2024年から2026年にかけて変わった経費のルール
こんにちは。ゆうせいです。
「パソコンは30万円未満なら一括で経費にできる」
この知識で止まっている経営者の方は、少なくありません。しかし2026年4月から、この基準は変わりました。同じように、出張手当、食事補助、通勤手当の基準も、物価上昇を受けて次々と見直されています。
規程を書き換えるだけで、会社の税負担も社員の手取りも変わります。この記事では、押さえておくべき5つの変更点を整理します。
結論
2024年から2026年にかけて変わった主な基準は、次の通りです。
| 項目 | 改正前 | 改正後 | 適用時期 |
|---|---|---|---|
| 少額減価償却資産の特例 | 30万円未満 | 40万円未満 | 2026年4月1日以後の取得 |
| 交際費から除く飲食費 | 1人5,000円以下 | 1人10,000円以下 | 2024年4月1日以後 |
| 国家公務員の宿泊費上限(東京・課長級以下) | 19,000円 | 21,000円 | 2026年4月 |
| 食事補助の非課税限度額 | 月3,500円 | 月7,500円 | 2026年4月1日以後の支給 |
| 通勤手当の非課税限度額(自動車等) | 距離区分ごとに設定 | 引き上げ、65km以上の区分を新設 | 2025年4月分に遡及、2026年4月に追加改正 |
いずれも、社内規程を改定しなければ効果が出ません。順に見ていきます。
なお、税務の取扱いは個別事情によって変わります。この記事は制度の概要をまとめたものですので、実際の適用にあたっては顧問税理士にご確認ください。
1 少額減価償却資産の特例が40万円未満に
何が変わったか
2026年4月1日から、中小企業者等の少額減価償却資産の特例における取得価額の上限が、30万円未満から40万円未満に引き上げられました。令和8年度税制改正による中小企業の設備投資後押し策です。
通常、10万円以上の備品は資産として計上し、耐用年数にわたって少しずつ経費にします。これが減価償却です。この特例を使うと、対象となる資産をその年に全額経費にできます。
押さえるべき三つの条件
年間合計300万円という上限は、改正前から変更ありません。また判定はあくまで1つごとの金額で行い、40万円未満が条件ですので、40万円ちょうどは対象外になります。
具体例で確認します。38万円のパソコンを10台購入した場合を考えます。
合計380万円です。しかし年間の枠は300万円ですので、全額は使えません。
7台分までが特例の対象となり、7台で266万円です。残りの3台は通常の減価償却資産として、耐用年数にわたって経費にしていきます。
実務上の注意点
三点あります。
一つ目は、対象が有形固定資産に限られないことです。ソフトウェアなどの無形固定資産も、40万円未満であれば対象になります。業務管理システムやクラウド会計の導入も、条件を満たせば使えます。
二つ目は、償却資産税との関係です。法人税や所得税で全額経費にできたとしても、償却資産税(固定資産税)の申告は必要になります。ここは間違えやすい点です。
三つ目は、赤字の年に使う意味が薄いことです。当期に赤字が見込まれる場合、特例で損金算入しても税金は減らず、繰越欠損金が積み上がるだけです。翌期以降に黒字回復が見込まれるなら、通常の減価償却に回したほうがトータルの税負担を抑えられる場合もあります。
節税のために不要な設備を買う、という判断はおすすめできません。必要な投資かどうかが前提です。
適用期限
この特例は恒久的な制度ではなく、期間限定です。数年おきに見直されながら延長されてきました。期限は改正のたびに動きますので、大きな設備投資を検討する際は、国税庁の最新情報でご確認ください。
2 取引先との飲食は1人1万円まで交際費から除ける
ルールの構造
中小企業の交際費は、年間800万円までが損金算入の上限です。接待の多い業種では、この枠は意外に早く埋まります。
一方、取引先との飲食費のうち、1人当たり一定額以下のものは、交際費から除いて処理できます。この基準が、2024年4月1日以後に支出するものから、5,000円以下から10,000円以下に引き上げられました。
つまり、1人1万円以下の飲食であれば、800万円の枠を消費せずに済みます。
税込みか税抜きか
実務で最も迷うのがこの点です。判定は、会社が採用している経理方式(税抜経理か税込経理か)によって変わります。さらに、飲食店がインボイス発行事業者であるかどうかによっても、控除できる消費税額が変わるため、判定に影響します。
会食の場で正確に判定するのは、現実的ではありません。
推奨する運用
社内ルールとして、税込1万円以内と決めてしまうことをおすすめします。
理由は単純です。税込1万円以内であれば、どの経理方式であっても基準を下回ります。判定に迷う余地がなくなり、税務調査での指摘リスクも減ります。
会計時に領収書の総額だけを見ればよいため、現場での運用も簡単です。
