問題解決力とは?定義から高める方法まで詳しく解説

変化の激しいIT業界で自社が今後も生き残っていくためには従業員一人一人が問題解決力を高めてほしいけれど、何から始めてよいかわからず困っている人はいませんか?

この記事では問題解決力の定義から高める方法まで詳しく解説します。

問題解決力とは?

問題解決力とは問題が発生した際にその本質を冷静に分析しながら見極め、素早く解決策を考えて実行する力のことです。

ビジネスの場でよく使われる言葉ですが、日常生活においても役立つスキルの1つです。

混同されやすい言葉に「課題解決力」がありますが、問題解決力と課題解決力には次のような違いがあります。

項目概要
問題解決力・現在の状態にネガティブな影響を及ぼす事柄に対処してその影響をなくす力
課題解決力・ポジティブに成長するために処理しなければならない事柄に対処する力

企業はネガティブなことに対処しポジティブに前進する必要があるため、従業員は問題解決力と課題解決力の両方を併せ持つのが望ましいとわかります。

問題解決力はIT業界でなぜ必要とされるのか

IT技術を用いてさまざまな問題解決に取り組む男性従業員

問題解決力はIT業界でなぜ必要とされるのでしょうか。

3つご紹介します。

人手不足

2023年に独立行政法人情報処理推進機構が発表した「DX白書2023」において、375社を対象にDXを推進する人材の質の確保ができているかをたずねた所、次のような結果でした。

回答内容割合
過不足はない6.1%
やや不足している34.4%
大幅に不足している51.7%
わからない7.7%

DXを推進するには次々に起こる問題を解決しながら進める必要がありますが、「やや不足している」「大幅に不足している」と回答した企業を合わせると86.1%だったのです。

DXを推進するためIT業界で働く問題解決力の高い人材へのニーズは多いものの、供給が追い付いていないのが現状だとわかります。

参考:独立行政法人情報処理推進機構「DX白書2023」

VUCA

VUCAとはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った言葉で、予測が難しく変化が激しい社会や経済情勢を表す言葉です。

VUCAの時代には、コロナ禍のように予想もしなかった問題が次々と発生しやすいため、それを早急に解決できる人材が求められるのです。

組織力が向上し成果が上がりやすくなる

IT業界において問題解決力を身に着けた人が多い組織には、次のようなメリットがあります。

  • 指示を待つのではなく、自律的に提案や行動ができる人材が育つ
  • 客観的な事実を基にした適切なコミュニケーションが取れる
  • 仕事に優先順位をつけて取り組むため生産性が上がる
  • トラブルが発生した時の対応力が高まる
  • モチベーションが向上し進んで仕事について学ぶようになる

前の項目でもご紹介した通りVUCAの時代には経験則が通用しにくいからこそ、問題解決力を身に着けた組織は生産性が高くなり、成果が上がりやすくなるのです。

問題解決の進め方

問題解決までの段階

問題が発生すると理想の状態と現実の状態との間にギャップが生じますが、理想と現状が見えているかどうかによって次の4つに分類することができます。

 理想
顕在化している(見えている)潜在化している(見えていない)
現状顕在化している(見えている)発生型の問題設定型の問題
潜在化している(見えていない)暗黙型の問題創造型の問題

例えば現状は見えていないけれど理想は見えている場合は「暗黙型の問題」に分類されるのです。

この4つの分類に応じた問題解決の進め方をそれぞれご紹介します。

発生型

4つの分類の中でも発生型の問題は、発生の原因によって次の3つにわけられます。

項目概要
差の問題理想との差を抱えている状態・売上金額の目標達成まであと20万円足りない
障がい発生型の問題・これまで順調に進んでいたものが外的要因で水準が悪化して理想とのギャップが発生した状態・コロナ禍で営業活動がままならなくなり、会社の業績が下がった
現状復帰型の問題・これまで順調に進んでいたものが内的要因で水準が悪化して理想とのギャップが発生した状態・順調に開発が進んでいたシステムが原因不明のトラブルを起こした

