに企業の経営戦略は変化していくものなので、それに合わせて人材育成計画も定期的に見直しを図ることが大切です。

人材育成計画の階層による違い

人材育成計画に沿った研修を受講する新入社員

人材育成計画は、階層別にその内容や育成方法が異なるため、新入社員、中堅社員、管理職、役員にわけて違いをご紹介します。

新入社員

新入社員は他の階層の従業員と異なりまだ社会人基礎力が身についていないため、丁寧に指導し、曖昧な表現や教え方はしないようにしましょう。

新入社員の育成に効果的な手法は次の通りです。

  • メンター制度
  • OFF-JT
  • OJT

新入社員はまだ社会人として未熟な面が多いため、相談役になれるメンターが側にいることで課題解決が早まり、成長を促すことができます。

中堅社員

中堅社員は本人の専門性を高めるとともに、次のステップである管理職を見据えた育成を行うのが大切です。

中堅社員の育成に効果的な手法は次の通りです。

  • e-ラーニング
  • ジョブローテーション
  • コーチング

ジョブローテーションをすることで、伸び悩みがちな中堅社員のスキルを伸ばすとともに、継続的な能力開発も見込めるでしょう。

管理職

管理職は経営視点を持ち、適切に部下の育成、管理をすることで成果を挙げられるように育成するのが重要です。

管理職の育成に効果的な手法は次の通りです。

  • e-ラーニング
  • 外部研修
  • セミナーや講演会への参加

外部研修やセミナー、講演会などに参加することで、自社にいるだけでは得られない幅広い視野を持たせることができるでしょう。

役員

役員は育成が必要ないと勘違いされがちですが、将来の社長になれる人材をあらかじめ育成しておかなければ、事業を継承していくことができません。

役員の育成に効果的な手法は次の通りです。

  • 外部研修
  • セミナー

役員専門の外部研修やセミナーなどに参加することで、経営力、組織づくり、意思決定力などが養われるでしょう。

セイ・コンサルティング・グループでは人材育成計画に基づいた研修をサポートしています

セイ・コンサルティング・グループではIT企業の人材育成計画に基づいた研修をサポートしています。

セイ・コンサルティング・グループではホームページにおすすめの研修内容を掲載していますが、これはそのまま行うのではなく、企業のニーズに合わせてカスタマイズすることができます。

社内の研修だけでは自社の人材育成計画の目標達成が難しいと感じたら、ぜひセイ・コンサルティング・グループにご相談ください。

おすすめの研修内容(メニュー) - セイコンサルティンググループ (saycon.co.jp)

まとめ

人材育成計画とは、企業が従業員を自社にとって理想的な人材に育成するために必要な項目を具体的に挙げたものです。

この記事も参考にして、ぜひ自社の求める人物像に合った人材育成計画を作ってみてください。