確率的勾配降下法(SGD)はなぜ”確率的”?名前の由来を旅人に例えて解説!

こんにちは。ゆうせいです。

機械学習を学んでいると、必ずと言っていいほど登場する「確率的勾配降下法(Stochastic Gradient Descent, SGD)」。この言葉、なんだか難しそうに聞こえませんか?特に「確率的」って、一体何が確率的なのでしょうか。

今回は、このSGDがなぜ「確率的」と呼ばれるのか、その秘密を一緒に解き明かしていきましょう!

まずは基本の「勾配降下法」を知ろう

SGDの話をする前に、まずはその親分である「勾配降下法(Gradient Descent, GD)」について理解する必要があります。

想像してみてください。あなたは今、広大な山脈のどこかに目隠しで立たされています。あなたの目的は、一番低い谷底(最小値)にたどり着くこと。どうすればいいでしょうか?

おそらく、足元を慎重に探り、一番傾斜が急になっている方向、つまり最も下っている方向へ一歩ずつ進んでいくはずです。

この「最も下っている方向へ進む」という考え方が、勾配降下法の核心です。機械学習では、モデルの予測がどれくらい間違っているかを示す「損失関数」というものがあります。この損失関数が、先ほどの山脈の地形にあたります。そして、この地形の最も低い場所(=損失が最小になる場所)を探す旅が、モデルの学習なのです。

勾配降下法は、この旅を非常に真面目に行います。なんと、一歩進むごとに、山のすべての地点の傾斜を調べて、平均的な「最も下る方向」を計算するのです。

とても慎重で、正確な道筋をたどってくれるのですが、一つ大きな問題があります。もし、この山がとてつもなく広大だったら…?すべての地点を調べるのに、膨大な時間がかかってしまいますよね。データが数百万、数千万とある現代の機械学習では、この真面目すぎる方法は現実的ではないのです。

いよいよ登場!「確率的」な旅人、SGD

そこで登場するのが、今回の主役「確率的勾配降下法(SGD)」です。

SGDは、先ほどの真面目な旅人とは少し違います。彼はもっとせっかちで、楽観的です。

彼は一歩進む方向を決めるのに、山全体の傾斜を調べたりはしません。代わりに、今いる場所からランダムに一つの地点を選び、その地点の傾斜だけを見て「よし、こっちだ!」と次のステップを決めてしまうのです。

この「ランダムに一つだけ選んで、それを全体の代表とみなす」という部分こそが、「確率的(Stochastic)」と呼ばれる理由です。毎回、どのデータを選ぶかによって進む方向が偶然に左右される、つまり確率的に決まる、というわけですね。

SGDのメリット:速さと突破力!

この一見すると大雑把な方法には、大きなメリットが二つあります。

一つ目は、圧倒的なスピードです。全データを調べる必要がないので、一歩一歩が非常に高速です。データが巨大になればなるほど、その恩恵は計り知れません。

二つ目は、意外な「突破力」です。山には、一番低い谷底(全体最適解)の他にも、いくつか小さな窪地(局所的最適解)があるかもしれません。真面目な勾配降下法は、一度こうした窪地にはまってしまうと、そこが一番低い場所だと勘違いして動けなくなってしまうことがあります。

しかし、SGDは毎回ランダムな情報で動くため、歩みが少しフラフラしています。このフラつきのおかげで、小さな窪地にはまっても、ひょいと抜け出して、真の谷底への旅を続けられる可能性が高いのです!まるで、酔っ払いが千鳥足で障害物を避けていくかのようですね。

SGDのデメリット:なかなか落ち着かない

もちろん、良いことばかりではありません。SGDは歩みがフラフラしているため、真の谷底のすぐ近くまで来ても、なかなかピタッと止まることができません。谷底の周りをうろうろと歩き回ってしまうようなイメージです。そのため、勾配降下法ほど正確に最小値にたどり着くのは少し苦手としています。

まとめ:賢い旅のスタイルを選ぼう

それでは、今回の内容をまとめてみましょう。

手法進み方の決め方メリットデメリット
勾配降下法(GD)全てのデータを調べて平均的な方向へ進む正確に最小値に向かう計算に時間がかかりすぎる
確率的勾配降下法(SGD)ランダムに選んだ一つのデータだけを見て進む計算が非常に速い、局所解を抜け出しやすい動きが不安定で、最小値付近で振動する

SGDが「確率的」と呼ばれるのは、たくさんのデータの中から「ランダムに」一つを選び出し、それを頼りに次の進むべき道を「確率的に」決める、という性質に由来していたのですね。

実際には、SGDの不安定さを少し抑え、GDの正確さを少し取り入れた「ミニバッチ勾配降下法」という、両方の良いとこ取りをしたような手法が最も広く使われています。これは、ランダムに一つではなく、いくつかのデータ(例えば32個や64個)を小さなグループ(ミニバッチ)として選び、その平均的な傾斜で進む方法です。

もしあなたがSGDの考え方に興味を持ったら、次はSGDのフラつきをより賢く制御するための「モーメンタム」や「Adam」といった、さらに進んだ最適化手法について学んでみることをお勧めします。SGDの旅を、よりスマートに導くための工夫が満載で、きっと面白い発見がありますよ!

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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