「プログラミングを学び始めたい!」
「新人研修でPythonを学ぶことになったけど、何から手をつければ…」
そんなあなたのための「Python(パイソン)入門の決定版」へようこそ!
AI開発からWebサービスまで、今もっとも注目されているPython。この記事では、プログラミング自体が初めてという方でも安心して学べるよう、Pythonの基本文法から、プロが使うツール「VSCode」、そして挫折しないための「学習のお作法」まで、すべてをゼロから解説します。
そもそもPythonって何者?
Pythonを一言でいうと、「読みやすくて、できることが多い」プログラミング言語です。
「言語」という名前の通り、これはコンピュータに「あれやって、これやって」とお願い(命令)するための言葉の一種。人間同士が日本語や英語で会話するのと似ていますね。
では、なぜ世界中のエンジニアが、そして多くの企業の新人研修がPythonを選ぶのでしょうか?
Pythonの「すごい」特徴
- 1. 文法がシンプルで読みやすい!
- 他の言語に比べて、まるで英語を読んでいるかのようにスッキリ書けるのが特徴です。初心者が最初につまずきがちな「おまじない」のような記述が少なく、プログラミングの「考え方」を学ぶのに最適です。
- 2. できることの幅が「広すぎ」!
- AI・機械学習: 今話題のAI開発の多くはPythonです。
- Webアプリケーション: InstagramやYouTubeのような大規模サービスもPythonで作られています。
- データ分析: 膨大なデータを処理し、グラフにするのも得意です。
- 作業の自動化: 日々の面倒なPC作業を自動化するスクリプトも簡単に作れます。
- 3. どこでも動く!(クロスプラットフォーム)
- Windows、macOS、Linuxなど、どんなパソコン(OS)でも動くように公式の実行環境(インタプリタ)が用意されています。
- 4. 仲間(情報)が多い!
- 世界中で使われているため、学習教材や解説記事がインターネット上に山ほどあります。エラーで困っても、検索すれば大抵の答えが見つかります。
- 5. 他の言語への「橋渡し」になる
- Pythonは、オブジェクト指向、手続き型、関数型など、プログラミングの重要な考え方(パラダイム)をバランス良く学べます。
- ここで学んだ基本概念は、C言語、Java、JavaScriptなど、他の言語を学ぶときにも必ず役立つ「土台」になります。
☕ ちょっとコラム:なぜ言語は色々あるの?
「Pythonだけでいいじゃん」と思うかもしれませんが、言語にはそれぞれ「得意分野」があります。
- C言語/C++: Pythonの内部(CPython)でも使われる、超高速な処理が得意な言語。機械の制御やゲームのコア部分など、速度が命の場所で活躍します。
- Java: 大規模な業務システムやAndroidアプリ開発でよく使われます。「一度書けば、どこでも動く」という思想がPythonと似ている部分もあります。
- JavaScript: Webサイトに「動き」をつける(例:ボタンを押したら画像が変わる)ための言語。Webフロントエンド開発には必須です。
Pythonはこれらの言語の「美味しいところ」を取り入れつつ、学びやすさを実現している、とも言えますね。
プログラムはどう動く?(基本のキ)
Pythonコードを書く前に、コンピュータがどうやってプログラムを動かしているか、基本的な仕組みを知っておきましょう。
コンピュータの心臓部:「CPU」と「メモリ」
- CPU (Central Processing Unit): コンピュータの「脳」です。プログラムに書かれた命令を一つひとつ実行する、非常に高速な計算装置です。
- メモリ (Memory): コンピュータの「作業机」です。プログラムやデータを一時的に置いておく場所。CPUは、メモリに置かれた命令を読み取って実行します。
プログラムが実行されるとき、そのコードはまず「メモリ(作業机)」に読み込まれ、それを「CPU(脳)」が順番に処理していくイメージです。
Pythonプログラムが動く流れ
「C言語やJavaは『コンパイル』が必要」と聞いたことがあるかもしれません。これは、人間が書いたコードを、実行前に「すべて」機械がわかる言葉に翻訳しておく作業です。
対してPythonは、インタプリタ言語と呼ばれます。
- あなたが書いたコード(
.pyファイル)を読み込みます。 - それを「バイトコード」(
.pycファイル)という、Python実行専用の中間言語に自動で(こっそり)翻訳します。 - そのバイトコードを「Python仮想マシン(PVM)」という実行エンジンが1行ずつ解釈しながら実行します。
この「実行前に全部翻訳しなくても、すぐ動かせる」手軽さが、Pythonの学習しやすさや開発スピードの速さにつながっています。
すべてのシステムの基本「IPO」
どんなに複雑なプログラムも、突き詰めれば以下の3つの要素でできています。
- I (Input): 入力。キーボードからの文字、ファイルからのデータ、マウスのクリックなど。
- P (Process): 処理。入力されたデータを計算したり、並べ替えたり、加工したりすること。
- O (Output): 出力。処理した結果を画面に表示したり、ファイルに保存したりすること。
「ユーザーから2つの数字を入力(I)し、それを足し算処理(P)し、結果を画面に出力(O)する」
これが電卓プログラムの基本です。このIPOを意識することは、システム開発の第一歩です。
Windowsで「最強」の学習環境を整えよう!
