他者や物の存在が学習に与える影響:単純存在効果の仕組みと環境設定
こんにちは。ゆうせいです。
研修や業務の際、周囲に他の人がいる環境や、机の上に通信機器が置かれている環境において、参加者の集中力や作業の進み具合が変化する現象が見受けられます。人間は、対象と直接的な関わりを持っていなくても、対象が視界に入る範囲にただ存在するだけで、心理的な状態や認知機能に影響を受ける性質を備えています。本稿では、心理学における単純存在効果について解説します。
単純存在効果とは何か
単純存在効果とは、他者あるいは特定の物品が物理的に同じ空間に存在するという条件のみで、個人の行動や情報処理の能力に変化が生じる心理的な仕組みを指します。
高校生の自習室での学習を例に説明します。生徒が一人きりの部屋で計算問題の反復練習を行う場合と、会話を全く交わさない別の生徒が同じ部屋に座っている場合を比較します。単純な計算問題のように生徒がすでに習熟している作業においては、他の生徒が存在する環境の方が作業の速度が向上します。一方で、初めて解く難解な応用問題に取り組む場面では、他の生徒が存在する環境において緊張が生じ、一人きりの部屋で解くよりも解答の誤りが増加する傾向を示します。
また、物品の存在に関する例として、机の上に電源を切ったスマートフォンを置いた状態で学習を行う場面を想定します。スマートフォンを鞄の中にしまっている生徒と比較して、机の上に置いている生徒は、スマートフォンを全く操作していなくても集中力が低下し、学習内容の記憶の定着率が低下します。他者や物がそこにあるという状態そのものが、人間の注意力を引きつけ、認知の処理に影響を与える状態が単純存在効果に該当します。
単純存在効果がもたらす影響
他者や物品の存在が人間の認知機能に与える影響を踏まえ、単純存在効果が発生した場合の利点と不利益を列挙します。
単純存在効果による不利益
- 初めて学ぶ複雑な業務手順や高度な思考を要する課題において、他の受講者や講師が近くにいることで緊張が生じ、参加者の学習効率が低下する
- 机の上に研修に関係のない資料や通信機器が置かれていることで、参加者の注意力が無意識に分散され、説明を聞き漏らす原因となる
- 監視の意図がない他者の存在であっても、参加者が他者の視線を気にしてしまい、新しいアイデアを生み出す思考が妨げられる
単純存在効果を活用する利点
- データ入力や資料の封入といった単調で習熟した作業において、他の参加者と同じ空間で作業を行うことで、全体の処理速度を向上させられる
- 学習に対する意欲が低下している受講者を、他の受講者が熱心に学習している空間に配置することで、学習行動を促すことができる
- 課題の難易度に応じて、一人で集中する環境と複数人が存在する環境を使い分けることで、研修全体の進行速度を調整できる
環境の配置を調整し学習を支援するステップ
他者や物品の存在が参加者の注意力に与える影響を応用し、適切な学習環境を構築するためには、以下の手順で空間の配置を調整する手法が有効です。
1. 学習に必要な物品のみを選別する
研修を開始する前に、参加者の机の上から通信機器や研修に関係のない書籍などの物品をすべて鞄の中や別の部屋に移動させ、視界に入らない状態を作ります。
2. 課題の難易度を評価する
参加者に取り組ませる課題が、単純な反復作業であるか、深く思考して習得する必要がある新しい概念であるかを分類します。
3. 課題の性質に合わせて空間を分割する
深く思考する必要がある新しい概念を学ぶ時間は、参加者の座席の間隔を広げる、あるいは個別の空間を設けて、他者の存在による影響を軽減します。
4. 習熟した作業に他者の存在を利用する
研修の後半に行う復習や、すでに手順を理解している作業の反復練習においては、参加者を一つの机に集め、他者の存在による作業速度の向上を促します。
視界に入る他者や物品を管理することで、参加者の認知機能の低下を防ぎ、学習の目的に合致した環境の構築が可能になります。
セイ・コンサルティング・グループでは新人エンジニア研修のアシスタント講師を募集しています。
投稿者プロフィール

- 代表取締役
-
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
海外放浪の末、2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
この記事に間違い等ありましたらぜひお知らせください。
学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。

