60歳で給料半減!?エンジニアを救う「高年齢雇用継続基本給付金」の仕組み

こんにちは。ゆうせいです。

新人エンジニアのみなさん、突然ですが「定年」について考えたことはありますか?

「まだ20代だし、40年も先の話なんて想像できないよ」

そう思うのが当然です。しかし、IT業界も高齢化が進んでいます。みなさんが60歳になる頃には、「生涯現役エンジニア」が当たり前の世界になっているかもしれません。

現在、多くの日本企業では60歳で一度「定年」を迎えます。その後、「再雇用(さいこよう)」という形で働き続けるのが一般的ですが、ここで衝撃的なイベントが発生します。

給料がガクンと下がるのです。

現役時代にバリバリ稼いでいた人ほど、再雇用で給料が半分以下になることも珍しくありません。そんなシニア世代のエンジニアを救うために実装されているパッチ(修正プログラム)が、今回解説する「高年齢雇用継続基本給付金」です。

少し長い名前ですが、将来の自分のため、そして今の親御さんのために、この仕組みを知っておきましょう。

制度の概要:給料ダウンへの補填パッチ

この制度を一言で言うと、「60歳以降も働く人の給料が、60歳時点に比べて大幅に下がってしまった場合、国が少しお金を足してあげましょう」という仕組みです。

エンジニアの仕事に例えてみましょう。

あなたは高機能なメインサーバー(60歳時点のあなた)として稼働していました。しかし、契約更新(定年)を機に、スペックはそのままで保守運用担当(再雇用後のあなた)にロールチェンジすることになりました。

その際、クライアント(会社)から「予算の都合で、維持費(給料)を半分にします」と言われたらどうでしょう?モチベーションが維持できませんよね。

そこで、システム全体のダウンを防ぐために、外部スポンサー(雇用保険)が不足分の一部を補填してくれる。これがこの給付金の正体です。

支給されるための「IF文(条件)」

この給付金をもらうには、以下の条件をクリアする必要があります。

  1. 60歳以上65歳未満であること。
  2. 雇用保険に「5年以上」加入していた期間があること。
  3. 60歳以降の賃金が、60歳時点の賃金の「75%未満」に下がっていること。

特に重要なのが3番目の条件です。

現在の給料 < 60歳時点の給料 \times 0.75

つまり、給料が「ちょっと下がった(8割くらいになった)」程度ではもらえません。「ガッツリ下がった(7割以下になった)」ときだけ発動する、緊急救済措置なのです。

いくらもらえる?計算のアルゴリズム

では、どれくらい補填されるのでしょうか。

支給額の上限は、下がってしまった新しい給料の「15%」です。

計算式は少し複雑ですが、ざっくり言うと「給料が下がれば下がるほど、支給率が上がっていく(最大15%)」という仕様になっています。

具体的なシミュレーション

わかりやすく数字を入れてみましょう。

  • 60歳時点の給料:月給40万円
  • 再雇用後の給料:月給24万円

まず、下がり幅をチェックします。

24万円 \div 40万円 = 60%

60歳時点の6割まで落ち込んでいますね。「75%未満」という条件を見事に満たしています(=支給対象)。

この場合、最大の給付率である15%が適用されます。

支給額 = 24万円 \times 0.15 = 3万6,000円

結果として、毎月の手取りイメージはこうなります。

会社の給料(24万円) + 給付金(3万6,000円) = 27万6,000円

完全に元通りとはいきませんが、月3万円以上のプラスは大きいですよね。これが65歳になるまで毎月続く可能性があります。

注意!年金との競合バグ

ここで一つ、エンジニアのみなさんに警告しておきたい仕様上のバグ(注意点)があります。

それは「年金」との相性です。

60代前半で「特別支給の老齢厚生年金」などを受け取りながら働く場合、この給付金を受け取ると、なんと年金の一部がカット(停止)されてしまうのです。

給付金をもらう \rightarrow 年金が減らされる

この相殺関係があるため、トータルで見て本当に得なのかどうかは、慎重なシミュレーションが必要です。両取りはできない仕様になっていると覚えておいてください。

制度の縮小・廃止(Deprecation)のお知らせ

さて、ここまで説明しておいてなんですが、実はこの機能、将来的に「廃止(Deprecation)」されることが決まっています。

国の方針として、「給付金で穴埋めするのではなく、企業がシニアにもちゃんとした給料を払いなさい」という方向にシフトしているからです。

  • 2025年4月から: 新たに60歳になる人の給付率が、最大15%から「最大10%」に縮小されます。
  • 将来的には: 制度自体が廃止される予定です。

みなさんが60歳になる頃には、この制度はなくなっている可能性が高いです。その代わり、60歳を過ぎても給料が下がらない社会(同一労働同一賃金)になっていることが期待されています。

今後の学習の指針

いかがでしたか?

「高年齢雇用継続基本給付金」は、今のシニア世代にとっては重要な命綱ですが、私たち現役世代にとっては「過渡期のシステム」と言えます。

新人エンジニアのみなさんに持ち帰ってほしいマインドセットはこれです。

「給付金に頼らなくても、60歳を過ぎて価値が下がらないエンジニアになろう」

技術力、マネジメント力、あるいは業務知識。何か一つでも「代えが効かないスキル」を持っていれば、定年後も給料を下げずに契約できるはずです。

今回の知識は、もし親御さんが定年を迎えるタイミングがあれば、ぜひアドバイスとして教えてあげてください。それまでは、自分自身の市場価値を高めることに集中しましょう!

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
この記事に間違い等ありましたらぜひお知らせください。

学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。