反転学習とは?IT企業の研修における効果から事例まで詳しくご紹介
IT業界ですっかり定着した感のある「オンライン研修」。
しかし、オンライン研修には①受講者の集中力が保てない、②受け身の受講になりがち、③質疑応答などの双方向のコミュニケーションが取りづらい と言った問題があります。
それらの問題を克服するにはどうしたら良いか?
この記事ではそんな悩みを持つ人に知ってほしい、反転学習について詳しく解説します。
反転学習とは?
反転学習とは授業で学習したことを復習するという従来の学習方法を反転させ、予習して授業でさらに学習するという学習手法です。
反転学習は研修の内容や講師と生徒の状況に合わせて、複数の学びを混ぜて新しい学びを構築するブレンド型学習の1つとして位置づけられています。
ブレンド型学習では次のような学びの要素を混ぜて新しい学びを生み出します。
- インプットとアウトプット
- オンラインとオフライン
- 集合学習と個別学習
- テキストと動画
反転学習においては、インプットをオンラインの個別学習で行い、アウトプットをオフラインの集合学習で行うことが多いでしょう。
反転学習のIT企業研修における効果
画像出典:名古屋文理大学紀要第21号「プログラミング系授業におけるオンライン型反転授業の導入と実践」
反転学習のIT企業研修における効果はどのようなものなのでしょうか。
2021年に名古屋文理大学が発表した「プログラミング系授業におけるオンライン型反転授業の導入と実践」では、「Webプログラミング」の授業において、上記の形で反転学習を受けた学生309人に対し、アンケート調査を行いました。
解説動画のわかりやすさについて聞いた所、次のような結果が出ました。
授業時間 | とてもわかりやすい | ややわかりやすい | どちらともいえない | ややわかりにくい | とてもわかりにくい |
水曜5限 | 53.5% | 41.9% | 4.7% | 0% | 0% |
金曜5限 | 70.6% | 29.4% | 0% | 0% | 0% |
水曜と金曜どちらのクラスにおいても「わかりやすい」と回答した生徒が90%を超えていることから、授業前に動画で予習をしてもらうのは、理解を深めるのに有効なのがわかります。
またライブ配信の学習への有用性についてたずねた所、次のような結果でした。
授業時間 | とても役に立った | まあまあ役に立った | どちらともいえない | あまり役に立たなかった | 役に立たなかった | 全く見ていないのでわからない |
水曜5限 | 32.6% | 41.9% | 9.3% | 0% | 0% | 16.3% |
金曜5限 | 70.6% | 29.4% | 0% | 0% | 0% | 18.8% |
水曜と金曜どちらのクラスにおいても「役に立った」と回答した生徒が70%を超えていますが、「全く見ていないのでわからない」と回答した生徒も一定数いたのです。
ライブ配信を見なかった生徒は授業に興味がなかったのではなく、解説動画で内容を理解できたので視聴しなかったことがわかっています。
これらの結果から、反転学習はWebプログラミングの授業で理解を深めるのに有効ですが、予習の内容やレベルについては検討の余地があると言えるでしょう。
一方2021年に中央大学が発表した「プログラミング教育における反転授業の実施」では、「プログラミング基礎」の授業において25人の「応用クラス」を対象に、講義動画による予習と対面による演習の実施を組み合わせた反転学習を実施しました。
予習用の講義動画へのアクセス状況と成績の関係性を分析してみたものの、成績上位のグループと成績下位のグループにアクセス状況において大きな差は見られず、反転学習が教育効果の改善に有効とまでは言えない結果となったのです。
このように反転学習についての研究はまだあまり進んでいない状態のため、今後教育、研修などさまざまな場で反転学習を行うことでその効果も少しずつわかってくるのではないでしょうか。
参考:名古屋文理大学紀要第21号「プログラミング系授業におけるオンライン型反転授業の導入と実践」
参考:情報処理学会電子図書館「プログラミング教育における反転授業の実施」
反転学習をIT企業の研修で行うメリット
反転学習をIT企業の研修で行うメリットは次の通りです。
- 自分のペースで学習できるので仕事との両立がしやすい
- 授業ではディスカッションやグループワークでアウトプットができるため知識が定着しやすい
- 従業員同士のコミュニケーションが活発になる
- 学習と同時にIT企業で働くのに必要な課題解決能力やコミュニケーション能力も育成できる
- 教える人の負荷が軽減される
DXの推進などでIT企業へのニーズは高まっておりそれに合わせた人材育成が急務ですが、反転学習の手法を研修に取り入れることで、人材育成の負荷を軽減し効率を高めることができます。
反転学習をIT企業の研修で行うデメリット
反転学習をIT企業の研修で行うデメリットは次の通りです。
- 予習のための課題作成に時間がかかる
- 予習への取り組み方で反転学習の効果に差が出やすい
反転学習は予習が大きな役割を果たすため、従業員が予習をしっかりとできる環境を整えることが重要です。
反転学習のやり方
IT企業において研修に反転学習を取り入れるには、どのようなやり方をするのが望ましいのでしょうか。
