人事・育成担当者必見！グリーン・ニューディールが変える未来の「働き方」と「求められる人材」
山崎講師こんにちは。ゆうせいです。
企業の「人材育成計画」、毎年頭を悩ませていませんか？5年後、10年後、私たちの会社にはどんなスキルを持つ人材が必要になるのでしょうか。
実は今、その未来図を大きく塗り替える可能性のある、世界的な構想が注目を集めています。その名も「グリーン・ニューディール」。
「環境政策の話でしょ？人事には関係ないかな」と思ったあなた！お待ちください。
この構想は、環境問題への対策であると同時に、大規模な「雇用創出」と「人材育成」の計画でもあるのです。
今回は、私たち人事・育成担当者が知っておくべき「グリーン・ニューディール」の本質と、未来の働き方に与えるインパクトについて、一緒に見ていきましょう。
そもそも「グリーン・ニューディール」って何？
まずは言葉の定義から。なんだか難しそうに聞こえますが、仕組みは意外とシンプルです。
グリーン・ニューディールとは、「環境問題への対策」と「経済格差の是正」を、政府による大規模な財政出動で同時に解決しようとする政策構想のことです。
専門用語解説：ニューディール
「ニューディール」という言葉は、1930年代の世界大恐慌の際に、アメリカのルーズベルト大統領が行った経済政策が元になっています。ダム建設などの公共事業を大規模に行うことで、失業者に仕事を生み出し、経済を立て直しました。
今回の「グリーン・ニューディール」は、その現代版。「公共事業」の部分を、環境対策のための投資に置き換えたイメージですね。
つまり、「環境に良いことへの投資を国が主導で行い、新しい産業や雇用をたくさん生み出そう！」という壮大なプロジェクトだと考えてみてください。
なぜ人事・育成担当者が注目すべきなのか？
ここからが本題です。この構想が、なぜ私たちの仕事と密接に関わるのでしょうか。
それは、グリーン・ニューディールが「働き手」、つまり人材に、巨大な変化を求めるからです。
1. 「グリーン・ジョブ」という新しい雇用の誕生
構想の中心にあるのは、再生可能エネルギー関連の仕事や、省エネ技術の開発、持続可能な農業など、「グリーン・ジョブ」と呼ばれる新しい雇用の創出です。
- 風力発電所のメンテナンス技師
- 建物のエネルギー効率を診断する専門家
- 電気自動車（EV）のインフラ整備士
- サステナブルなサプライチェーン管理者
これらはほんの一例です。貴社が直接環境ビジネスに関わっていなくても、取引先や社会全体の構造が変化すれば、必ず影響は出てきます。
新しい仕事が生まれれば、当然、そこには新しいスキルセットが求められますよね。
2. 「公正な移行（Just Transition）」という最重要ミッション
グリーン・ニューディールを語る上で、絶対に外せないのがこの言葉です。
専門用語解説：公正な移行（Just Transition）
環境対策のために社会構造を転換する中で、従来の産業（例えば、化石燃料関連産業など）で働いていた労働者が不利益を被らないように、適切な職業訓練や再就職支援を行おう、という考え方です。
社会がクリーンなエネルギーへ移行する過程で、既存の産業は縮小を余儀なくされるかもしれません。そこで職を失う人々を置き去りにしない。むしろ、新しい「グリーン・ジョブ」に就けるように、社会全体でリスキリング（学び直し）を支援する。
この「人材の移行支援」こそ、まさに私たち人事・育成担当者の専門領域ではないでしょうか。
人事視点でのメリット・デメリット
この大きな変革は、企業にとってチャンスでもあり、同時に課題も突きつけます。
メリット：未来を担う人材の獲得と育成
- 新たな事業機会の創出：社会のニーズに対応することで、新しいビジネスチャンスが生まれます。
- 採用競争力の向上：特に若い世代は、企業の環境問題への取り組みを重視する傾向があります。サステナビリティを重視する姿勢は、優秀な人材を惹きつける強力なメッセージになります。
- 明確な育成目標の設定：社会が求めるスキルが明確になるため、研修プログラムや育成計画が立てやすくなります。
デメリット：大規模な「リスキリング」という課題
- 既存従業員のスキル転換：これまで会社を支えてきた従業員のスキルが、新しい事業領域では通用しなくなる可能性があります。全社的な学び直しの仕組みをどう構築するかは、大きな課題です。
- スキルギャップの発生：新しいグリーン・ジョブの需要に、人材の供給が追いつかない「スキルギャップ」が起きる可能性があります。専門人材の採用は、激しい競争になるかもしれません。
- 変化への抵抗：新しい働き方や事業モデルへの転換には、組織内からの心理的な抵抗が伴うことも覚悟しなければなりません。
人材育成担当として、今からできること
「なんだか壮大な話で、すぐには…」と感じるかもしれません。しかし、変化の波は確実にやってきます。今から準備できることはたくさんあります！
- 自社の事業と「グリーン・スキル」の関連性を分析する自社の事業内容を棚卸しし、今後どの分野で環境関連のスキルが必要になるかを予測してみましょう。
- サステナビリティ教育の導入全社員向けに、SDGsや環境問題に関する基礎的な研修を取り入れ、意識の土台を作っておくことが重要です。
- 既存の研修内容の見直し例えば、営業研修に「環境価値の提案方法」を加えたり、製造研修に「省エネ・省資源の視点」を盛り込んだりするだけでも、大きな一歩です。
まとめ：これからの学習指針
グリーン・ニューディールは、単なる環境政策ではありません。未来の産業構造、雇用、そして人材育成のあり方を根本から変える可能性を秘めた、社会変革のビジョンです。
私たち人事・育成担当者は、この大きな潮流を読み解き、自社の人材が未来の社会でも価値を発揮し続けられるよう、羅針盤を示す役割を担っています。
もし、さらに深く学びたいと思ったら、次のようなキーワードで情報を探ってみてください。
- リスキリング（Reskilling）：社会の変化に対応するための学び直しの具体事例
- ESG経営と人材戦略：企業の環境・社会・ガバナンスへの取り組みが、人材戦略にどう結びつくか
- GX（グリーン・トランスフォーメーション）：化石燃料中心の経済社会システムを、クリーンエネルギー中心へ転換する取り組み全般
まずは、あなたの会社の経営層や事業部門のリーダーと、「10年後、うちはどんなスキルで社会に貢献しているだろう？」という対話を始めてみませんか。
その議論こそが、未来を生き抜く人材戦略の第一歩となるはずです。
