グレイナーの企業成長モデルとは?

グレイナーの企業成長モデルは、企業の成長過程を6つのフェーズに分け、それぞれのフェーズで企業が直面する「危機」とその「成長のメカニズム」を示した理論です。このモデルは、アメリカの経営学者ラリー・E・グレイナーが1972年に提唱しました。企業が成長する過程で、組織内外の変化に伴い、新たな課題や障害が現れることを体系的に説明しています。

企業が成長していく上で、ただ売上や規模が拡大するだけでなく、組織の内部構造や経営スタイルも変化していきます。このモデルでは、それぞれの成長段階で発生する課題や危機を乗り越えることが、さらに大きな成長へのカギであると示しています。

それでは、具体的な成長フェーズを見ていきましょう。

フェーズ1: 創造の段階 (Creativity)

特徴

企業のスタートアップ時期で、従業員数はおおよそ10〜50名ほど。この段階では、創業者がリーダーシップを発揮し、非常に少人数のチームで業務を遂行します。組織内ではまだ役割分担が明確でないことが多く、個々の従業員が複数の業務を担当することが一般的です。

成長のメカニズム

  • イノベーションと創業者のビジョンが成長の原動力。
  • 少人数でのコミュニケーションが容易であり、柔軟な意思決定が可能。

直面する危機: リーダーシップの危機

従業員数が増え始めると(50〜100名)、創業者が全ての業務を管理しきれなくなり、リーダーシップの分散が必要となります。


フェーズ2: 指導の段階 (Direction)

特徴

組織が拡大し、従業員数が100〜200名ほどに達するこの段階では、経営者による指導が重要です。専門的なマネジメント層が導入され、役割分担が明確になり、企業全体の方向性や運営方針が定められます。

成長のメカニズム

  • 管理職の登用や組織の階層化によって、効率的な運営が行われます。
  • 明確な指導と標準化された業務プロセスが成長を促進します。

直面する危機: 自主性の危機

従業員数が200〜300名になると、現場の従業員が自主性を発揮しづらくなり、モチベーションの低下が課題となります。


フェーズ3: 権限委譲の段階 (Delegation)

特徴

企業がさらに成長し、従業員数が300〜500名を超えると、管理者が全ての業務を直接監督することが難しくなります。このため、各部署に権限を委譲し、分権的な組織構造が形成されます。

成長のメカニズム

  • 権限を現場に委譲することで、現場の迅速な意思決定と責任感を強化。
  • 各部署や地域ごとに柔軟な対応が可能になります。

直面する危機: 統制の危機

従業員数が500〜1,000名に近づくと、各部署間での連携が弱まり、企業全体の統制が取れなくなることがあります。


フェーズ4: 調整の段階 (Coordination)

特徴

この段階に入ると、企業の従業員数は1,000〜5,000名規模となり、部署間の調整が重要な課題になります。権限委譲によって分散していた業務を再び統合し、企業全体で効率的に運営するためのプロセスが必要になります。

成長のメカニズム

  • 各部門間の協力体制を強化し、標準化された業務プロセスを整備。
  • 統合されたシステムや中央集権的な調整メカニズムを導入。

直面する危機: 官僚主義の危機

過度に調整を重視しすぎると、業務が硬直化し、官僚主義的な傾向が強まります。この危機は、従業員数が5,000名以上に達した企業で顕在化しやすいです。


フェーズ5: 協力の段階 (Collaboration)

特徴

官僚主義に陥った企業は、柔軟性を取り戻すために、5,000〜10,000名の規模で協力的な組織文化を育てます。チームベースの働き方やプロジェクト型の組織が導入され、縦割りの部門間での協力が進みます。

成長のメカニズム

  • 部門横断的なプロジェクトや協力体制を築き、柔軟性を高めます。
  • 情報共有を強化し、チームベースで迅速な意思決定が行われます。

直面する危機: 成長飽和の危機

従業員数が10,000名以上の企業では、これ以上の成長が難しくなり、新たな成長機会を見つけるために事業の多角化や新市場の開拓が求められます。


フェーズ6: 提携の段階 (Alliances)

特徴

企業がさらに成長を続け、10,000名以上の大規模組織になると、外部との提携や合併・買収(M&A)が成長の鍵となります。外部との連携を通じて、限界に近い成長を持続させます。

成長のメカニズム

  • 他社との提携やM&Aを通じて、シナジー効果を生み出します。
  • 新技術や市場開拓により、新たな成長機会を模索します。

直面する危機: 組織文化の融合の危機

異なる企業文化を持つ組織同士の統合が課題となり、従業員の間で摩擦が生じやすくなります。


グレイナーのモデルを従業員規模に合わせて考える

従業員数の目安を加えることで、企業の成長とともに変わる課題をより明確に把握できるようになります。小規模なスタートアップから大企業に成長する過程で、規模に応じた組織の変化や危機を理解し、それに応じた対策を講じることが、成功への道筋となります。