PMBOKの歴史

プロジェクトマネジメントの知識体系を集約したガイドブックとして知られるPMBOK(Project Management Body of Knowledge)は、プロジェクトマネジメントに関わる多くの専門家にとって、重要な道標です。このPMBOKはどのようにして生まれ、進化してきたのでしょうか。今回はその歴史について見ていきましょう。

1. PMBOKの誕生背景

PMBOKが誕生したのは、プロジェクトマネジメントという分野が成長し、体系的な知識を求められるようになった1970年代後半から1980年代にかけてです。

当時、多くの業界で大規模なプロジェクトが増え、プロジェクトマネジメントの標準化が急務となっていました。企業や団体は、プロジェクトが成功するためにどのように進めるべきかを共通のフレームワークとして求め始めました。そこでアメリカの非営利団体であるPMI(Project Management Institute)が、このニーズに応えるべく、標準的な知識体系を作るために動き出しました。

2. 初期のPMBOK

最初に正式な形で発表されたのは1987年です。この時に発行されたのが「PMBOKガイド」の初版で、プロジェクトマネジメントの基礎知識を集約したドキュメントでした。最初のバージョンでは、スコープ時間コストの管理を中心としたシンプルな内容でした。

しかし、プロジェクトマネジメントの分野は急速に進化しており、次々と新しい技術やアプローチが登場しました。PMBOKもその進化に合わせて更新が行われるようになりました。

3. PMBOKの進化

PMBOKは、時代に合わせて徐々に内容が充実し、バージョンごとに新しい要素が加わっていきました。以下は、各バージョンの重要な変遷です。

3.1 PMBOK 1996年版(第2版)

このバージョンでは、プロジェクトライフサイクルステークホルダーの管理といった新しい概念が追加されました。プロジェクトは単に「始めて終わるもの」ではなく、その途中に複数のフェーズがあり、各フェーズごとに管理すべきことが異なるという考え方が広まりました。

3.2 PMBOK 2000年版(第3版)

2000年版では、リスク管理やコミュニケーション管理の強化が図られました。特にリスク管理は、プロジェクトの成功において極めて重要な要素として位置付けられ、多くのプロジェクトマネージャーが注目するようになりました。

3.3 PMBOK 2008年版(第4版)

このバージョンでは、手法の標準化がさらに進められ、プロセスの整理と統合が行われました。また、プロジェクトマネジメントの要素をプロセスグループ知識エリアに分ける形で、より体系的に整理されました。

3.4 PMBOK 2013年版(第5版)

第5版では、特にステークホルダー管理が独立した知識エリアとして扱われるようになり、ステークホルダーマネジメントが注目されました。プロジェクトを成功に導くためには、チームメンバーだけでなく、顧客や取引先、さらには社内の関係部署など、多くの関係者との適切なコミュニケーションが不可欠であるという視点が強調されました。

3.5 PMBOK 2017年版(第6版)

第6版では、アジャイル(Agile)などの新しいプロジェクトマネジメント手法への対応が強化されました。特にIT分野やソフトウェア開発の分野では、変化に迅速に対応できるアジャイル手法が多用されています。この変化に合わせて、PMBOKにもアジャイル関連の知識や手法が追加され、プロジェクトの管理手法がさらに多様化しました。

4. PMBOKの現在

そして、PMBOK第7版は2021年に発行されました。このバージョンでは従来のプロセス重視から、原則重視へと大きな変革が行われました。これにより、プロジェクトマネージャーが直面するさまざまな状況に柔軟に対応できるよう、より幅広い視点でのアプローチが強調されています。

第7版の特徴的な点は、プロジェクトを単に「管理する」だけでなく、より価値を創造するための手法を提示していることです。また、アジャイル手法だけでなく、ハイブリッド型のプロジェクトマネジメント手法も推奨されています。つまり、状況に応じて従来のウォーターフォール型とアジャイル型を組み合わせることができる柔軟なアプローチです。

5. PMBOKの今後

PMBOKはこれまでに何度も更新され、時代のニーズに応じた進化を遂げてきました。今後も、新しい技術や社会的な要請に応じて内容が更新され続けるでしょう。プロジェクトマネジメントは、あらゆる分野に適用できる知識であり、特にAIやデジタルトランスフォーメーションが進む現代において、ますますその重要性が増しています。

プロジェクトマネージャーやプロジェクトチームは、こうした変化に柔軟に対応し、PMBOKを活用しながら常に最新の手法や考え方を取り入れていくことが求められます。

今後、プロジェクトマネジメントを学ぶ人は、PMBOKの歴史と進化を理解することで、単なる知識の習得に留まらず、どのように実践に活かすかを考えることが重要です。

プロジェクトマネジメントは一朝一夕に習得できるものではありませんが、PMBOKの活用を通じて、自身のスキルを段階的に高めていくことができます。

セイ・コンサルティング・グループのプロジェクトマネジメント研修のおすすめ

投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
この記事に間違い等ありましたらぜひお知らせください。