エンジニアに営業スキルを身に着けてもらうには?IT業界で求められる背景も含めて解説

自社がIT業界内で他社と差別化して生き残っていくためには、エンジニアにも一定の営業スキルを身に着けてもらいたいと考えているけれど、何から始めればよいかわからず困っている人はいませんか?

この記事ではエンジニアに営業スキルが必要になってきた背景から、身に着けてもらう方法まで詳しく解説します。

エンジニアに必要な営業スキルとは?

エンジニアに必要な営業スキルの目安となるITスキル標準のイメージ

エンジニアに必要な営業スキルを具体的にイメージするには、ITスキル標準が役に立つでしょう。

ITスキル標準(ITSS)とは日本全体のITサービスにおける質の向上を目的として、IT人材に必要とされる能力を職種や専門分野ごとに明確にし、個人のIT関連能力を測定できるように定めた指標ですが、職種には「セールス」も含まれています。

ITスキル標準で定められた「セールス」職種の概要は次の通りです。

職種概要専門分野専門分野の概要
セールス・顧客の経営方針に沿った課題解決策、製品、サービスの提案をし成約する
・IT投資においては経営戦略策定や戦略的情報化企画の領域で次の2つを行う 顧客の目標、ビジョン、ビジネス戦略の確認顧客のビジネスにおける課題の整理とソリューションの提案
・訪問型コンサルティングセールス・特定の顧客に対して良好な関係を開拓、維持、向上し継続的に販売活動をする
・訪問型製品セールス・特定の課題解決策、製品、サービスに精通し顧客に対して幅広く販売活動をする
・メディア利用型セールス・各種のメディア(テレビ、ラジオ、新聞、広告、ホームページ、SNSなど)を利用して不特定多数の顧客にアプローチして主に製品の販売活動をする

ITスキル標準における「セールス」とは、顧客にIT技術を用いた課題解決を訪問やWebマーケティングなどさまざまな手法で提案し、成約につなげていく職種だと言えるでしょう。

ITスキル標準で定められているセールスで必要とされる知識項目とスキル項目には、エンジニアが知っておかなければならない最新技術動向や競合製品の情報、営業が身につけておかなければならないコミュニケーションやネゴシエーションの能力などが含まれます。

そのため、エンジニアが営業スキルを身に着けることで、ITスキル標準の「セールス」職種が定める人材像に早く近づけるのです。

ITスキル標準についてもう少し詳しく知りたい方は、次のページもごらんください。

ITスキル標準とは?資格一覧からIT企業での活かし方まで詳しく解説 - セイコンサルティンググループ (saycon.co.jp)

参考:独立行政法人情報処理推進機構「ITスキル標準V3 2011 ダウンロード」

エンジニアが必要な営業スキルの具体例

エンジニアに必要な営業スキルの要素の1つであるリーダーシップ

ITスキル標準における「セールス」のスキル領域とスキル熟達度を参考に、エンジニアが必要な営業スキルの具体例を3つご紹介します。

リーダーシップ

リーダーシップとは目標を設定して、その方向へ組織を導いていく能力のことです。

組織コンサルタントのデイビッド・A・ナドラーは、リーダーシップを次の3つの要素で成り立っているとしました。

リーダーシップの要素概要
Envisioning・ビジョンを提示する
Empowering・他者の力を引き出す
Enabling・変革を実現する

3つの「E」を頭文字に持つリーダーシップの要素をまとめると「ビジョンを提示して他者の力を結集し変革を実現する」となりますが、これはITの力で変革をもたらすのをミッションとするIT業界のリーダーシップにぴったりの表現だと言えるでしょう。

これを踏まえると、ITスキル標準におけるリーダーシップがセールスの3つの専門分野である「訪問型コンサルティングセールス」「訪問型製品セールス」「メディア利用型セールス」のいずれにおいても身に着けておきたい「職種共通スキル項目」として位置づけられているのが理解しやすくなります。

エンジニアがこれから営業を身に着けるなら、リーダーシップは必須のスキルだと言えるでしょう。

リーダーシップについてもっと詳しく知りたい人は、次の記事もごらんください。

リーダーシップとは?種類からリーダーシップスキルを持つ人材の育成方法まで詳しく解説 - セイコンサルティンググループ (saycon.co.jp)

コミュニケーション

コミュニケーションとは人間同士がお互いに情報を伝達しあい、意思疎通を計ることを指します。

IT業界においてコミュニケーションが重視される理由は次の3つです。

項目概要
IT業界は形のないサービスを扱うため説明が難しい・IT業界が提供するサービスや新しい技術などは目に見えるものではないので、顧客に内容を理解してもらうのがそもそも難しい
コミュニケーションの本質を知るのがIT業界の仕事に欠かせない・IT技術自体がコミュニケーションのためにある
ITの仕事の付加価値が上流にシフトしている・コミュニケーション能力が求められる上流工程を担当できるエンジニアに対するニーズが高く、収入も多い傾向にある

ITスキル標準でもこれを踏まえて、コミュニケーションはリーダーシップと同じく「職種共通スキル項目」として位置づけられているのです。

エンジニアにとってコミュニケーション能力を高めることは、営業としてのスキルが身に着くだけではなく、エンジニアとしての付加価値を高めるというメリットもあるのを覚えておきましょう。

ネゴシエーション

ネゴシエーションとは日本語に直訳すると「交渉」「折衝」となり、ビジネスの場では何らかの合意を目的として意見の調整を行う話し合いのことを意味します。

ネゴシエーション能力をIT業界で働く人が身に着けると、次のようなメリットがあります。

  • 相手と自分がお互い納得のいく条件で合意できる
  • 相手とWin-Winの関係になれる
  • 相手との関係深化につながる

メリットを見渡してみると、普段エンジニアが社内外の人と何らかの話し合いをする上でもネゴシエーション能力はすぐに役に立つのがわかります。

そのためITスキル標準でもネゴシエーションは「職種共通スキル項目」として位置づけられているのです。

エンジニアにとってネゴシエーションを身に着けることは、営業だけではなく普段の仕事にもメリットが大きいのを覚えておきましょう。

ネゴシエーションについてもう少し詳しく知りたい方は、次の記事もごらんください。

ネゴシエーションとは?IT企業で重要視される理由から研修方法まで詳しく解説 - セイコンサルティンググループ (saycon.co.jp)

参考:山崎有生「SEのための29歳からのキャリア向上計画」

参考:独立行政法人情報処理推進機構「ITスキル標準V3 2011 ダウンロード」

エンジニアに営業スキルが求められる背景とは?

