キャリアデザインとは?定義からIT業界における考え方まで詳しく解説
人生100年時代に向けて、自社の従業員にももう少し自主的にキャリアデザインを描けるようになってほしいけれど、何から始めればよいかよくわからず困っている人はいませんか?
この記事では、キャリアデザインの意味からIT業界における考え方まで詳しく解説します。
キャリアデザインとは?
キャリアデザインとは自分の職業人生を自らの手で設計・デザインすることを指します。
具体的には自分が職業を通してなりたい姿を実現するために、プライベートも含めた人生全般を設計・デザインするのです。
近年キャリアデザインを自分で行う力を育成しようと、経済産業省では次世代を担う人材育成の中で産学協働でキャリアデザインに取り組んでいます。
例として、愛知大学キャリアセンターでは、2019年度より「低年次キャリアデザインプログラム~CAREER FIELD~」と題して、1・2年生を対象とした産官学が協働したプログラムを開発しました。
これにより愛知大学の低年次の大学生は社会人基礎力を養成し、望ましい職業観を作りながらキャリアデザインに取り組むことができるのです。
また厚生労働省では職業能力の開発や向上をサポートする国家資格、キャリアコンサルタントの資格取得を推進し、1人1人がよりよい職業人生を選択できるよう支援する体制を整えようとしています。
参考:厚生労働省「キャリアコンサルティング・キャリアコンサルタント」
参考:愛知大学「愛知大学低年次キャリアデザインプログラム~CAREER FIELD~とは」
キャリアデザインと混同されやすい用語
キャリアデザインと混同されやすい用語には、次のようなものがあります。
用語 | 意味 |
キャリアデザイン | ・自分の職業人生を自らの手で設計、デザインすること |
キャリアアップ | ・より高い専門的知識やスキルを身に着けて経歴を高めること |
キャリアプラン | ・仕事や働き方の将来像を実現するための具体的な行動計画 |
キャリアパス | ・企業の中で目標とする職務や職位にたどりつくための道筋のこと |
キャリアアンカー | ・キャリア形成におけるゆずれない価値観のこと |
キャリア開発 | ・企業が経営理念や人事戦略などに基づいて従業員の育成を中長期的な計画に基づいて行うこと |
キャリアデザインはプライベートも含めた職業人としての生き方を設計することなので、仕事や働き方について主に表現している他の言葉とは意味合いが異なると言えるでしょう。
キャリアデザインはIT業界においてなぜ必要とされる考え方なのか
キャリアデザインはIT業界においてなぜ必要とされる考え方と言われるのでしょうか。
3つの観点からご紹介します。
人生100年時代となりCX(キャリアトランスフォーメーション)が求められるようになったため
人生100年時代とは、平均寿命や健康寿命が延び100年間人生が続くのが当たり前になることを表した言葉です。
ロンドン・ビジネス・スクール教授のリンダ・グラットンとアンドリュー・スコットが「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略」という本の中で提唱しました。
これまでIT業界で働くエンジニアの人たちは人生100年時代を踏まえて働く必要はなかったため、次のような段階を経る「ワンサイクル・キャリア」が普通でした。
段階 | 概要 |
キャリア初期 | ・さまざまな経験を重ねて自分の可能性を広げる時期 |
キャリア中期 | ・経験を踏まえて自分の専門性を定め、キャリアを深める時期 |
キャリア終末期 | ・生涯のキャリアを終える時期 |
ワンサイクル・キャリアではキャリアの前半はキャリアを広げ、キャリアの後半ではキャリアを深めるという特徴があります。
しかし人生100年時代においては、「キャリアを広げる」「キャリアを深める」を繰り返すマルチサイクルキャリアを選ぶ必要が出てきます。
マルチサイクルキャリアにおいては人生のどの時点でどのようにキャリアを広げ、深めるかを自分で考える=キャリアデザインをする必要があるため、組織に依存したキャリア形成から自律してキャリア形成をするCX(キャリア・トランスフォーメーション)の考え方の重要性が高まるのです。
参考:リクルートワークス研究所「エンジニアのCX(キャリア・トランスフォーメーション)“日本のエンジニア”はどこへ行く?」
IT業界で求められるスキルの変化が早いため
2023年に独立行政法人情報処理推進機構が発表した「DX白書2023」において、IT企業に対しIT人材へ今後身に着けさせるべき重要度の高いスキルについてたずねた所、次のような結果が出ました。
スキルの種類 | 2020年度 | 2021年度 |
先端技術領域のスキル(AI/人工知能、 IoT、データサイエンス等) | 70.9% | 61.9% |
人、プロジェクトやタスクのマネジメントスキル | 76.3% | 69.2% |
業務関連のコミュニケーションスキル(ライティング、ファシリテーション、プレゼンテーション等) | 60.9% | 61.8% |
関連の業務知識(商品やサービスの特性、差別化、競合、プロセスやツール、規制その他) | 52.0% | 47.4% |
デザイン思考なども活用したビジネス企画スキル | 30.8% | 26.9% |
数学や芸術といったSTEAM領域※や英語 | 10.5% | 10.3% |
その他 | 1.4% | 1.6% |
