階層別研修とは?目的からIT企業での設計方法まで詳しく解説

自社で階層別研修を取り入れることに決まったけれど、何から準備してどのように進めていったらよいかよくわからず困っている人はいませんか?

この記事では階層別研修の目的から、IT企業での設計方法まで詳しく解説します。

階層別研修とは?

新入社員向けの階層別研修

階層別研修とは、従業員を社内での役職やキャリアステージごとに分け、それぞれに異なる内容の研修を行うことと定義づけられています。

階層の分け方は企業によって異なりますが、次のような分け方をすることが多いでしょう。

階層役職の例
経営層社長・役員
上級管理職層本部長・部長
管理職層課長・GM
リーダー層TL・主任・中堅社員・若手社員
新人層一般社員・新入社員

階層の分け方は従業員の人数にかかわらずどの企業でも上記の5つの階層から±2階層まで、つまり3階層から7階層までにするとコミュニケーションがスムーズで風通しのよい経営にもつながると言われているため、研修においても配慮するのが望ましいと言えます。

参考:note「階層別研修の作り方①~階層はどうやって分けたらいいの?前編~」

階層別研修の目的

階層別研修によるスキルアップのイメージ

IT企業が階層別研修をする目的は次の通りです。

  • 階層に応じて会社が期待している役割を理解してもらう
  • 階層別の仕事をこなすのに必要な知識やスキルを身に着けてもらい全体のレベルアップを図る
  • 従業員の現状を把握し今後の研修の方向性を検討する
  • 階層別に必要な視座(物事を見る上での立場)を理解してもらう
  • 従業員に自分自身のキャリアイメージを具体的に描いてもらう

階層別に必要な視座は視野の広さ×時間軸で次のように表すことができます。

階層視野の広さ×時間軸
経営層使命(ミッション)、ブランディング×1年
上級管理職層利益、生産性、開発×半年
管理職層従業員育成×3ヵ月
リーダー層顧客貢献、売上×1か月
新人層自己成長×1週間

例えばIT企業の経営層であれば、自社のミッションとブランディングについて年単位で考える立場だと考えるとわかりやすいでしょう。

参考:note「階層別研修の作り方②~階層はどうやって分けたらいいの?後編~」

階層別研修の種類

階層別研修で行った方が良い研修内容の1つであるマインドセット

階層別研修で取り扱った方がよい内容は、次の3種類です。

マインドセット

マインドセットとは元々心理学の専門用語ですが、ビジネスの場では人が物事を判断したり行動したりする際の基本的な考え方や思考のパターンを指します。

マインドセットというとビジネスの場に初めて入ってくる新入社員に必要なものとイメージされがちですが、実は階層別にそれぞれのマインドセットが必要です。

例えば管理職ですが、2023年9月にリクルートマネジメントソリューションズが発表した「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2023年」で、人事担当者に「管理職に期待していることは何か」、管理職に「管理職として重要だと考えている役割は何か」とたずねた所、次のような結果が出たのです。

役割人事担当者管理職層
メンバーの育成48.7%52.0%
メンバーのキャリア形成・選択の支援27.3%26.0%
部署内の人間関係の円滑化22.7%36.0%
業務改善22.7%32.0%
担当部署の目標達成、業務完遂21.3%36.0%
メンバーの多様な働き方への対応20.7%18.7%
会社・事業の戦略テーマ(重点テーマ)の推進18.0%20.0%
学び合う風土づくり12.7%10.0%
担当部署のコンプライアンス・勤怠管理の徹底10.7%18.0%
期待していることはない10.0%4.7%
新価値・イノベーションの創造10.0%20.7%
その他0.0%0.7%

特に「部署内の人間関係の円滑化」「担当部署の目標達成、業務完遂」では人事担当者と管理職の回答の差が15%前後に達しており、人事担当者と管理職の考える管理職の役割にずれがあるのがわかります。

このようなずれを減らすためにも管理職に管理職としてのマインドセットを行い、管理職としてどのような仕事を優先するのが望ましいかを自分で判断できるようにすることが大切なのです。

参考:リクルートマネジメントソリューションズ「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2023年」

スキルセット

スキルセットとは職種や役職において仕事をする上で必要となる知識、能力、資質、経験などの組み合わせのことを指します。

各階層の仕事を全うするために必要となる武器のようなものだと考えるとよいでしょう。

専門領域におけるスキルセットは企業によって大きく変わるため自社で内容を考える必要がありますが、ポータブルスキル(業種や職種が変わったとしても持ち運びができる職務遂行上のスキル)におけるスキルセットはあまり企業による差がありません。

そのため厚生労働省のポータブルスキル見える化ツールのページなどが、階層別研修でどのようなポータブルスキルのスキルセットをすればよいかを考える上で参考になるでしょう。

参考:厚生労働省「ポータブルスキル見える化ツール(職業能力診断ツール)」

メンタルヘルス

メンタルヘルスとは心の健康状態を意味する言葉です。

近年心の病気は増加しており、一生を通じて5人に1人は心の病気にかかるとも言われているため、階層別に必要なメンタルヘルスの知識を身に着け、セルフケアができるようになったり、周囲の人の病気に気づきやすくなったりするのは大切なことだと言えるでしょう。