ステップ別に表にまとめてみました。
ステップ | 概要 |
ステップ1 | ・研修の目標を設定する |
ステップ2 | ・目標達成を阻害する要因を分析する |
ステップ3 | ・目標達成を阻害する要因を解決できる研修テーマを設定する |
ステップ4 | ・予習用の課題や資料を作成する |
ステップ5 | ・研修を開始し予習用の課題を受講する人に共有する |
ステップ6 | ・集合研修を行う |
ステップ7 | ・必要に応じてフォローアップ研修を行う |
予習の理解度を把握するために、予習後にレポートなどを提出してもらうのもよい工夫だと言えるでしょう。
反転学習をIT企業の研修に導入した事例
反転学習をIT企業の研修に導入した事例を3つご紹介します。
R-learning
「IT専門かかりつけ医」として顧客のIT力向上をサポートする株式会社R-learning では、事前にモバイルラーニングで予習をし、研修の場で実践するという形の反転学習を研修に取り入れています。
具体的にはビジネスマナーの定着を目的に、反転学習での研修を内定者、1年目~3年目までの従業員に対して行っているのです。
これは先輩社員に対し、後輩と同じ研修を受けてもらうことで自分の方がよく理解しなければならないというプレッシャーを与えるためでもあります。
学習の進捗を確認することで、これまではわからなかった内定者、先輩社員の負けず嫌いな一面が垣間見えるなど、反転学習には予想外の良い効果がありました。
反転学習をただ研修に取り入れるのではなく、内定者と3年目までの従業員を対象にしたことでさらに学習効果を高めた好事例だと言えるでしょう。
参考:learningagency「R-learning様 モバイルナレッジ導入事例「内定者から先輩社員への“突き上げ効果”を実感」|事例」
レバレジーズ株式会社
IT事業だけではなく、海外事業、医療・介護事業、人材開発事業などを幅広く手掛けているレバレジーズ株式会社では、事前に動画で学んできたことをライブ型のオンラインレッスンで実践トレーニングをするという形の反転学習を新人研修に取り入れています。
レバレジーズ株式会社では元々人材開発チームに所属する5人で新人研修を手掛けてきましたが、入社する人の人数が年々増え、研修を取り仕切るのが少しずつ難しい状態となってきていました。
そのため対面式で行ってきた新人研修の講義を動画に切り替えることとしたのです。
新入社員はまず予習として動画を視聴してもらうのですが、視聴後は習得度を測るためにテストやレポート提出を行ったり、ワークでディスカッションを行ったりして、「見て終わり」にならない工夫がされているのが特徴的です。
反転学習を導入することで、対面で教えていた時と動画を使って研修するようになってからの従業員の成長に大きな差は生まれないまま、人材開発チームの工数を月に19時間も削減することができました。
反転学習を導入したことで、研修を大幅に効率化できた好事例と言えるでしょう。
参考:Smart Boarding「レバレジーズ株式会社 自社オリジナルコースやナレッジ蓄積で、少人数の人材開発チームの教育生産性を大幅にアップ」
株式会社BitStar
クリエイター支援事業、コンテンツ制作事業を行う株式会社BitStarは、マネジメント層の役割が明確ではなく研修もできていないという課題を、動画での授業視聴と対話型のワークショップを組み合わせた反転学習を導入することで解決しました。
具体的には2ヵ月に1つのテーマを決めて動画を視聴してもらい、全員が見終わったら対話型ワークショップを行うのです。
動画の視聴は共通の知識を持ってもらうこと、対話型のワークショップでは意見交換を通じてマネージャー同士がつながること、また知識を実践してみた振り返りをすることを目的としています。
反転学習を導入することで、マネジメント層の役割が明確化して研修が行えるようになったのはもちろんのこと、マネージャー同士で考え方や視点をシェアできるようになり、良い影響を与え合う関係作りにも役立ったのがうれしいメリットと言えるでしょう。
研修について従来抱えていた課題を解決するだけではなく、受講した人の相互成長にもつながった好事例です。
参考:スクー「スクーの研修とディスカッションを通じてマネジメント層の能力を底上げ」
セイ・コンサルティング・グループでは反転学習を研修に取り入れたいIT企業の皆さまをサポートしています
セイ・コンサルティング・グループでは反転学習を研修に取り入れたいIT企業の皆さまをサポートしています。
具体的には予習で使用できるJavaタイピングゲーム、プログラミング解説動画、IT企業向け新人研修おすすめ資料などをホームページで無償公開しているので、事前課題としてこれらを使うと研修での理解が深まりやすくなるでしょう。
研修は事前課題の内容も踏まえてカスタマイズできるため、ニーズに合った形で反転学習を導入できます。
反転学習で忙しい従業員にも充実した学びを提供したい人は、次のページもごらんください。
プレイングマネージャー化応援研修会社 - セイコンサルティンググループ (saycon.co.jp)
まとめ
反転学習とは授業で学習したことを復習するという従来の学習方法を反転させ、予習して授業でさらに学習するという学習手法です。
IT企業が持つ研修についての課題を解決できる手法の1つであるため、ぜひ積極的に取り入れてみてください。