2020年度と2021年度を比較すると、多い場合は10%~15%も数値が変化しているため、IT業界で求められるスキルの変化の速さがうかがえる結果となっているのです。
このことからIT業界では自分でキャリアデザインを行い、変化の速さに対応できる人材が重宝されると言えます。
働き方改革で多様な働き方が認められるようになったため
2019年3月から開始された働き方改革では、働く人の置かれた個々の事情に応じ多様な働き方が選択できるようになる社会を実現するためにさまざまな取り組みが行われていますが、IT業界も例外ではありません。
厚生労働省が運営する「IT業界の働き方・休み方の推進」というポータルサイトではIT業界の働き方改革のヒントになる情報がたくさん掲載されています。
例えば情報通信業の「働き方改革実践の手引き」には、業務遂行において「社員個々人の自律的な働き方の実現」がうたわれており、これを実現するには従業員一人一人が自分の手でキャリアデザインを行えるようになる必要があるでしょう。
IT企業が従業員のキャリアデザインをサポートするメリット
IT企業が従業員のキャリアデザインをサポートすると次のようなメリットがあります。
- 離職率が低下する
- モチベーションが上がる
- 従業員エンゲージメントが向上する
- 働き方改革のように働き方に大きな変化が起こっても対応しやすくなる
- 多様で優秀な人材を採用しやすくなる
- 生産性が向上する
- 従業員の考えるキャリアデザインを人事施策に活かせる
変化が速いのがIT業界の特徴であるため、キャリアデザインもそれに応じて定期的な見直しが必要となりますが、時間をかけても得られるメリットの方が大きいでしょう。
キャリアデザインに使えるフレームワークとは?
キャリアデザインに使えるフレームワークを3つご紹介します。
Will・Can・Must
Will・Can・MustのフレームワークとはWill=「やりたいこと」、Can=「できること」、Must=「自分の役割」をそれぞれ言語化し、それぞれの3つの輪が重なる部分を軸にすることで明確なキャリアデザインができるというものです。
Will・Can・Mustのフレームワークを用いたキャリアデザインは次のようなタイミングで行うとより効果的です。
- 昇格して職務内容や求められるスキルが変化した時
- キャリアの方向性を再考したくなった時
- 定期的なキャリアの見直しのタイミング
- 新しいプロジェクトが開始する時
IT業界では新たなプロジェクトへの参加はよくあることですが、このタイミングでWill・Can・Mustのフレームワークを用いたキャリアデザインをしておくとプロジェクト内における自分の役割やどのように貢献できるかが明確になるでしょう。
SWOT分析
SWOT分析とは強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4つの視点で自分を評価、分析する手法のことです。
本来企業におけるWebマーケティングでよく使われますが、キャリアデザインにも流用できます。
SWOT分析は次のような手順で行います。
- SWOT分析を行う目的と目標を明確にする
- 外部環境(機会と脅威)を分析する
- 内部環境(強みと弱み)を分析する
- クロスSWOT分析を行う
クロスSWOT分析とは、4つの視点を以下のように組み合わせて分析することです。
組み合わせ | 概要 |
機会×強み | ・機会があった時自分の強みを活かすにはどうするか考える |
機会×弱み | ・弱みを補強して機会をつかむにはどうするか考える |
脅威×強み | ・脅威にさらされた時強みを活かしてチャンスに変えるにはどうするか考える |
脅威×弱み | ・弱みを理解して脅威による影響を避けるにはどうするか考える |
クロスSWOT分析をすると、自分の望むキャリアを実現するための方法を探ることができます。
マンダラート
マンダラートとは3×3マスの正方形にテーマを書き込むことでアイデアを広げる発想法です。
日本では大谷翔平選手が高校時代に作成したということで有名になりました。
マンダラートの作成手順は以下の通りです。
- 3×3の9マスの中央にメインテーマを書き込む
- 周囲の8マスに連想する語句を書き込む
- 連想する語句を中心とした新しいマンダラートを作る
キャリアデザインではメインテーマを大目標とし、周囲の8マスに中目標を設定するといった形で目標を細分化すると、モチベーションが維持でき挫折しにくくなるでしょう。
IT業界の新入社員にキャリアデザイン研修をお考えの方はセイ・コンサルティング・グループにご相談ください
IT業界の新入社員向けにキャリアデザイン研修をお考えの方はセイ・コンサルティング・グループへご相談ください。
セイ・コンサルティング・グループのキャリアデザイン研修では厚生労働省が推進するキャリアコンサルタントの有資格者が講師を担当し、初心者にも優しくIT業界におけるキャリアの概要を知る所から始めます。
新入社員が自分や仕事について落ち着いて深く考え、将来のキャリアデザインを自分で描けるようにしたい方は、次のページもごらんください。
4.5 若年層向けキャリアデザイン研修 - セイコンサルティンググループ (saycon.co.jp)
まとめ
キャリアデザインとは自分の職業人生を自らの手で設計・デザインすることで、変化の激しいIT業界においてはこれからより重要視される考え方だと言えるでしょう。
この記事も参考にして、ぜひ自らの手でキャリアを切り開ける自律的な人材の育成に取り組んでみてください。