厚生労働省では働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」を運営しており、働く人、家族、事業者、部下を持つ人、支援する人向けの情報発信を行っています。

ホームページには職場のメンタルヘルスに関する様々なテーマについて5分の動画で学べる「こころの耳 5分研修シリーズ」、15分でわかるe-ラーニングといったコンテンツがあるので、階層別研修の内容を検討するのに役立つでしょう。

参考:厚生労働省「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト『こころの耳』」

参考:note「階層別研修の作り方③~階層別研修はどんな種類があるの?前編~」

参考:note「階層別研修の作り方④~階層別研修はどんな種類があるの?後編~」

階層別研修をIT企業が行うメリット

階層別研修によるコスト削減のイメージ

階層別研修をIT企業が行うメリットは次の通りです。

  • 階層別にスキルが均一化できる
  • 効率的に研修ができるのでコストの削減につながる
  • 従業員のモチベーション維持や意欲の向上につながる

階層別研修を繰り返し行うことで少しずつ内容を最適化できるので、より自社に合った研修をコストやかかる時間を削減しながらできるようになるでしょう。

階層別研修をIT企業が行うデメリット

階層別研修がいやでモチベーションが下がってしまった従業員

階層別研修をIT企業が行うデメリットは次の通りです。

・その階層に達すると誰でも受ける研修なので形骸化しやすい

・研修のレベル設定が難しい

レベル設定は事前に調査をし、繰り返し階層別研修を行うことで少しずつ現状に合わせられますが、形骸化は防ぐのが難しいので、事前に受講生に研修の目的や内容を伝えたり、課題を与えたりして研修へのモチベーションを下げない努力が大切です。

階層別研修を設計する方法

階層別研修を設計するIT企業の人事担当者

階層別研修の望ましい設計方法は企業によって異なりますが、よく行われる手順をご紹介します。

【STEP1】人材育成のビジョンを決める

STEP1では階層別に人材育成のビジョンを決めます。

ビジョンとは本来企業の実現したい未来を指しますが、人材育成のビジョンにおいてはその未来を実現するために各階層の従業員に期待される役割をまず考えるとよいでしょう。

そして期待される役割を果たすためにはどのようなマインドセット、スキル、メンタルヘルスが必要なのかを具体的に落とし込むことで、従業員が人材育成のビジョンを理解しやすい形にすることができます。

【STEP2】人材育成上の課題は何かを特定する

STEP2では自社における人材育成上の課題は何かを特定します。

STEP1の人材育成のビジョンで実現できる理想的な従業員像と、現在の従業員像には何かしらのギャップがあるはずですが、それが人材育成上の課題なのです。

具体的には次のようなことを把握するのがよいでしょう。

  • 現在の従業員のスキルのレベル
  • 従業員が業務をする上で困っていることは何か
  • 研修を受けて理解していても行動に移せていないことは何か

理想的な従業員像と現在の従業員像のギャップが大きい階層と小さい階層の両方が出てくるはずなので、ギャップの大きい階層から階層別研修を行うようにしましょう。

【STEP3】課題を解決し人材育成ビジョンを実現するためのカリキュラムを作る

STEP3ではSTEP2で特定できた課題を解決し、STEP1で決めた人材育成ビジョンを実現するためのカリキュラム作りをします。

カリキュラムは次の情報を整理すると作りやすくなります。

  • 階層別研修の対象者
  • コンテンツ
  • 研修の実施方法
  • 予算
  • 研修期間

整理された情報から課題を解決できる研修テーマを決め、研修期間に合わせた内容をカリキュラムとして作っていきましょう。

【STEP4】階層別研修で学んだことを実務で活かせる仕組みを作る

STEP4では、階層別研修の実施後に学んだ内容を仕事で実践できるようにすることに目を向けてみましょう。

どれだけ内容の良い階層別研修を実施しても、従業員が仕事に活かせなければ研修の効果があったとは言えません。

受講生の実務における変化を確認し、効果を測定して研修内容の改善を続けていくことが大切です。

セイ・コンサルティング・グループではIT企業の人材育成ビジョンに合った階層別研修の設計をサポートしています

セイ・コンサルティング・グループでは、IT企業の人材育成ビジョンに合った階層別研修の設計をサポートしています。

ホームページにはおすすめの研修メニューを掲載していますが、これらはいずれもカスタマイズが可能となっているのです。

階層別に研修メニューから選んで組み合わせるのもよいのですが、人材育成上の課題をよりスムーズに解決するためには、カスタマイズで人材育成ビジョンを実現するためのカリキュラム作りに取り組んでみるのもよいでしょう。

階層別研修の設計で悩んでいる方は、ぜひ次のページもごらんください。

おすすめの研修内容(メニュー) - セイコンサルティンググループ (saycon.co.jp)

まとめ

階層別研修とは、従業員を社内での役職やキャリアステージごとに分け、それぞれに異なる内容の研修を行うことと定義づけられています。

この記事も参考にして、ぜひ人材育成上の課題を解決できるより良い階層別研修の設計に取り組んでみてください。