なお、この処理には保存すべき書類の要件があります。参加者の氏名、人数、日付、店名などの記録が必要ですので、経費精算のフォーマットにこれらの入力欄を設けておいてください。
3 出張旅費規程の見直し
出張手当の税務上の効果
出張手当は、交通費や宿泊費とは別に、出張先での細かな支出を補填するために支給する金銭です。適正な金額であれば、次の効果があります。
| 立場 | 効果 |
|---|---|
| 会社 | 全額を損金算入できる |
| 会社 | 消費税の課税仕入れとして扱える |
| 受取側 | 所得税、住民税がかからない |
| 受取側 | 社会保険料の算定基礎に含まれない |
給与として支給する場合と比べ、税負担の面で有利になります。
ただし、この扱いを受けるには、出張旅費規程を整備し、全社員に適用される客観的な基準として運用する必要があります。役員だけが高額を受け取る設計は、否認されるリスクがあります。
国家公務員の基準はどう変わったか
民間企業が金額の妥当性を説明する際、国家公務員の基準がよく参照されます。ここは、正確に理解しておく必要があります。
2025年4月1日、国家公務員の旅費制度が改正され、宿泊費は定額支給から上限付きの実費精算に移行しました。上限額は都道府県ごとに設定されています。
2025年4月時点の課長級以下の上限は、東京で19,000円でした。
その後、財務省は実勢価格を踏まえて上限額を改定し、課長級以下の国内出張について、27都道府県で1,000円から5,000円の引き上げ、16県で据え置き、4県で1,000円から3,000円の引き下げとしました。最も高いのは東京の21,000円で、京都が20,000円、千葉、兵庫、福岡が17,000円と続きます。この改正省令の施行は2026年4月の予定とされていました。
なお、旅費法では上限額について、毎年度実勢価格などを確認したうえで、必要に応じて見直すと定められています。
誤解しやすい点
インターネット上には、「国家公務員の宿泊費の基準が4万円に引き上げられた」という情報が見られます。この数字は、内閣総理大臣など最上位の職位に適用されるものです。一般の社員の水準を検討する際の参考にはなりません。
参照すべきは、課長級以下の区分です。東京で21,000円という水準が、現在の目安になります。
日当の扱いも変わった
もう一点、重要な変更があります。
日当は、昼食代や目的地内を巡回する交通費を含んだものでしたが、昼食は通常勤務でも必要な費用であること、交通費も全行程の実費で支給されることから、支給対象から除外されました。名称も変更されています。
出張手当は、昼食代を除いた実費相当の宿泊手当として再構成され、宿泊時の朝食や夕食などに対応する金額が支給される形になりました。
つまり、国の制度は「定額の日当」から「実費に近い形」へ舵を切りました。民間企業がこれをそのまま真似する必要はありませんが、規程の説明を求められた際の背景として押さえておくとよいでしょう。
実務上の判断
宿泊費や手当の水準を見直す場合、実勢価格の上昇を根拠として説明できる範囲にとどめてください。国の基準が改定されたことは、見直しの根拠として使えます。
一方で、一気に倍増させるような改定は、実態との乖離を疑われます。ホテル代の上昇分に見合った金額に、段階的に調整するのが現実的です。
4 食事補助の非課税限度額が42年ぶりに引き上げ
改正内容
国税庁は令和8年3月31日に、食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額を月額7,500円(改正前は月額3,500円)に引き上げる法令解釈通達の改正を行いました。引き上げ後の非課税限度額は、令和8年4月1日以後に支給する食事について適用されます。
従来の3,500円という基準は1984年に定められたもので、40年以上見直されていませんでした。物価水準に合わなくなっていたため、多くの企業で制度が形骸化していました。
二つの要件
非課税として扱うには、次の二つを両方満たす必要があります。
一つは、従業員が食事の価額の50%以上を負担すること。もう一つは、企業の負担額が月額7,500円以下であることです。両方を同時に満たす必要があります。
例えば1食900円の弁当を提供する場合、従業員は最低450円以上を負担しなければなりません。企業負担が従業員負担を超えると、この要件を満たさず、全額が給与として課税対象になります。
金額のインパクト
月7,500円を12か月分で計算します。
1人あたり年間最大9万円の食事補助を、非課税で提供できる計算になります。
同じ9万円を給与として支給した場合と比較してみます。所得税と住民税を合わせて20%、社会保険料の本人負担を15%と仮定します。
手取りベースでは58,500円相当です。差額は31,500円になります。さらに会社側は社会保険料の事業主負担も発生しますので、実際の差はより大きくなります。
福利厚生の充実は、定期昇給やベースアップに続く第三の賃上げとも呼ばれています。人手不足に悩む企業にとって、検討する価値があります。
深夜勤務者の夜食代も引き上げ