お待たせしました! ここからは、実際にあなたのWindows PCでPythonを動かすための準備をしていきます。
プロのエンジニアも使っている、無料の万能ツール「VSCode」を使いましょう。
ステップ1:VSCodeとターミナル
まずは「VSCode (Visual Studio Code)」をインストールしてください。これはMicrosoftが作っている、最強の「テキストエディタ(高機能なメモ帳)」です。
VSCodeを起動したら、まず覚えてほしいのがターミナルです。
- 専門用語解説:ターミナル
- よく映画でハッカーがカタカタやっている「黒い画面」のこと。
- 例えるなら、「PCへの直接指令室」です。
- 普段はマウスで操作しますが、ターミナルは「文字(コマンド)」でPCに直接指示を出します。
- VSCodeなら、上部メニュー「ターミナル」→「新しいターミナル」で、画面下部にすぐ開けます。
ステップ2:最重要!「仮想環境」を理解する
Pythonをインストールしたら、すぐにコードを書き始め…てはいけません!
プログラミングを学ぶ上で、最初につまずきやすいけれど、絶対に欠かせない「お作法」があります。それが仮想環境(かそうかんきょう)です。
- 専門用語解説:仮想環境 (Virtual Environment)
- これは、「プロジェクト専用の、隔離されたPython道具箱」を作る仕組みです。
- 例え話: あなたが「プラモデルA」と「プラモデルB」を同時に作るとします。
- Aには「1mmのネジ」が、Bには「2mmのネジ」が必要です。
- もしPC全体で一つの「道具箱」しか持っていなかったらどうでしょう? Aのために1mmネジを用意すると、Bが作れません。逆に2mmネジを入れるとAが作れません。困りましたね。
- そこで、「A専用の道具箱(仮想環境)」と「B専用の道具箱(仮想環境)」を分けて作るのです!
仮想環境の作り方(Windowsのターミナルで)
- まず、プロジェクト用のフォルダ(例えば
my_python_study)を作ります。 - VSCodeでそのフォルダを開き、ターミナルも開きます。
- ターミナルで、以下の「おまじない」を打ち込みます。
python -m venv venvこれで、venv という名前の「専用道具箱(仮想環境)」が作られました!
※最後に書いた「venv」がフォルダの名前になりますので好きな名前を付けていただいても結構です。
仮想環境の有効化(アクティベート)
道具箱は、作っただけでは使えません。「今からこの道具箱を使います!」と宣言(有効化)する必要があります。
ターミナルで、以下のように打ち込みます。
.\venv\Scripts\activate
ターミナルの行の先頭に (venv) と表示されたら、専用道具箱が有効になった合図です!
ポイント:
プログラミングを始めるときは、必ず「仮想環境を作って、有効化する」クセをつけましょう。これがプロへの第一歩です!
Pythonの「第一歩」を踏み出す
環境準備はOKですね! いよいよPythonを動かします。
例:「Hello World」プログラム
世界中のプログラマーが最初に書く、有名なプログラムです。
- VSCodeのファイルエクスプローラー(左側のアイコン)で、「新しいファイル」を作成し、
hello.pyという名前をつけます。(.pyがPythonファイルの目印です) - 開いたファイルに、以下のように打ち込んでみてください。
print("Hello World")⚠️ 注意点!
プログラミングで使う文字は、すべて「半角」です!
print(”Hello”) のように全角で入力すると、100%エラーになります。キーボードの「半角/全角」キーで入力モードを切り替えるクセをつけましょう。
コマンドラインでの実行
- ファイルを保存します。(
Ctrl + Sキー) - 仮想環境が有効になっているターミナルで、以下のように打ち込みます。
python hello.py- ターミナルに「Hello World」と表示されたら、大成功です! おめでとうございます!
