スマートフォンが会話を盗聴し、広告配信に利用している可能性が極めて低い理由

こんにちは。ゆうせいです。

先日ある病院でAIの研修を行いました。

その際、受講者から「スマートフォンが私たちの会話を盗聴して、それを広告のターゲティングに使っているのでは?」という質問をいただきました。

確かに、日常会話で話したばかりの内容に関する広告が表示されると、「盗聴されているのでは?」と疑いたくなる気持ちもわかります。
しかし、実際にはその可能性は極めて低いです。その理由を詳しく解説していきます!


1. 常時盗聴するには膨大なリソースが必要

スマートフォンが24時間、人々の会話を録音し、それを解析して広告に利用するには、膨大な計算資源通信コストがかかります。

なぜそんなにコストがかかるのか?

  1. 録音データは膨大
     人が話す内容をすべて録音すると、数GB以上のデータが1日で発生します。
     それを世界中のスマートフォン(何十億台!)が毎日送信していたら、サーバーはすぐにパンクします。
  2. 音声データの解析には高性能なAIが必要
     音声をテキスト化し、その内容を広告のターゲティング情報に変換するには、高性能なAIと膨大な計算力が必要です。
     たとえば、GoogleやAmazonの音声アシスタント(Google AssistantやAlexa)ですら、必要なとき以外は音声を送信しません。それほど負担が大きいのです。
  3. バッテリー消費が異常に増える
     スマートフォンのマイクが常に動作し、録音データを処理していたら、バッテリーがすぐに減るはずです。
     しかし、通常の使用ではそんな異常なバッテリー消費は見られません。

2. スマホのOS(iOS・Android)は盗聴を防ぐ仕組みを持っている

AppleのiOSやGoogleのAndroidには、アプリがマイクを使用するときに通知を出す仕組みがあります。
たとえば、iPhoneではマイクが使用されていると、画面の右上にオレンジの点が表示されます。

また、スマートフォンのOSはバックグラウンドでの無許可の録音を厳しく制限しています。
このため、アプリがこっそり会話を録音し続けることは基本的にできません。


3. もっと効率的な方法で広告ターゲティングが可能

広告企業がターゲティングのために「盗聴」する必要はありません。
なぜなら、もっと正確で効率的なデータ収集手段があるからです。

具体的なデータ収集方法

  • 検索履歴:GoogleやAmazonで検索したものから興味を分析
  • SNSの投稿・「いいね」:X(旧Twitter)やInstagramでの行動を解析
  • ウェブ閲覧履歴:クッキー(Cookie)を使って、どんなサイトを訪れたかを把握
  • 位置情報:よく訪れる場所から趣味や関心を分析

こうしたデータを組み合わせれば、わざわざ盗聴しなくても「ユーザーの興味」をかなり正確に予測できます。
むしろ、音声データは曖昧すぎて、広告のターゲティングにはあまり向かないのです。


4. 盗聴が発覚すれば企業は巨額の罰金&信用崩壊

もしAppleやGoogleが盗聴を許可していたことが発覚すれば、企業の信頼は一瞬で崩壊します。
また、EUのGDPR(一般データ保護規則)や、アメリカのCCPA(カリフォルニア州消費者プライバシー法)では、不正なデータ収集が見つかれば巨額の罰金が課せられます。

たとえば、Facebook(Meta)は2022年に個人データの不適切な取り扱いで数十億ドル(数千億円)規模の罰金を課されました。
企業がこんなリスクを冒してまで、コストのかかる「盗聴」をするメリットはほぼありません。


では、なぜ「盗聴されている」と感じるのか?

それでも「話した内容に関する広告が出るのはなぜ?」と思いますよね?
その理由は、心理的な錯覚高度なデータ分析にあります。

1. 心理的なバイアス(確証バイアス)

 人は、偶然起こったことを「特別な意味がある」と考えがちです。
 たとえば、「友達と旅行の話をした直後に旅行広告が出た!」と感じても、実は数日前に旅行関連のサイトを見ていたのかもしれません。

2. AIが行動パターンを予測

 GoogleやMetaのAIは、あなたの行動から「そろそろ○○に興味を持つはず」と予測して広告を表示します。
 たとえば、あなたが**「夏服を買い始める時期」**に入っていたら、会話とは関係なく、夏物の広告が増えるのです。

3. 他の人のデータから推測される

 近くにいる友人や家族のデータから、あなたの興味を推測することもあります。
 たとえば、家族が新車の情報を検索していたら、あなたにも自動車関連の広告が出ることがあります。


まとめ:盗聴よりも、もっと賢いデータ活用がされている

スマートフォンが会話を盗聴して広告に利用している可能性は、技術的・経済的・法律的に見ても極めて低いです。
それよりも、広告企業は検索履歴やウェブ閲覧データを使って、精度の高いターゲティングを行っているのです。

次に「盗聴されているかも?」と感じたら、「最近どんなサイトを見たか」「どんなことを検索したか」を振り返ってみてください。
意外と「話す前から、その広告が出る理由があった」ことに気づくかもしれませんよ!

当社では、AI関連の研修を提供しております

投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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