Vertex AIとは?「AI開発の全部入りBTOパソコンショップ」

こんにちは。ゆうせいです。

機械学習のモデルをいざ作ろう!と思ったとき、何から手をつけていいか途方に暮れてしまった経験はありませんか?データの準備、モデルのトレーニング、そして完成したモデルを実際に使えるようにする「デプロイ」…。それぞれの工程で使うツールがバラバラで、それらを繋ぎ合わせるだけでも一苦労ですよね。

まるで、自作PCを組むときのように、CPU、マザーボード、メモリといった部品(ツール)を一つひとつ選んで、相性を確認しながら組み立てるような複雑さがあります。

もし、この複雑なプロセスを、一つの場所で、統一された手順で、スムーズに進められるとしたら…?

今回は、そんな夢のような環境を提供してくれるGoogle Cloudのサービス、「Vertex AI」について、その全体像を分かりやすく解説していきます!


Vertex AIとは?「AI開発の全部入りBTOパソコンショップ」です

Vertex AIをひとことで言うと、機械学習プロジェクトの開始から本番運用まで、全ての工程(MLOps)を一つのプラットフォームで管理できる、Google Cloudの統合AI基盤です。

先ほどの自作PCの例えで考えてみましょう。

パーツを一つひとつ選んで組み立てるのが従来の開発方法だとすれば、Vertex AIは**「高性能なBTO(Build to Order)パソコンショップ」**のような存在です。

このショップに行けば、以下のことが可能になります。

  • 簡単な用途を伝えるだけで、プロが組み立てた高性能なPC(AutoML)をすぐに購入できる。
  • こだわりたい人のために、最高品質のパーツ(各種ツール)が棚にずらりと並んでおり、互換性を気にせず自由に組み合わせて自分だけの最強PC(カスタムモデル)をオーダーできる。
  • 完成したPCの設置、設定、そして運用後のメンテナンス(モデルのデプロイと管理)まで、全てお任せできる。

このようにVertex AIは、初心者からプロフェッショナルまで、あらゆるレベルのユーザーが、自分の目的に合わせて最適なAI開発環境を、一つの場所で手に入れることができるプラットフォームなのです。


Vertex AIで何ができるの?主要な機能を見てみよう

Vertex AIというショップには、AI開発をスムーズに進めるための様々なパーツ(機能)が揃っています。代表的なものを開発の流れに沿って見ていきましょう。

1. データの準備と管理(パーツ選びの棚)

良いモデルは、良いデータから生まれます。Vertex AIは、学習に使うデータを効率的に管理するためのツールを提供します。

特にVertex AI Feature Storeは、一度作成した特徴量(モデルが学習に使うデータの"着眼点")をカタログのように保存し、チーム内で再利用したり共有したりできる非常に便利な機能です。

2. モデルのトレーニング(PCの組み立て)

ここがAI開発の心臓部です。Vertex AIでは、あなたのスキルレベルに合わせて、大きく2つの方法でモデルをトレーニングできます。

  • AutoML:プログラミングの知識がほとんどなくても大丈夫!「この画像に写っているのは猫か犬か」「この顧客は商品を買うか買わないか」といった目的とデータを指定するだけで、Googleの最先端技術を駆使して、Vertex AIが最適なモデルを自動で構築してくれます。まさに、プロが組んだ高性能PCを買うような手軽さです。
  • カスタムトレーニング:自分でコードを書きたい、特定のアルゴリズムを使いたい、というプロ向けの選択肢です。TensorFlowやPyTorch、scikit-learnといった好きなフレームワークで書いた独自のコードを、Googleの強力な計算インフラを使ってトレーニングできます。自分でCPUやグラボを選ぶように、こだわりのモデル開発が可能です。

3. モデルの評価とデプロイ(設置と運用)

完成したモデルの性能を評価し、実際にアプリケーションから利用できるようにする工程です。

Vertex AI Endpointsという機能を使えば、数回クリックするだけで、トレーニング済みのモデルを本番環境にデプロイし、推論リクエストを受け付ける準備が整います。自分でサーバーを立てたり、複雑なネットワーク設定をしたりする必要は一切ありません。


Vertex AIを使うことの真のメリット

これらの機能が「一つのプラットフォーム」に統合されていることが、Vertex AIの最も強力な点です。

従来は、データの準備、トレーニング、デプロイといった各工程で別々のツールやサービスを使うことが多く、それらを連携させるための「接着剤」となるコードを大量に書く必要がありました。

Vertex AIを使えば、この接着剤が不要になり、開発者はモデルの本質的な改善に集中できます。結果として、AI開発のスピードと品質が劇的に向上するのです。


注意すべき点

もちろん、Vertex AIは魔法の杖ではありません。

特定のクラウドプラットフォームに深く依存することになるため、「ベンダーロックイン」のリスクは考慮する必要があります。また、非常に強力なマネージドサービスであるため、個人でサーバーを立てるのに比べてコストが高くなる可能性もあります。まずは小規模なプロジェクトから試してみて、コスト感を掴むことが重要です。


まとめと次のステップへ

Vertex AIは、初心者にとってはAI開発へのハードルを大きく下げてくれる入門ツールであり、プロにとっては面倒なインフラ管理から解放され、より高度な開発に集中させてくれる強力な武器となります。

もしあなたがAI開発の道に一歩足を踏み入れたいなら、Vertex AIは最高のスタート地点の一つです。

まずは、Google Cloudの無料枠を活用して、公式のチュートリアルに触れてみることを強くお勧めします!

特に、画像認識や感情分析など、Googleが事前にトレーニングしたモデルをAPIとして手軽に利用できる**「Pre-trained API」**を試してみると、AIがどれだけ身近なものになっているかを実感できるはずです。

Vertex AIという最高のBTOショップで、あなただけのAIを作ってみませんか?

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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