グラウンデッド理論とは?
グラウンデッド理論(Grounded Theory)は、質的研究の手法の一つで、データから理論を導き出す方法として知られています。従来の研究手法では、あらかじめ理論を構築し、それを検証するためにデータを収集するという流れが一般的です。しかし、グラウンデッド理論では逆に、まずデータを収集し、そこから理論や仮説を生成していくというアプローチを取ります。
では、この手法の特徴や具体的なプロセスについて、詳しく見ていきましょう。
グラウンデッド理論とは?
グラウンデッド理論は1960年代に社会学者のバーニー・グレイザー(Barney Glaser)とアンセルム・ストラウス(Anselm Strauss)によって開発されました。二人は、病院の死を迎える患者の研究を行う中で、従来の理論に縛られない「現場から直接理論を導く」手法の必要性を感じました。この方法は、データをもとに理論を作り上げるため、「地に足のついた(Grounded)」理論と呼ばれるようになりました。
グラウンデッド理論の目的
グラウンデッド理論の最大の目的は、データに基づいた実用的で現実に即した理論を構築することです。特に、社会現象や人々の行動を理解したり、複雑な状況を解明するための理論を生み出すために用いられます。既存の理論にとらわれずに、データが示す傾向やパターンを発見し、そこから仮説や理論を形成していくため、新しい視点や理解を得ることが期待できます。
グラウンデッド理論のプロセス
グラウンデッド理論では、データ収集と分析が並行して行われ、これを「逐次的アプローチ」と呼びます。以下のような手順が一般的です。
1. データ収集
グラウンデッド理論では、インタビューや観察、ドキュメント分析など、さまざまな方法でデータを収集します。ポイントは、データの種類や量にとらわれず、意味のある情報を幅広く集めることです。
2. コーディング
データ収集が始まると、すぐに「コーディング」と呼ばれる分析プロセスに入ります。コーディングとは、データを細かく分け、それぞれに「コード」と呼ばれるラベルをつける作業です。例えば、インタビューで「患者は入院生活に不安を感じている」という発言があれば、「不安」というコードを付与することになります。コーディングには、次の3つの段階があります。
- オープン・コーディング:データの中から関連性のある要素を探し出し、それぞれにコードを付ける作業
- アクシアル・コーディング:コード同士の関係性を見つけ出し、重要なテーマやカテゴリーを発見する
- セレクティブ・コーディング:最も重要なカテゴリーを中心に、理論の骨組みを構築する
3. メモ作成
研究者はデータの分析を進めながら、思考や発見、気づきについてメモを取ります。これを「メモ作成」と呼び、理論の発展や修正に役立つ重要な資料となります。メモは、データと理論のつながりを深めるためのツールとして機能し、最終的な理論構築に貢献します。
4. 理論生成
データの分析とメモ作成を通じて、徐々に理論が形成されていきます。この理論は、現場から生まれた具体的なもので、データに基づいているため現実に即していることが特徴です。最終的には、生成された理論が他の場面や状況でも適用可能かどうかを確認し、理論をさらに洗練させます。
グラウンデッド理論のメリットとデメリット
メリット
- 現実に即した理論を構築できる:実際のデータに基づいているため、現実社会での適用性が高いです。
- 柔軟な研究が可能:データに応じて分析の方向性を変えられるため、柔軟な研究が可能です。
- 新しい発見の可能性:既存の理論にとらわれず、研究者の直感や発見が反映されやすいです。
デメリット
- 時間と労力がかかる:データ収集と分析を同時に行うため、非常に時間と労力がかかります。
- 主観が入りやすい:研究者の視点や解釈が大きく影響するため、客観性の担保が難しいです。
- 再現性が低い:他の研究者が同じ結果を得ることが難しい場合があります。
グラウンデッド理論の活用例
医療現場での応用
例えば、病院での看護師の役割について研究する際に、グラウンデッド理論は役立ちます。看護師へのインタビューや観察を通じて、彼らがどのように患者と接し、どのような困難やジレンマを感じているかを知ることができます。これにより、看護の現場に即した新しい支援体制の構築や、患者との接し方に関する理論が導かれるかもしれません。
教育現場での応用
また、教育現場での教師と生徒の関係についても、グラウンデッド理論が応用されています。授業中の観察やインタビューを通じて、教師がどのような教育方法を用い、生徒がどのように反応するかを分析し、教育方法の改善につながる新しい理論が導き出される可能性があります。
今後の学びのために
グラウンデッド理論は、特に社会科学や医療、教育といった「人間の行動や関係性」を扱う分野での研究に有効です。この理論を理解し、実際のデータ収集と分析を経験することで、現実に即した理論を構築するスキルが身につくでしょう。まずは小さなプロジェクトから始め、データ収集から分析までの流れを実際に体験してみるのがおすすめです。
投稿者プロフィール
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セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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