新人エンジニア向けの研修講師が「知識の呪い」を克服するには?
こんにちは。ゆうせいです。
新人エンジニア向けの研修講師が「知識の呪い」を克服するためには、意識的な工夫と実践が必要です。研修は知識のインプットだけでなく、相手に「伝わる」ことが最優先です。では、具体的にどうすれば良いか、一緒に考えてみましょう。
今日は「知識の呪い」という興味深い概念についてお話しします。この言葉、少し聞き慣れないかもしれませんが、実は日常生活や仕事でも意外とよく見かける現象なんです。「知識の呪い」とは一体何でしょうか?
知識の呪いとは?
「知識の呪い(The Curse of Knowledge)」とは、一度得た知識やスキルを忘れることができないため、他人がそれを知らない状態を理解しづらくなる現象を指します。この言葉は認知心理学や行動経済学の分野で使われることが多いです。たとえば、教える立場の人が、自分が当たり前だと思っている知識を初心者に分かりやすく伝えるのに苦労する場面を想像してみてください。それが「知識の呪い」です。
簡単な例
- ギターを教える場面
ギター経験者が初心者にコードを教えるとします。「Gコード」を押さえるとき、初心者は指をどこに置けばいいのか戸惑います。一方で、経験者にとってはこれが当たり前すぎて「なぜ分からないの?」と思ってしまうかもしれません。 - 専門用語の多用
医者が患者に病気の説明をするとき、「炎症」「代謝」といった医学用語を使うとします。医者にとっては基本的な言葉でも、患者にとっては何のことか分からないことが多いですよね。
なぜ「呪い」と呼ばれるのか?
「知識の呪い」という言葉には、学びによるプラスの影響が時にマイナスにもなる皮肉が含まれています。知識を持つことで、自分と他人との間に無意識の「ギャップ」が生まれ、コミュニケーションや指導が難しくなるからです。
これは、相手の視点に立つ能力が減少してしまうことから来ています。たとえば、以下のような問題が起こることがあります:
- 相手を置き去りにしてしまう:専門知識に頼りすぎると、初心者が何も理解できないまま話が進む。
- イライラしてしまう:なぜ相手が理解できないのかを説明者自身が理解できないため、苛立つことも。
- 誤解が生じる:知識を持つ側と持たない側の間に、情報のズレが起きやすくなる。
知識の呪い克服の基本的な考え方
新人エンジニアは、経験や基礎知識のレベルが講師とは大きく異なることが多いです。講師自身が「当たり前」と思っていることも、新人には未知の領域です。この「ギャップ」を埋めるためには以下の3つの基本姿勢が重要です。
1. 初心者の目線に立つ
自分のエンジニアとしてのスタート地点を思い出してください。「何が分からなかったか」「どこでつまずいたか」を振り返ることがポイントです。
2. シンプルさを追求する
技術的な正確性は大事ですが、複雑な話を一気に伝えるのは逆効果。シンプルな例や比喩を使って、少しずつステップを踏むことを意識しましょう。
3. 「伝えたつもり」を避ける
説明後に、相手の反応を確認する姿勢を持ちましょう。一方的な説明は「伝わった」ではなく「話しただけ」で終わる危険があります。
実践的な克服方法
1. 事前に新人のレベルを把握する
事前アンケートや面談で、参加者のスキルや経験を確認しましょう。例えば、「プログラミング経験」「使用したことがある言語」などの情報を集めれば、講義内容を調整しやすくなります。
質問例:
- 「プログラムを書く経験はどのくらいありますか?」
- 「現在、得意だと思う技術や分野はありますか?」
2. 専門用語を丁寧に解説する
講師は、業界の専門用語に慣れてしまいがちです。しかし、新人には馴染みがない場合が多いです。例えば、以下のような説明を意識しましょう。
悪い例:
「この部分はAPIで外部サービスと連携します。」
良い例:
「APIというのは、システム同士がやり取りするためのルールや仕組みのことです。例えるなら、言語や文化が違う人同士が通訳を介して話すようなものです。」
3. 具体例と比喩を活用する
抽象的な話は分かりづらいので、日常生活や簡単なシステムの例を使いましょう。
例:
「データベースは図書館の本棚のようなもので、情報を整然と管理します。SQLはその本を探すためのルールや手順だと考えると分かりやすいですよね。」
4. 小さな成功体験を提供する
一気にすべてを教えようとするのではなく、段階的に「できた!」という成功体験を積ませるとモチベーションが上がります。
例:
- 簡単なプログラムを書いて動かす。
- 少し複雑な問題に挑戦してみる。
- 実際の業務に近い課題を解く。
5. ペアプログラミングやワークショップ形式を取り入れる
講義形式だけではなく、実際に手を動かす場を設けると学びが深まります。他の受講者と協力することで、相手の疑問点や考え方も共有できます。
心構えと進め方の工夫
1. 「分からないのは当たり前」という前提を持つ
新人が理解に時間がかかるのは自然なことです。焦らず丁寧に説明することで、信頼関係が築けます。
2. 理解度を逐一確認する
スライド1枚分の説明が終わったら、必ず「ここまでで質問はありますか?」と確認しましょう。無反応の場合でも「ではこの部分を具体的に考えてみましょう」と質問を促してください。
3. 例題を段階的に発展させる
最初は基本的な例題を用意し、それを少しずつ複雑にすることで、徐々に知識を深めていけます。
例:
- ステップ1:単純な「Hello World」プログラム。
- ステップ2:入力を受け取るプログラム。
- ステップ3:条件分岐やループを組み合わせたプログラム。
今後の研修計画に向けて
知識の呪いを克服することで、教えるスキルが格段に上がり、参加者の成長を効果的にサポートできるようになります。
次回の研修では、以下を意識してみましょう:
- 初心者目線に立つ練習をする。
- 専門用語を平易な言葉で説明できるか準備する。
- 「伝えたつもり」にならないよう確認を徹底する。
これを繰り返せば、新人にとって分かりやすく、信頼される講師になれるはずです。ぜひ挑戦してくださいね!
セイ・コンサルティング・グループでは新人エンジニア研修のアシスタント講師を募集しています。
投稿者プロフィール
-
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
この記事に間違い等ありましたらぜひお知らせください。
最新の投稿
- 新人エンジニア研修講師2024年12月26日研修後のフォローアップメールをより効率的かつ効果的に活用するための「テンプレート作成のポイント」
- 新人エンジニア研修講師2024年12月26日研修講師がフォローアップメールを活用するには?
- 全ての社員2024年12月26日TOEIC 900点レベルの英熟語200選
- 全ての社員2024年12月26日TOEICで頻出する複合名詞(Compound Nouns)