ゼロトラストとは何か?
ゼロトラストという言葉を聞いたことがありますか?直訳すると「ゼロの信頼」となりますが、これは一体どういう意味なのでしょうか。
ゼロトラスト(Zero Trust)は、従来の「信頼に基づく」セキュリティモデルに代わる、新しいセキュリティの考え方です。従来のセキュリティモデルでは、一度ネットワークにアクセスできる権限が与えられると、その後はそのユーザーやデバイスが自動的に信頼されることが多かったです。たとえば、家の中に入った人を一度入れてしまえば、その後は部屋中自由に歩き回れるような感じです。しかし、これではもし侵入者が許可された場合、内部の全ての情報がリスクにさらされる可能性があります。
一方、ゼロトラストでは、すべてのアクセスを常に検証し、たとえ社内のネットワークにいるユーザーやデバイスであっても、一切の信頼を前提としません。これは、社内外を問わず、すべてのアクセスリクエストに対して「一度信じたからといって、常に信じるわけではない」という厳格な姿勢を持つことを意味します。
では、この「信頼しない」という考え方が具体的にどのように機能するのか、詳しく見ていきましょう。
ゼロトラストの基本原則
ゼロトラストには、いくつかの重要な原則があります。それらを理解することで、このセキュリティモデルがどう機能し、なぜ有効なのかがわかります。
1. ネットワークの内外を問わない
従来のセキュリティモデルでは、社内のネットワークを安全と見なし、社外のアクセスを危険と見なすことが一般的でした。しかし、ゼロトラストでは、このような内外の区別をしません。社内にいるユーザーでも、外部にいるユーザーでも、すべてのアクセスを疑い、必ず確認する必要があります。
2. 常に検証
ユーザーが一度ネットワークに接続しても、その後も継続的にそのアクセスが正当かどうかを確認します。これを「常時検証(Continuous Verification)」と呼びます。たとえば、社員が会社のネットワークにログインしても、時間が経過したり、他のリソースにアクセスしようとするたびに再度検証が行われます。これにより、不正なアクセスが途中で発生しても、すぐに検知し対応できるようになります。
3. 最小権限の原則
ゼロトラストでは「最小権限の原則(Principle of Least Privilege)」が重要です。これは、ユーザーやデバイスに対して、その時に必要な最小限のアクセス権しか与えないという考え方です。たとえば、データベースの管理者であっても、通常の作業中はデータベース全体にアクセスする権限を持つのではなく、必要な部分だけにアクセスできるように制限されます。これにより、万が一アカウントがハッキングされても、被害を最小限に抑えることができます。
ゼロトラストのメリットとデメリット
ゼロトラストには多くのメリットがありますが、導入には課題もあります。ここでは、その両方を詳しく見ていきます。
メリット
- セキュリティの強化:ネットワーク内外を問わず、すべてのアクセスを検証するため、従来のセキュリティモデルに比べて、より安全です。不正アクセスや内部の脅威にも対応できます。
- 被害の最小化:仮に侵入されたとしても、最小限の権限しか与えられていないため、被害が広がるリスクが低くなります。
- 柔軟な対応:リモートワークやクラウドサービスの利用が増える現代では、どこからでも安全にアクセスできるゼロトラストモデルが有効です。
デメリット
- 導入の複雑さ:すべてのアクセスを常に検証するため、システムの構築や運用に手間がかかる場合があります。また、既存のシステムをゼロトラストモデルに合わせるには、大規模な変更が必要になることもあります。
- ユーザーの利便性低下:頻繁に認証を求められるため、ユーザーにとっては手間が増えることがあります。たとえば、毎回パスワードを入力したり、多要素認証を求められるなど、利便性とのバランスが課題です。
ゼロトラストが必要とされる理由
では、なぜゼロトラストが注目されているのでしょうか?それは、近年のサイバー攻撃の増加と関係しています。
現在、サイバー攻撃はますます高度化し、企業や個人が狙われるケースが増えています。また、リモートワークの普及やクラウドサービスの利用拡大により、従来の「社内ネットワーク=安全」という考え方が通用しなくなっています。どこからでもアクセスできる環境が整ったことで、セキュリティの境界線が曖昧になり、内部からの攻撃や外部の脅威に対する防御がますます困難になっているのです。
そのため、ゼロトラストのような「常に疑う」アプローチが必要とされています。たとえ社内ネットワークであっても、すべてのアクセスを常にチェックし、リスクを最小限に抑えることが求められています。
ゼロトラストの導入方法
ゼロトラストの導入にはいくつかのステップがあります。
1. 資産の把握
まず、自社のネットワークに接続しているすべてのデバイスやユーザーを把握する必要があります。これにより、どの部分がリスクにさらされやすいかを理解することができます。
2. 認証の強化
次に、強力な認証システムを導入します。多要素認証(MFA)などを活用して、パスワードだけでなく、追加の認証ステップを取り入れることで、セキュリティを強化します。
3. 継続的な監視と分析
ネットワーク上のすべてのアクセスを常に監視し、異常な活動があれば即座に検知できる仕組みを整えることが重要です。これにより、早期に脅威を発見し、迅速に対応できます。
今後の学習の指針
ゼロトラストは現代のセキュリティにおける重要な概念であり、これからもその必要性は増していくでしょう。まずは、ゼロトラストの基本的な考え方をしっかりと理解し、その後は具体的な実装方法や技術について学ぶことが次のステップとなります。たとえば、クラウドサービスのセキュリティ強化や、多要素認証の導入方法などがその一例です。
さらに、ゼロトラストの導入に伴うコストやシステム運用の課題にも目を向けることで、実際に導入する際の現実的な問題点も理解できるようになるでしょう。
この先、ゼロトラストの考え方を取り入れたセキュリティの世界を学び続けることが、今後のセキュリティ対策に大きく貢献します。
投稿者プロフィール
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セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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