重回帰分析はディープラーニングの「細胞」だった?"ご先祖様"と"最強の進化系"のつながりを徹底解剖
こんにちは。ゆうせいです。
前回、重回帰分析が「機械学習のご先祖様」であり、その最大の武器は「解釈可能性の高さ(=人間が理解できること)」だ、というお話をしましたね。
一方、AIの最先端として話題になる「ディープラーニング(深層学習)」は、どうでしょう?
「予測精度はスゴイけど、なぜその答えを出したか分からない(=ブラックボックス)」とよく言われます。
解釈しやすい「ご先祖様」と、解釈しにくい「最先端のAI」。
一見すると、この2つはまったくの正反対に見えます。
「あのシンプルな重回帰分析と、複雑なAIが、どう関係するの?」
実は、ディープラーニングは、重回帰分析の「超・複雑な進化系」と呼べる構造をしているんです!
今日は、この「ご先祖様」と「最強の進化系」の、驚くべき「血のつながり」について解き明かしていきますよ。
復習:重回帰分析の「本質」とは?
まず、重回帰分析が何をやっていたか、その「本質」を思い出してみましょう。
「家の価格」を「広さ」「駅からの距離」「築年数」といった 複数の原因 から予測する手法でしたね。
その正体は、私たちが中学で習った という一次関数の、原因()が増えたバージョンでした。
:予測したい価格:広さ:駅からの距離:築年数:それぞれの重要度(重み):ベースとなる価格(切片)
この式の「本質」は、たった一つの操作です。
それは、「入力()に、それぞれの重要度(重み
)を掛けて、最後にぜんぶ足し合わせる(
もする)」という計算。
専門用語では、この「重みをつけて足し合わせる」操作を「線形結合(せんけいけつごう)」と呼びます。
このキーワード、よーく覚えておいてください。
ディープラーニングの「最小単位」を覗いてみよう
さて、場面は変わってディープラーニングです。
ディープラーニングは、「ニューラルネットワーク」という、人間の脳の神経細胞(ニューロン)を数学的にマネした仕組みで動いています。
では、その「ニューロン」が 1個 だけで何をしているのか、虫メガネでよーく覗いてみましょう。
- ニューロンは、複数の入力(
)を受け取ります。
- それぞれの入力には、別々の「重み(
)」が掛けられます。(
が
に変わっただけですね!)
- そして、それらをぜんぶ足し合わせます。(「バイアス
」という値も足します)
…あれ?
この計算、どこかで見ませんでしたか?
そうなんです!
ニューラルネットワークの「ニューロン1個」がやっている計算の「核」の部分は、重回帰分析(線形結合)とまったく同じ仕組みなんです!
ディープラーニングという巨大なAIも、分解していけば、その最小単位の「細胞」は、ご先祖様である重回帰分析の計算がベースになっている。驚きですよね。
決定的な違い:「活性化関数」という名の"ひと工夫"
「え、じゃあディープラーニングって、ただ重回帰分析をたくさん並べただけなの?」
そう思ったあなた、半分正解で、半分不正解です。
もし本当に「重みをつけて足す」だけの計算を何層も何層も重ねても、数学的には、結局「大きな1個の重回帰分析」と同じことになってしまいます。
これでは、重回帰分析の弱点だった「直線的な関係」しか予測できません。
そこで、ディープラーニングは、ニューロンが「重みをつけて足し合わせた」 後 に、ある「魔法のひと工夫」を加えます。
それが「活性化関数(かっせいかかんすう)」と呼ばれるものです。
例え:レストランのシェフ
- 重回帰分析のシェフお客さん(入力)の注文を、そのまま合計して(線形結合)、ドンと出す。味付けはいつも塩コショウのみ。シンプルで「直線的」な味です。
- ニューロンのシェフお客さん(入力)の注文を合計した後(線形結合)、「秘伝のスパイス(活性化関数)」を フリッ とかけます。
この「スパイス」の役割は、計算結果をあえて「グニャリ」と曲げる(非線形にする)ことです。
例えば、「計算結果がマイナスだったら、強制的にゼロにする(ReLU関数)」とか、「0から1の間の滑らかな数値にギュッと押し込める(シグモイド関数)」といった処理をします。
この「スパイス(活性化関数)」のおかげで、ニューロンは「直線的」な関係しか扱えなかった重回帰分析の弱点を克服し、「非線形(グニャグニャ)」な複雑な関係を表現できるようになるんです!
「深さ(ディープ)」がもたらす究極の進化
ディープラーニングが「ディープ(深い)」と呼ばれる理由は、この「スパイスをかけるシェフ(ニューロン)」を、何層にも重ねているからです。
- 重回帰分析シェフが1人(1層)だけ。「広さ」と「駅距離」を足し算して「価格」を出す、という単純な調理しかできません。
- ディープラーニング
- 1層目のシェフたち:「広さ」や「駅距離」といった素材に、最初のスパイス(活性化関数)をかけて「下ごしらえ」をします。
- 2層目のシェフたち:その「下ごしらえされた料理」を受け取って、さらに複雑な調理(重み付け+スパイス)をします。
- 3層目、4層目…:調理がどんどん高度になり、最終的には「(『広くて』 かつ 『駅チカ』で、ただし 『築年数が浅い』)場合だけ、価格が爆上がりする」といった、特徴同士の複雑な絡み合いまで自動で学習していきます。
まとめ:ご先祖様の「細胞」が進化して最強のAIになった
もう一度、関係を整理しましょう。
- 重回帰分析(線形結合)は、ディープラーニングを構成する「ニューロン」という最小単位の細胞の「核」として、今も生き続けています。
- ディープラーニングは、その「細胞」に「活性化関数(スパイス)」という武器を与え、
- それを何層にも深く(ディープに)積み重ねることで、
- 重回帰分析の弱点だった「非線形性」や「複雑な絡み合い」を克服した「最強の進化系」だと言えます。
だからこそ、ご先祖様である重回帰分析の仕組み(重みをつけて足し合わせる)を理解しておくことは、ブラックボックスに見えるディープラーニングを理解するための、絶対に必要な第一歩なんです!
次のステップ
- 「ロジスティック回帰」を学ぼう!重回帰分析の「線形結合」に、「シグモイド関数」という活性化関数を 1個だけ くっつけると、「ロジスティック回帰」という別の機械学習モデルになります。これは「Yes/No」を予測する分類問題の基本であり、まさに重回帰分析からディープラーニングへの「進化の途中」を見ているようで面白いですよ。
- 「活性化関数」の種類を調べてみよう「ReLU(レル)」「シグモイド」「tanh(ハイパボリックタンジェント)」… なぜディープラーニングはこんなに多くの「スパイス」を使い分けるのか?それぞれの特徴を調べてみると、ディープラーニングの気持ちが少しわかるようになります。
ご先祖様の知恵が、最先端技術の核になっている。エンジニアリングって、本当に面白い世界だと思いませんか?
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投稿者プロフィール
- 代表取締役
-
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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