研修内容の記憶を促す順序:系列位置効果の仕組みと情報の配置手順

こんにちは。ゆうせいです。

研修や説明会において、参加者がすべての内容を均等に記憶することは稀です。人間は、情報が提示される順番によって、記憶への残りやすさが変化する性質を持っています。本稿では、心理学および認知科学における系列位置効果について解説します。

系列位置効果とは

系列位置効果とは、複数の情報が連続して提示された際、提示された順番によって記憶の定着率が異なる現象を指します。系列位置効果は主に2つの要素で構成されています。最初に提示された情報が記憶に残りやすい現象を初頭効果と呼び、最後に提示された情報が記憶に残りやすい現象を親近効果と呼びます。最初と最後の情報に挟まれた中盤の情報は、最も記憶から抜け落ちやすい傾向を示します。

高校生の英単語テストを例に説明します。生徒が10個の新しい英単語を順番に暗記する場面を想定します。1番目や2番目に見た英単語は、頭の中で反復する余裕があるため、長期的な記憶に移行しやすくなります。この現象が初頭効果です。一方、9番目や10番目に見た英単語は、見た直後で一時的な記憶に残っているため、テストの際にすぐに思い出すことができます。この現象が親近効果です。しかし、5番目や6番目の英単語は、前の単語を記憶する作業と後の単語を記憶する作業の両方から干渉を受け、テストの際に最も忘れられやすい傾向を示します。情報が提示される順序が記憶の定着度合いを決定づける状態が、系列位置効果に該当します。

提示順序がもたらす影響

系列位置効果の性質を考慮せずに情報を配置した場合の不利益と、性質を意図的に活用した場合の利点を列挙します。

情報の配置を考慮しない場合の不利益

  • 研修で最も伝えたい中核の概念を中盤に説明した場合、受講者の記憶に定着せず、研修の目的が達成されない
  • 研修の冒頭で関連性の低い事務連絡や長時間の雑談を行うと、受講者の記憶の容量が重要度の低い情報で占められてしまう
  • 研修の最後に新しい情報を次々と詰め込むと、直前の情報が記憶から押し出されてしまい、全体の内容が整理されないまま終了する

情報の配置を考慮する場合の利点

  • 重要なメッセージを冒頭と終盤の2回に分けて配置することで、初頭効果と親近効果の両方を働かせ、受講者の記憶への定着率を向上させられる
  • 補足データや詳細な作業手順を中盤に配置することで、重要な概念の記憶を妨げることなく詳細な情報を提供できる
  • 研修の最後に全体の要約を提示することで、受講者が持ち帰るべき知識を明確な状態で保持できる

記憶の定着を促す学習のステップ

系列位置効果の仕組みを応用し、受講者の学習を支援するためには、以下の手順で情報の順序を調整する手法が有効です。

1. 伝達する情報を分類する

研修で扱うすべての内容をリストアップし、必ず記憶してほしい中核の情報と、その場で理解できればよい補助的な情報に分けます。

2. 中核の情報を冒頭に配置する

研修を開始した直後の時間に、分類した中核の情報を提示します。初頭効果を働かせるため、不要な前置きを省いて本題に入ります。

3. 補助的な情報を中盤に配置する

中核の情報を補強する具体例やデータ、詳細な手順などは研修の中盤に配置します。中盤の内容は記憶から抜けやすいため、受講者の手元に残る配布資料に記載して補完します。

4. 終盤で中核の情報を反復する

研修の終了直前に、冒頭で提示した中核の情報を再度提示します。親近効果を働かせることで、受講者が最も重要な知識を記憶にとどめた状態で研修を終える環境を整えます。

情報の提示順序を調整することで、受講者の記憶の仕組みに沿った学習の支援が可能になります。

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
海外放浪の末、2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。