PythonでAIプログラミングを学ぶ際にオブジェクト指向は必要か?

こんにちは。ゆうせいです。

結論から言うと、「初学者がAI(機械学習・深層学習)を学ぶ段階では、オブジェクト指向の理解は必須ではないが、習得するとより高度な実装やカスタマイズがしやすくなる」 というのが現実的な答えです。

では、なぜそう言えるのか? オブジェクト指向の必要性について詳しく解説していきます。


1. 初学者レベルではオブジェクト指向は不要

Pythonには、オブジェクト指向(OOP: Object-Oriented Programming) というプログラミングの概念があります。これは「データ(属性)とその処理(メソッド)をまとめたクラスを作成し、それをインスタンス化して扱う」という方法です。

しかし、AIの基本的なプログラミング(機械学習モデルの実装)では、ほとんどの処理が関数ベースで記述できるため、オブジェクト指向を知らなくても問題なく学習できます。

例えば、Scikit-learnやTensorFlow、PyTorchなどのライブラリを使う際、ほとんどの処理は以下のようなシンプルなコードで実装できます。

【例】オブジェクト指向を使わないAIの実装(Scikit-learn)

from sklearn.linear_model import LinearRegression
import numpy as np

# データ準備
X = np.array([[1], [2], [3], [4], [5]])
y = np.array([2, 4, 6, 8, 10])

# モデルの作成と学習
model = LinearRegression()
model.fit(X, y)

# 予測
pred = model.predict([[6]])
print(pred)  # [12.]

このコードを見るとわかるように、クラス(LinearRegression)は使っていますが、自分でクラスを定義してオブジェクト指向を駆使する必要はありません。ライブラリが提供するクラスをそのまま使うだけで、機械学習モデルは作成できます。

そのため、初学者が機械学習や深層学習を学び始める段階では、オブジェクト指向を理解していなくても問題ありません。


2. オブジェクト指向が必要になる場面

しかし、AIの学習が進んでいくと、オブジェクト指向の知識が必要になる場面が増えてきます。

✅ 2-1. カスタムモデルの作成(PyTorch・TensorFlow)

特に、ディープラーニング(深層学習)でカスタムモデルを作成する際には、オブジェクト指向の考え方が求められます。

例えば、PyTorchではニューラルネットワークのモデルを作成する際、torch.nn.Moduleを継承してクラスを作成します。

【例】PyTorchでカスタムニューラルネットワークを定義

import torch
import torch.nn as nn
import torch.optim as optim

# ニューラルネットワークの定義(オブジェクト指向)
class NeuralNet(nn.Module):
    def __init__(self, input_size, hidden_size, output_size):
        super(NeuralNet, self).__init__()
        self.fc1 = nn.Linear(input_size, hidden_size)
        self.relu = nn.ReLU()
        self.fc2 = nn.Linear(hidden_size, output_size)
    
    def forward(self, x):
        x = self.fc1(x)
        x = self.relu(x)
        x = self.fc2(x)
        return x

# モデルの作成
model = NeuralNet(3, 5, 2)
print(model)

ここでは、**「ニューラルネットワークの構造を1つのクラスにまとめる」**というオブジェクト指向の考え方を使っています。

もしオブジェクト指向を知らないと、このようなカスタムモデルを定義するのが難しくなります。


✅ 2-2. 再利用しやすいコードの設計

AIのプロジェクトが大規模になると、コードの再利用性やメンテナンス性が重要になります。
例えば、データの前処理・モデルの訓練・評価をオブジェクト指向を活用して整理すると、コードの可読性が向上し、メンテナンスが容易になります。

【例】データ処理のクラス化

class DataProcessor:
    def __init__(self, data):
        self.data = data

    def normalize(self):
        self.data = (self.data - self.data.mean()) / self.data.std()
        return self.data

# 使い方
import numpy as np
data = np.array([1, 2, 3, 4, 5])
processor = DataProcessor(data)
normalized_data = processor.normalize()
print(normalized_data)

このように、オブジェクト指向を活用することで、データの処理を1つのクラスにまとめ、簡潔で再利用しやすいコードを実装できます。


3. まとめ:AIプログラミングにおけるオブジェクト指向の必要性

レベル必要性理由
初学者ほぼ不要Scikit-learnやTensorFlowなどのライブラリをそのまま使えば十分
中級者あったほうが良いディープラーニングのカスタムモデルを作成する際に必要
上級者必須AIの大規模プロジェクトでは、再利用性・メンテナンス性が重要

✅ 結論:

  • AIプログラミングの入門レベルでは、オブジェクト指向を知らなくても問題ない。
  • ディープラーニングのカスタムモデルを作成する際には、オブジェクト指向の知識が必要になる。
  • 大規模なAIシステムを作るなら、オブジェクト指向を理解しておくと便利。

そのため、「とりあえずAIを学びたい!」という場合は、関数ベースのプログラミングから始めるのがおすすめです。ただし、より高度なAIシステムを作る場合には、オブジェクト指向の理解が役立つので、学習を進めながら徐々に習得していくとよいでしょう。

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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