カオスエンジニアリングと新人エンジニア研修のアイディア

カオスエンジニアリングという言葉を聞いたことがありますか?最近、システムの信頼性や耐障害性を強化するための方法として注目されています。このカオスエンジニアリングの考え方は、新人研修にも非常に役立つものです。今回は、カオスエンジニアリングが何なのか、そして新人研修にどう活かせるのかについてお話しします。


カオスエンジニアリングとは?

まずは、カオスエンジニアリングの基本を理解しておきましょう。カオスエンジニアリングとは、意図的にシステムに障害を起こし、その影響を観察し、システムの弱点を発見・改善する手法です。Netflixがシステムの安定性を向上させるために始めたもので、「Chaos Monkey(カオスモンキー)」というツールが有名です。カオスモンキーは、システムのランダムな部分を停止させて障害をシミュレートし、その反応を観察します。

この考え方を使うと、システムが突発的な問題にどのように対応できるかを実践的に確認できます。イメージとしては、テストのためにわざと電気を落として、どこが弱いかを確かめるようなものです。


カオスエンジニアリングの目的

カオスエンジニアリングの目的は、次のようなものです。

  1. システムの耐障害性を高める:システムの中で弱い部分がどこかを見つけることで、改善が必要な点を明確にできます。
  2. 障害発生時の対応力を鍛える:予想外のトラブルが起きても対応できる体制を築くことが可能です。
  3. 運用コストの削減:事前に弱点を解消しておけば、障害によるコストや顧客への影響を抑えられます。

新人研修でカオスエンジニアリングを活用するメリット

カオスエンジニアリングは、新人研修に取り入れると大変効果的です。新入社員にとって、トラブルが起きたときの対応は重要なスキルですが、通常は「実際に障害が発生してから」学ぶことが多く、緊急の対応に追われながらの学習となるため非常にストレスがかかります。しかし、カオスエンジニアリングを活用することで、意図的に障害をシミュレートし、計画的に学ぶことができます。

メリット1:障害対応スキルの強化

意図的にシステムに問題を起こすことで、トラブルシューティングの訓練が可能になります。新人が障害対応のスキルを得ることで、現場での即戦力となります。例えば、ネットワークが突然切れるシナリオを設定し、復旧方法を学ばせることで、実践的な経験を積ませることができます。

メリット2:チームワークとコミュニケーションの向上

障害が発生したときの対応には、迅速なコミュニケーションが不可欠です。新人同士でチームを組んで問題解決に当たることで、自然と協力して働く力や報告・連絡の重要性を学ぶことができます。

メリット3:ストレス耐性の向上

突然の障害に直面する場面はストレスが伴いますが、シミュレーションで経験を積むことで、本番の障害にも落ち着いて対応できるようになります。あらかじめ障害対応を体験することで、自信を持って行動できるようになるでしょう。


新人研修でのカオスエンジニアリング実施方法

実際に新人研修でカオスエンジニアリングを導入する場合、次のようなステップが考えられます。

ステップ1:目的と範囲の明確化

まず、何を目的に行うのかをはっきりさせましょう。新人にとってはシステム全体が未知の領域なので、最初は範囲を限定して簡単なシナリオを使います。例えば、ウェブアプリケーションのサーバーがダウンしたときにどう復旧させるか、ネットワークの一部が遮断されたときにどうするか、といった具合です。

ステップ2:シナリオ設計と実施

シナリオを設計する際には、段階的に難易度を上げていくと良いでしょう。最初は単純な障害から始め、徐々に複雑な障害に対応させることで、ステップアップしながら学べます。例えば、以下のようなシナリオが考えられます。

シナリオ内容
システムの遅延発生サーバーのレスポンスが遅くなる状況をシミュレート
データベースの障害データベースが接続不能になる
ネットワーク切断ネットワークの一部が遮断される
サーバーダウンメインサーバーがダウンしバックアップに切り替える

ステップ3:フィードバックと改善

研修終了後にはフィードバックを行い、どの部分がうまくいったのか、改善点はどこかを共有します。これにより、単に経験するだけでなく、次に活かせる形で知識が定着します。


カオスエンジニアリングの注意点

カオスエンジニアリングは効果的な手法ですが、適切に行わないと逆効果になることもあります。新人研修に取り入れる場合には、以下のポイントに注意が必要です。

  1. 過度な負荷を避ける:シナリオの難易度が高すぎると、新人が混乱してしまいます。適切な段階設定が大切です。
  2. フォローアップの徹底:障害対応を経験させるだけではなく、復習や反省会を通じて学びを深める仕組みを整えましょう。
  3. 安全性の確保:本番環境で行わず、研修用のテスト環境で行うことが必須です。

今後の研修プログラムに向けて

カオスエンジニアリングは、新人にとって現場に近い形でのスキル習得を可能にする方法です。技術的な知識だけでなく、問題解決力やストレス耐性、チームワーク力といった、実務で役立つスキルを身に付けさせるための手法として活用する価値があります。

研修担当者としては、カオスエンジニアリングを安全に、効果的に導入する方法を模索し、必要に応じてシナリオを見直す柔軟な対応も求められます。システムの進化に伴い、カオスエンジニアリングの手法も多様化していますので、研修プログラムもその都度アップデートしていくことが重要です。

新人研修でこのような実践的なトレーニングを取り入れ、会社全体の成長につなげてみてはいかがでしょうか?

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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