DXを推進するイメージ

エンジニアに営業スキルが求められる背景には、どのようなことがあるのでしょうか。

3つご紹介します。

DXの推進

DX白書2023の業種別のDXへの取組状況を示したグラフ

画像出典:独立行政法人情報処理推進機構「DX白書2023」

エンジニアに営業スキルが求められる背景にはDXの推進状況があります。

2023年に独立行政法人情報処理推進機構が発表した「DX白書2023」において、業種別のDXへの取組状況について調査した所、上記の表のようにDXに取り組んでいる企業はほとんどの業種で50%に満たないことがわかったのです。

このことからどの業界にもDXを提案できる視野の広く、知識の深い営業担当者が必要だというのがわかります。

参考:独立行政法人情報処理推進機構「DX白書2023」

VUCAの時代になってきている

VUCAとはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの単語の頭文字をとった言葉で、環境の変化が激しいため先行きが不透明で予測が困難な状況を指します。

現在はVUCAの時代とされますが、IT業界においては予測困難な時代だからこそエンジニアが営業スキルを身に着けてお客様の変化するニーズを素早くとらえ、課題を解決できるサービスの開発に活かすことが期待されるのです。

経営戦略にIT戦略は欠かせないと考える企業の増加

エンジニア

画像出典:一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査報告書2023」

2023年に一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会が発表した「企業IT動向調査報告書2023」において、経営戦略とITの関係性について調査した所、上記のような結果が出ました。

経営戦略にIT戦略は欠かせないと考える企業は毎年70%を超え多数派を維持していることからも、ITの力で変革を起こせる力のあるエンジニアが営業力を持ち、各社の経営戦略に合った提案ができるようになるのは大切なことだと言えるのです。

参考:一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会「企業IT動向調査報告書2023」

エンジニアに営業スキルを身に着けてもらうための3STEP

営業スキルを持つエンジニア

Googleで「エンジニア 営業」と検索をすると「エンジニア 営業 やらされる」「営業 嫌い エンジニア」などのキーワードが表示されるため、営業にネガティブなイメージを抱くエンジニアは少なくないと思われます。

しかしそのような中でもエンジニアに営業スキルを身に着けてもらうようにするためのポイントを、3STEPでご紹介します。

【STEP1】人事評価制度を見直す

エンジニアがせっかく営業スキルを身に着けても、それが社内での評価につながらなければ誰もやりたがらないという状態を引き起こしてしまいます。

そのためまずは営業スキルを身に着けたエンジニアが社内でしっかりと評価されるよう、人事評価を見直しましょう。

厚生労働省が運営する「IT業界の働き方・休み方の推進」というホームページでは、IT業界における人事制度を「経営」「人事」「現場」の3点から見直すことが大切だとしています。

現場で求められる、「営業スキルを身に着けたエンジニア」という人物像が評価されるかどうかを確認しながら見直しを進めていくのがおすすめです。

参考:厚生労働省「IT業界の働き方・休み方の推進」

【STEP2】営業に役立つツールの導入を検討する

エンジニアが営業に取り組みやすい環境を整えるため、下記のような営業に役立つツールの導入を検討しましょう。

  • コミュニケーションツール
  • タスク管理ツール
  • 営業管理ツール

エンジニアと営業の仕事両方がスムーズに進められるかという観点でツールを選ぶのがおすすめです。

【STEP3】研修を行う

エンジニアが営業という仕事に対して抱いている不安を解消するため、研修をしましょう。

社内にノウハウがない場合は外部研修も検討し、エンジニアが安心して営業への第一歩を踏み出せるようにするのが大切です。

セイ・コンサルティング・グループではエンジニアの営業スキルアップをサポートしています

セイ・コンサルティング・グループではエンジニアの営業スキルアップをサポートしています。

まずはエンジニアの経験があり、営業力が必要となった従業員の方向けに「IT技術者のための営業力強化」という講座をご用意しています。

営業の基礎だけではなく、エンジニアのスキルの活かし方から成功事例と失敗事例のロールプレイングまで幅広く学べるため、営業に対して敷居を高く感じてしまいがちなエンジニアの方にも受け入れられやすいでしょう。

また営業スキルの具体例としてご紹介した「リーダーシップ」「コミュニケーション」「ネゴシエーション」について学びたい方向けにはヒューマンスキル研修の中にそれぞれの講義を用意しています。

演習の割合が多く実践しながらの学びとなるので、それぞれのスキルがすぐに現場でも活かせるでしょう。

興味のある方は、ぜひそれぞれの研修ページをごらんください。

ITデザインシンキング研修 (saycon.co.jp)

ヒューマンスキル研修のおすすめ - セイコンサルティンググループ (saycon.co.jp)

まとめ

エンジニアが身に着けたい営業スキルは、ITスキル標準の「セールス」職種が定めるスキルの内容を参考にするとイメージしやすくなります。

この記事も参考にして、自社のエンジニアが積極的に営業に取り組める環境を作ってみてください。