プログラミング学習の「お作法」
「Hello World」が動いたら、次に進む前に知っておきたい、大切な「お作法」を3つ紹介します。
お作法1:エラーを恐れない!
プログラム開発にエラーはつきものです。むしろ「エラーこそが先生」です!
例えば、先ほどのコードをわざと間違えてみましょう。
print("Hello ')
(最後の " が " ではなく ' になっています)
これを実行すると、ターミナルに以下のような「エラーメッセージ」が表示されます。
SyntaxError: unterminated string literal (detected at line 1)これはPythonからの「文法エラー(SyntaxError):文字列が終わってないですよ(1行目)」という親切なメッセージです。
エラーメッセージには必ず「どこで」「何が起きたか」のヒントが書かれています。怖がらずに、まずは読んでみましょう!
エラーの主な種類:
- 文法エラー (SyntaxError):
()の閉じ忘れなど、Pythonのルール違反。実行前にわかります。 - 実行時エラー (RuntimeError):
10 / 0(ゼロ除算)など、実行してみたら問題が起きたエラー。 - 論理エラー: プログラムは動くけど、期待した結果にならないエラー。(例:足し算すべきところを引き算していた)これが一番見つけるのが大変です!
お作法2:コメントを書く
コメントとは、プログラムの動作には影響しない、「人間のためのメモ」です。
未来の自分や、他のチームメンバーがコードを読んだときに、「このコードは何をしているのか」を理解するために書きます。
Pythonでは2種類の書き方があります。
- 1行コメント (
#)#を書いた行の、それ以降の部分がすべてコメントになります。
# Hello World を表示する
print("Hello World")- 複数行コメント (
""")"""(ダブルクォート3つ) または'''(シングルクォート3つ) で囲んだ範囲がすべてコメントになります。- 主に関数やクラスの「説明書」(ドキュメンテーション文字列)として使われます。
"""
この関数は、Hello World を表示します。
作成者: yamazaki
作成日: 20XX/11/09
"""
def main():
print("Hello World")積極的にコメントを書いて、コードの「意図」を残しましょう!
お作法3:標準出力を使いこなす
先ほどから使っている print() 関数。これは「標準出力(ひょうじゅんしゅつりょく)」に文字を出す、という命令です。
標準出力とは、プログラムが結果を表示するための「基本的な出力先」のことで、通常は「ターミナル(コンソール)」を指します。
print() は、デバッグ(プログラムの間違い探し)にも非常に役立ちます。
「あれ、この計算結果、思ったのと違うぞ?」
「変数の a には今、何が入ってるんだ?」
そんなときに print(a) と書いて実行すれば、その時点での a の中身を「標準出力」で確認できるのです。
VSCode「脱・初心者」ショートカット
最後に、学習効率を爆上げしてくれるVSCodeの「近道キー(ショートカット)」をご紹介します。これらはWindows標準の Ctrl+C などとは一味違う、エディタならではの強力な機能です。
| やりたいこと | ショートカットキー (Windows) |
| コマンドパレットを開く(最強) | Ctrl + Shift + P |
| ターミナルを開く/隠す | Ctrl + @ (または Ctrl + J) |
| 今いる行を(コピペせず)複製する | Shift + Alt + ↓ (下矢印) |
| 今いる行を上下に移動させる | Alt + ↑ / ↓ (矢印) |
| 選択中の複数行をまとめてインデント | Tab |
| 選択中の複数行のインデントを戻す | Shift + Tab |
特に Ctrl + Shift + P で開く「コマンドパレット」は、VSCodeのすべての機能を探せる魔法の窓です。迷ったらまずここを開くクセをつけましょう。
まとめと今後の学習指針
お疲れ様でした! これであなたもPythonプログラマーの仲間入りです。
Pythonは文法がシンプルで、環境構築も(仮想環境さえ覚えれば)簡単です。しかし、厳密な型チェックなどがない分、コードが大きくなると「設計」や「テスト」が非常に重要になります。
まずは、今日学んだ print() を使って、色々な計算をさせたり、文字を表示させたりしてみてください。
そして、エラーが出たら喜んでください! それは、あなたが新しいことを学んだ証拠です。
次章では、プログラムの基本である「変数」と「データ型」について学んでいきましょう。
1章. 変数とデータ型をマスター