連合学習の心臓部!Global Model、Local Model、Federated Averagingの役割

こんにちは。ゆうせいです。

さて、前回までの記事で、プライバシーを守るAI技術「連合学習」の全体像と、その2つのタイプについて探検してきましたね。たくさんのスマホや組織が協力して、一つの賢いAIを育てていく様子、イメージできたでしょうか?

今回は、その連合学習が動く「仕組み」の、まさに心臓部とも言える3つのキーワードに迫ります。それが「Global Model」「Local Model」「Federated Averaging」です。

あの「秘伝のレシピ開発クラブ」の例え話を思い出しながら読み進めてみてください。今日の話が分かれば、あなたはもう連合学習の仕組みを自分の言葉で説明できるようになりますよ!


主役たちを紹介!Global Model と Local Model

連合学習の世界には、2種類のAIモデルが登場します。一方はサーバーに、もう一方は私たちのデバイスの中に存在します。

Global Model(グローバルモデル)

これは、中央サーバーが一元管理する、たった一つの「親」となるAIモデルです。連合学習に参加している全員の学習成果が、すべてこのモデルに集約されます。

例えるなら、レシピ開発クラブの会長が金庫で厳重に保管している「公式レシピブック(原本)」です。このクラブの最終目標は、この公式レシピブックを世界最高のレシピに育てること。まさにプロジェクト全体の「成果物」そのものです。

Local Model(ローカルモデル)

これは、私たち一人ひとりのスマートフォンなどのデバイス内に存在する、「子」となるAIモデルです。学習のサイクルが始まるたびに、Global Modelのコピーとして各デバイスに配布されます。

例えるなら、パティシエたちが会長から受け取る「公式レシピのコピー」です。パティシエたちは、このコピーを自分のキッチンに持ち帰り、自分の秘伝の材料(ローカルデータ)を使って試行錯誤し、レシピの余白にたくさんの改善点を書き込んでいきます。この「改善案が書き込まれた、自分だけのレシピのコピー」がLocal Modelにあたります。このモデルは、あくまで一時的なもので、学習が終わるとその「書き込み(差分)」だけがサーバーに送られます。


賢いまとめ役、Federated Averaging

さて、各パティシエ(デバイス)の手元で、たくさんの改善案が書き込まれたLocal Modelが出来上がりました。サーバー(会長)は、これらの成果をどうやって一つのGlobal Model(公式レシピ)にまとめ上げるのでしょうか?

ここで登場するのが、連合学習で最も標準的に使われる賢い集約アルゴリズム、「Federated Averaging(日本語では連合平均化)」です。

その名の通り、基本は「平均をとる」というシンプルな考え方です。

もしAさんが「砂糖を10g増やす」、Bさんが「砂糖を20g増やす」という改善案を出したら、その中間をとって「砂糖を15g増やす」と公式レシピに反映するようなイメージですね。

しかし、Federated Averagingはただの平均ではありません。「加重平均(Weighted Average)」という、もう一段階賢い方法をとります。

どういうことかというと、「よりたくさん学習した人の意見を、より重視する」のです。

例えば、Aさんはケーキを100個も焼いて改善案を練り上げたのに対し、Bさんは10個しか焼いていなかったとします。この場合、100個の試作に基づいたAさんの意見の方が、信頼できそうだと思いませんか?

Federated Averagingは、各デバイスが学習に使ったデータ量を「重み」として考慮し、データ量が多かったデバイスの学習結果が、より強くGlobal Modelに反映されるように平均を計算します。これにより、より信頼性の高い、効率的な学習が可能になるのです。

数式で表現すると、このようになります。

新しいグローバルモデル = Σ (各クライアントの学習データ量 / 全員の学習データ量) × 各クライアントが更新したモデル

w_{new} \leftarrow \sum_{k=1}^{N} \frac{n_k}{n} w_{k}

この式は、各クライアント(k)のモデル(w_k )に、そのクライアントが持つデータ量(n_k )に応じた重みをかけて足し合わせる、ということを示しています。


連合学習のサイクルをもう一度

さあ、3つのキーワードが出揃いました。これらを使って、連合学習の基本的な流れをもう一度おさらいしてみましょう。

  1. 配布:サーバーが、現在のGlobal Modelを各デバイスに配布します。
  2. ローカル学習:各デバイスは、受け取ったモデルを元に、自分のデータを使って学習を行い、Local Modelを更新します。
  3. 集約:各デバイスは、学習結果(モデルの差分)をサーバーに送信します。サーバーはFederated Averagingを用いて、集まった結果を統合し、Global Modelを更新します。
  4. そして、また1.に戻る。

このサイクルを繰り返すことで、Global Modelはどんどん賢くなっていくのです。


まとめと次のステップ

  • Global Model:みんなで育てる「親」モデル(公式レシピ)
  • Local Model:各デバイスで学習するための「子」モデル(個人のレシピコピー)
  • Federated Averaging:みんなの学習結果を賢くまとめる「加重平均」のルール

この3つの関係性を理解できたあなたは、連合学習のエンジンの仕組みを理解したも同然です!

さらに深く知りたいと思ったら、ぜひこんな問いを立ててみてください。

  • 「なぜ『平均』なんだろう?誰か一人の優秀なLocal ModelをGlobal Modelに採用するだけではダメなの?」
  • 「もし悪意のある人が、わざとデタラメな学習結果を送ってきたら、平均がおかしくなってしまわない?」

これらの問いは、「モデルの汎化性能」や「セキュアな集約(Secure Aggregation)」といった、連合学習のさらに面白くて重要なテーマへとあなたを導いてくれるはずですよ。

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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