深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭についても、所得税を課税しないこととされる1回の支給額が650円以下(改正前は300円以下)に引き上げられました。
これは、夜食の現物支給ができないため代わりに金銭を支給する場合に適用されます。夜勤体制のある工場、警備、医療、介護関連の企業では、関係してくる可能性があります。
課税されやすい落とし穴
上限が上がっても、食事補助が自動的に非課税になるわけではありません。従業員が一定の自己負担をしているなどの要件を満たし、かつ運用と証憑が整っている必要があります。
特に注意すべきは、現金支給です。現金で食事手当として支給したり、昼食の有無に関係なく固定で毎月支給したりすると、実態によっては福利厚生ではなく労働の対償(賃金)とみなされる場合があります。この場合、労働保険料や残業代の計算基礎に含まれることになります。
制度を設計する際は、出勤日に連動させる、会社指定の方法で提供する、といった運用ルールを規程に明文化してください。
5 通勤手当の非課税限度額の引き上げ
2025年の遡及改正
2025年11月19日、通勤手当の非課税限度額を引き上げる所得税法施行令の改正政令が公布され、翌11月20日に施行されました。適用対象は2025年4月1日以後に支払われるべき通勤手当とされ、実務上はさかのぼって適用される形になりました。
これは11年ぶりの引き上げで、マイカー等の交通用具を使用して通勤する給与所得者が対象です。
電車やバスのみを利用している人の非課税限度額(実費相当額、月15万円まで)は変わりません。対象は自動車や自転車などの交通用具を使う通勤手当のみです。
この改正により、2025年分の年末調整で精算が必要になったケースがありました。既に対応済みの企業が大半だと思いますが、退職者への源泉徴収票の再交付が漏れていないか、念のため確認してください。
2026年4月の追加改正
2025年12月19日に閣議決定された令和8年度税制改正大綱では、片道65km以上の新区分の新設と、駐車場代の月額5,000円非課税化が盛り込まれ、2026年4月1日から施行されています。65km以上の区分は、最大66,400円が上限とされています。
駐車場代については、距離区分ごとの限度額に加算できる形です。車通勤が前提となる地域の企業にとっては、影響の大きい改正といえます。
見落としやすい注意点
通勤手当は所得税と住民税については非課税ですが、社会保険料の算定基礎には含まれます。この点は変わっていません。
通勤手当を増やせば社会保険料の等級が上がる可能性があるため、手取りへの影響は単純ではありません。対象者が多い場合は、事前に試算しておくことをおすすめします。
今すぐ確認すべき社内規程
以上を踏まえ、見直すべき規程を整理します。
| 規程 | 確認する内容 |
|---|---|
| 固定資産管理規程 | 一括償却の判定基準が30万円のままになっていないか |
| 経費精算規程 | 会議費と交際費の区分基準が5,000円のままになっていないか |
| 出張旅費規程 | 宿泊費上限と手当の金額が実勢に合っているか |
| 福利厚生規程 | 食事補助の会社負担上限が3,500円のままになっていないか |
| 給与規程 | 通勤手当の支給基準と非課税限度額の対応 |
規程を改定する際は、次の手順を踏んでください。
- 現行規程の該当条文を洗い出す
- 改定案を作成し、顧問税理士に確認する
- 必要に応じて社会保険労務士にも相談する
- 従業員代表の意見聴取など、労働基準法上の手続きを行う
- 改定後の規程を周知し、適用開始日を明示する
福利厚生規程や給与規程の変更は、就業規則の変更にあたる場合があります。手続きを飛ばさないよう注意してください。
まとめと次の検討ステップ
物価上昇を背景に、経費に関する基準の見直しが続いています。少額減価償却資産は40万円未満に、飲食費は1人1万円以下に、食事補助は月7,500円に、通勤手当も引き上げられました。
いずれも、社内規程を書き換えなければ効果が出ません。制度を知っているだけでは、税負担も手取りも変わらないという点が重要です。
特に優先度が高いのは、食事補助です。会社の負担は経費として処理でき、従業員側には所得税も住民税もかかりません。金額の割に、従業員が受け取る実感が大きい制度です。
次の検討ステップとしては、自社の従業員構成を確認することをおすすめします。マイカー通勤者が多い、夜勤がある、出張が多い。どの改正が効くかは、会社によって異なります。影響の大きい項目から順に着手してください。
なお、税制は毎年改正されます。この記事の内容も、今後の改正で変わる可能性があります。実際の適用にあたっては、国税庁の公式情報を確認したうえで、顧問税理士にご相談ください。制度は大綱、法案、成立、施行という順で確定しますので、大綱の段階の情報を確定事項として扱わないよう注意が必要です。
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