感情状態が判断に与える影響:感情移入ギャップの仕組みと研修への応用

こんにちは。ゆうせいです。

研修の計画を立てる際、受講者が常に冷静で意欲的な状態にあると想定してしまい、実際の研修において計画通りに進まない状況を見受けることがあります。人間は、現在の自分の感情状態を基準にして、異なる感情状態にある自分や他者の行動を予測してしまう傾向を持っています。本稿では、行動経済学における感情移入ギャップについて解説します。

感情移入ギャップとは何か

感情移入ギャップ(ホット・コールド・エンパシー・ギャップ)とは、人間が冷静な状態(コールド状態)にあるときには、感情が高ぶっている状態(ホット状態)の自分の行動を正確に予測できず、逆にホット状態にあるときには、コールド状態の自分の行動を正確に予測できない認知バイアスを指します。

高校生のテスト勉強を例に説明します。ある生徒が、休日の昼間に十分な睡眠をとり、お腹を満たした状態(コールド状態)で、今夜は深夜2時まで起きて数学の問題集を終わらせるという計画を立てたとします。昼間の時点では、深夜の眠気や疲労という感覚を正確に想像できていません。しかし、実際に深夜1時を迎えると、強い眠気(ホット状態)に襲われ、問題集を終わらせる計画を放棄して眠ってしまいます。現在の満たされた感情状態を基準にして、未来の異なる感情状態に直面した際の自分の行動を見誤る状態が、感情移入ギャップに該当します。

感情状態の違いがもたらす影響

現在の感情状態を基準にして計画や指導を行った場合に生じる不利益と、感情状態の違いをあらかじめ考慮して対策を講じる利点を列挙します。

感情移入ギャップによる不利益

  • 講師が冷静な状態で設定した学習課題が、疲労を抱えながら受講している参加者にとって負担が大きすぎ、課題を完了できない
  • 研修の直前まで意欲的であった受講者が、実際の業務に近い緊張感のある場面に直面した途端、萎縮して行動できなくなる
  • 怒りや不安といった感情が高ぶっている状態で重要な意思決定を行うと、後で冷静になった際に後悔する結果を招く

感情移入ギャップを考慮する利点

  • 受講者が疲労や緊張を感じやすい時間帯を予測し、該当する時間帯の課題の難易度を下げることで、学習の停滞を防ぐことができる
  • 将来起こりうる感情の変化を前提として余裕のあるスケジュールを組むことで、計画の破綻を回避できる
  • 感情が高ぶっている状態での即決を避ける仕組みを設けることで、参加者の冷静な判断を促すことができる

感情の変化を見越して学習を支援するステップ

感情移入ギャップの仕組みを応用し、受講者の状態の変化に適応した研修環境を構築するためには、以下の手順で計画を調整する手法が有効です。

1. 感情が変化する要因を特定する

研修の進行において、受講者に疲労、緊張、退屈といった感情の変化を引き起こす要素を書き出します。長時間の講義や複雑な計算課題などを該当要素として挙げます。

2. 異なる状態を想定して計画を見直す

冷静な状態で立てた研修計画について、疲労を感じている状態の受講者が計画通りに実行できるかという視点で再確認します。

3. 行動の基準を事前に設定する

課題に取り組む過程で受講者が行き詰まった際、感情的な判断で課題を放棄するのを防ぐため、あらかじめ講師に相談する手順や休憩をとる基準を定めておきます。

4. 決断を保留する仕組みを導入する

グループワークなどで意見が対立し、参加者の感情が高ぶった場合には、結論を出す時間を翌日に持ち越すなど、冷却期間を置く手順を研修の進行に組み込みます。

現在の状態とは異なる感情状態を予測することは困難を伴います。まずは、次回の研修計画を立てる際、最も疲労が蓄積する時間帯の課題の分量をあらかじめ減らしておく手順から進めてください。感情の変化を前提とした環境を設計することで、参加者の学習を安定して支援する仕組みの構築が可能になります。

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
海外放浪の末、2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。