「予防に勝る治療なし」 – ITプロジェクトにおけるリスクマネジメントの本質
こんにちは。プロジェクトマネージャーの皆さんへ向けて、「予防に勝る治療なし」 という言葉をITプロジェクトのリスクマネジメントと絡めてお話しします。
医療の世界では、「病気を治療するよりも、発症を防ぐことが最も効果的」だと言われます。これは、システム開発やITプロジェクトのリスク管理にもそのまま当てはまります。
「問題が起きてから慌てて対処する」よりも、「問題が起こらないように予防する」方が、コスト・時間・労力の面で圧倒的に有利 です。
それにも関わらず、現場ではどうでしょう?
✅ 「問題が起きてから対応すればいい」
✅ 「今は開発を急ぐべきで、リスク対策は後回し」
✅ 「トラブル対応のプロがいるから大丈夫」
こんな考えが根強くありませんか?
しかし、予防を軽視すれば、必ずツケを払うことになります。
今回は、ITプロジェクトのリスクマネジメントにおいて、「予防対策」と「発生時対策」の重要性と、そのバランスの取り方 について、プロジェクトマネージャーとして知っておくべきポイントを整理します。
1. 予防に勝る治療なし – ITプロジェクトのリスクマネジメントの本質
プロジェクトのリスクマネジメントには、大きく分けて 「予防対策」 と 「発生時対策」 の2種類があります。
対策の種類 | 目的 | タイミング | 例 |
---|---|---|---|
予防対策(Preventive Measures) | リスクを未然に防ぐ | 事前(リスク発生前) | コードレビュー、CI/CDの導入、仕様の明確化、WBSによるタスク管理 |
発生時対策(Corrective Measures) | 問題発生後の影響を最小限に抑える | 事後(リスク発生後) | システム障害対応、パッチ適用、バックアップからの復旧、仕様変更対応 |
ポイントは、予防対策を怠れば、発生時対策ではリカバリーしきれないことがある という点です。
では、予防対策を怠った結果、どうなるのか? 具体例を見ていきましょう。
2. 「予防を軽視したITプロジェクト」の悲劇
ケース①:品質テストを軽視し、リリース後に大炎上
✅ 背景
「納期が厳しいから、テストは最低限で済ませよう」と判断。
✅ 結果
- 本番環境で 致命的なバグ が発生し、顧客システムがダウン
- 緊急対応で 開発チームが休日返上で修正
- 顧客の信頼が低下し、プロジェクトが失敗に終わる
✔ 本来取るべき予防対策
- 自動テストの導入(CI/CD)
- 本番リリース前の徹底的なテスト(負荷テスト、ユーザーテスト)
- バグの影響範囲を事前に分析し、リリース判断を慎重に
ケース②:スコープクリープ(要件膨張)でプロジェクトが迷走
✅ 背景
プロジェクト進行中に、「これも追加してほしい」「ついでにこの機能も」と顧客からの要望が増加。
計画を立てることなく、すべて受け入れてしまう。
✅ 結果
- 当初のスケジュールを 大幅に超過
- 予算オーバー、リソース不足、チームの疲弊
- 最終的にプロジェクトが頓挫し、途中終了
✔ 本来取るべき予防対策
- MoSCoW法(Must, Should, Could, Won’t) で要件の優先順位を明確化
- スコープ管理プロセスの厳格化(新規要件の追加にはコスト・スケジュールの見直しを必須にする)
- 顧客と開発チームの認識統一ワークショップを実施
3. 予防対策のコストは、発生時対策の1/10で済む
「でも、予防対策を入れると、初期コストが増えるんじゃない?」と思うかもしれません。
しかし、リスク発生後に対処するコストは、予防対策の10倍以上かかる というデータがあります。
対策のタイミング | コスト増加率 |
---|---|
要件定義・設計段階でリスクを予防 | 1倍 |
開発中にリスクが発生し、修正する | 5倍 |
テスト段階で問題が発覚し、修正する | 10倍 |
本番リリース後に障害発生し、緊急対応する | 100倍 |
例えば、品質テストを事前に徹底すれば、リリース後の緊急対応コストを10分の1に削減 できます。
短期的なコスト削減を優先して予防対策を削ると、後々の対応コストが爆発するリスク を抱えることになります。
4. ITプロジェクトマネージャーが取るべき「予防と発生時対策のバランス」
では、プロジェクトマネージャーとして、どのように「予防対策」と「発生時対策」をバランスよく実施すれば良いのでしょうか?
✔ 予防対策のためのアクション
✅ 事前リスク分析(リスクマトリックス)を実施し、発生しやすいリスクを特定
✅ スコープ管理ルールを明確化し、「やらないこと」を決める
✅ 品質確保のため、テストプロセスを標準化(CI/CDの活用、レビューの徹底)
✔ 発生時対策のためのアクション
✅ 障害発生時のフローを明確化(障害対応プロセスを事前に定義)
✅ フェールオーバー(システム自動切り替え)の準備
✅ インシデント管理ツールを導入し、対応履歴を記録・改善
5. まとめ – 予防に勝る治療なし
✅ 予防対策を怠ると、発生時対策ではリカバリーしきれない
✅ ITプロジェクトでは、予防対策のコストは発生時対策の1/10で済む
✅ プロジェクトマネージャーは、予防対策と発生時対策をバランスよく実施するべき
「予防に勝る治療なし」。
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投稿者プロフィール
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- 代表取締役
-
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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この記事に間違い等ありましたらぜひお知らせください。
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