マルコフ決定過程とは?強化学習の基礎となる枠組みを初心者向けに解説
こんにちは。ゆうせいです。
意思決定を伴うシステムや人工知能の制御において、現在の状況を把握し、将来を見据えて適切な行動を選択する枠組みが求められます。
強化学習と呼ばれる機械学習分野では、試行錯誤を通じて目的を達成する手順を定式化するために、数学的なモデルが用いられます。本記事では、その基盤となるモデルである「マルコフ決定過程」について、構成要素や特徴を解説します。
マルコフ決定過程の概要
マルコフ決定過程とは、確率的に変化する環境の中で、意思決定者が長期的な成果を最大化するための行動基準を導出する枠組みです。英語表記の略称からMDPとも呼ばれます。
高校生の日常で例えると、「定期試験に向けた日々の時間割決め」に似ています。放課後の「現在の学力や疲労度」という状況に対し、「予習をする」「早く寝る」などの行動を選びます。翌日の状況は選んだ行動によって確率的に変わり、最終的な試験の点数という成果が得られます。このように、状況の確認、行動の選択、結果の獲得を一連の流れとして整理した仕組みがマルコフ決定過程です。
モデルの構成要素と数式
マルコフ決定過程は、主に5つの要素で定義されます。
- 状態(S):意思決定者が置かれている状況の集合です。
- 行動(A):各状態で選択可能な選択肢の集合です。
- 状態遷移確率(P):特定の状態で特定の行動を取った際、次の状態へ移る確率です。
- 報酬関数(R):行動の結果として環境から与えられる評価値です。
- 割引率(γ):将来得られる報酬を現在の価値に換算するための割合であり、0以上1以下の実数をとります。
マルコフ決定過程の根底には「マルコフ性」という前提が存在します。マルコフ性とは、次の状態や得られる報酬が「過去のすべての履歴」ではなく「現在の状態と直前の行動」のみに依存するという性質です。
状態遷移確率を行列形式で表現する場合、現在の状態から次の状態へと遷移する確率は以下のように表されます。
状態遷移確率行列
また、将来にわたって得られる報酬の合計(期待値)を最大化するため、価値関数を定義します。ある状態 s における価値 V(s) は、現在の報酬と割引率を掛け合わせた将来の価値の和として表され、以下のベルマン方程式に従います。
状態価値関数のベルマン方程式
式中の π(a|s) は、状態 s において行動 a を選択する確率を示す方策です。
マルコフ決定過程のメリット
- 意思決定の問題を状態、行動、確率、報酬という明確な要素に分解できるため、数学的および統計的な解析が可能です。
- 将来の不確実な影響を割引率によって現在の計算に取り込めるため、目先の利益だけでなく長期的な視点を含めた最適な行動方針を導けます。
マルコフ決定過程のデメリット
- 状態や行動の候補数が増加すると、組み合わせの総数が膨大になり、計算に必要な時間やメモリが急激に増大します。
- すべての状況が現在の状態のみに依存するというマルコフ性を前提としているため、過去の累積情報が強く影響する現実の問題をそのまま適用すると精度が低下する場合があります。
まとめ
マルコフ決定過程は、不確実な状況下における連続的な意思決定を定式化し、長期的な成果を最大化するための数学的基盤です。この枠組みを理解することが、強化学習のアルゴリズムを学ぶための土台となります。
今後の学習ステップとして、まずはマス目を移動してゴールを目指す簡単な格子状の迷路問題を想定してください。次に、各マス目を「状態」、上下左右の移動を「行動」、ゴール到着時に得られる点数を「報酬」として紙の上に整理します。その上で、ベルマン方程式を用いて各マスの価値がどのように伝播していくかを手作業で追跡していくことで、マルコフ決定過程の計算構造に対する理解が深まります。
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投稿者プロフィール

- 代表取締役
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セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
海外放浪の末、2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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学生時代は趣味と実益を兼ねてリゾートバイトにいそしむ。長野県白馬村に始まり、志賀高原でのスキーインストラクター、沖縄石垣島、北海道トマム。高じてオーストラリアのゴールドコーストでツアーガイドなど。現在は野菜作りにはまっている。

