天気予報とマルコフ過程:過去の全天候データを考慮した予測モデルの仕組みと課題
こんにちは。ゆうせいです。
明日の天気がどうなるか予測する際、今日の天気だけを見るか、それとも過去の天気をすべて遡って見るかで、予測を計算する仕組みが変わります。今回は、明日の天気を確率で予測する数学の手法と、過去の天気をすべて考慮に入れた場合に生じる変化について解説します。
確率過程とマルコフ過程の基本
天気のように時間とともに変化していく現象を扱う数学の仕組みを、確率過程と呼びます。確率過程のなかで、明日の状態が現在の状態のみによって決まり、過去の履歴に影響されないモデルをマルコフ過程と呼びます。
具体的な例として、すごろくを想像してください。次にどのマスに進むかは、今いるマスと次に出るサイコロの目だけで決まります。3回前にどのマスにいたかは、次の移動に影響しません。マルコフ過程もすごろくと同じように、過去の履歴を引き継がず、現在の状態のみから未来の状態を計算します。状態が別の状態へ移り変わることを、専門用語で状態遷移と呼びます。
過去の天気をすべて考慮に入れた場合の変化
今日の天気だけでなく、昨日、一昨日、さらに1ヶ月前の天気もすべて踏まえて明日の天気を予測する場合、計算の手法が変化します。過去の履歴を計算に組み込むため、単純なマルコフ過程ではなくなり、高階マルコフモデルと呼ばれるより複雑な計算モデルに移行します。
トランプのババ抜きを例に挙げます。場に出たカードをすべて記憶していれば、次に相手が引くカードの確率をより正確に推測できます。過去の天気をすべて考慮する高階マルコフモデルも、ババ抜きにおける記憶と同じように、過去の全記録を今後の状態遷移の計算に組み込みます。
高階マルコフモデルのメリット
過去の記録をすべて考慮する手法の長所は以下の通りです。
- 長期的な季節の移り変わりや、数日周期で繰り返す気圧配置の変化を計算に含めることができます。
- 単純な確率の偏りだけでなく、特定の条件が連続したあとにのみ発生するまれな気象現象の予測精度が向上する見込みがあります。
高階マルコフモデルのデメリット
過去の記録を増やすことには、システム上の課題も存在します。
- 考慮すべき過去の日数が増えるほど、計算量が指数関数的に増加し、一般的なコンピューターでは処理が追いつかなくなります。
- 過去のすべてのパターンを網羅するためには多くの観測データが必要となり、過去に観測データが存在しない未知の天候パターンに対しては予測を立てることが困難になります。
行列計算における変化
1日前の天気だけを考慮する単純なマルコフ過程では、状態遷移の確率は次のような行列を用いて表現されます。晴れや雨といった状態が別の状態へ変わる確率を、行列Pとして表します。
しかし、n日前のすべての天気を考慮する場合、行列の次元は過去の日数に応じて巨大化します。変数nが大きくなるほど、行列の縦横の要素数が増加し、計算に必要なメモリと時間を多く消費します。
まとめ
過去の天気をすべて考慮する予測モデルは、詳細な推測を可能にする反面、計算にかかる負荷が大きくなります。現在の気象予測では、こうした確率による推測だけでなく、スーパーコンピューターを用いて物理方程式を解く数値予報を組み合わせて運用されています。
天候予測や確率過程について理解を深めるためには、以下の順番で学習を進めることをお勧めします。
- 確率と統計の基礎を学び、条件付き確率の計算方法を身につける
- 線形代数を学習し、行列を用いた状態遷移の計算手法を理解する
- 確率過程の入門書を読み、マルコフ過程の基本定理を習得する
- 実際の気象データを入手し、簡単な推移確率を算出するプログラムを作成する
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