それぞれの問題解決の進め方は次の通りです。

差の問題

差の問題の場合、次のような手順で問題解決をしていきます。

  1. 問題の選定
  2. 事実確認
  3. 原因の追究
  4. 対策の立案
  5. 対策の実施
  6. 結果の確認

差の問題は本質的な原因がわかれば8割解決できるとされているため、原因の追究に力を注ぐようにしましょう。

障がい発生型の問題

障がい発生型の問題の場合、次のような手順で問題解決をします。

  1. 目的の確認
  2. 代替案の抽出
  3. 代替案の評価
  4. 手段の決定
  5. 手段の実施
  6. 結果の確認

原因を考えるのは後回しにし、素早く応急措置となる代替案を決めて行動に移すことが重要です。

現状復帰型の問題

現状復帰型の問題の場合、次のような手順で問題解決をします。

  1. 問題の特定
  2. 過去の実績との差異を分析
  3. 原因の追究
  4. 対策の立案
  5. 対策の実施
  6. 結果の確認

優先順位が高いのが現状復帰をすることなので、応急処置と過去の実績との差異を分析して原因を追究するのを並行して行うのが大切です。

設定型

設定型の問題は、問題設定の方法によって次の2つに分類できます。

項目概要
ストレッチ目標設定型の問題・目標水準を高めることで問題設定する場合・サービス作成にかかるコストを半分にしたい
期間短縮型の問題・スケジュールを早めることで問題設定する場合・開発期間を3か月減らしたい

設定型の場合、次のような手順で問題解決を進めます。

  1. 問題の列挙
  2. 問題の選定
  3. 情報収集
  4. 重要要因の選定
  5. 対策の立案
  6. 対策の実施
  7. 結果の確認

不確実な要素を整理する「問題の列挙」「問題の選定」に力を注ぎ、取り組む問題を明らかにしていくのが大切です。

暗黙型

暗黙型の問題の場合、その原因の多くは組織の仕組みや風土、技術や能力の不足にあります。

問題の発見自体が困難ですが、もし発見したらまずは組織の現状を振り返ることが解決への第一歩となるでしょう。

組織やチームの問題を洗いざらい吐き出す気持ちで取り組むのが大切です。

創造型

創造型の問題の場合、理想の姿も現状も漠然として見えていないため取り組むことへの難易度が高くなります。

未来に起こりうる問題を想定して取り掛かる必要があるので、まずは従業員の問題意識を高めることから始めてみましょう。

問題解決力を鍛える方法

問題解決力を鍛えるのに必要なロジカルシンキング

従業員の問題解決力を鍛えるには、次のような方法があります。

  • 新入社員や管理職など階層別に適した問題解決力を身に着けてもらうため研修をする
  • 会社のイントラネット内に資料を掲載するなど、従業員が自主的に学ぶための環境を整える
  • ロジカルシンキングを身に着けてもらう
  • なぜ問題が起きたのかを考える癖をつけてもらう
  • 思い込みや思考のバイアスを取り除く癖をつけてもらう

会社で取り組みをしたとしても、従業員の問題解決力は急に向上するわけではないためある程度の時間がかかるのは覚悟をしておきましょう。

また一般社団法人問題解決力検定協会では「問題解決力検定試験」を実施し、問題解決力の向上をサポートしています。

資格取得を推奨することで従業員個人の問題解決力を客観的に把握し、どのように改善していけばよいかがわかりやすくなるでしょう。

参考:問題解決力検定公式ホームページ

問題解決力を高めることで成果を上げた好事例

愛知県豊田市にあるトヨタ自動車本社

愛知県豊田市に本社があるトヨタ自動車株式会社では、従業員の問題解決力を高めることで成果を上げやすい組織作りに成功しました。

トヨタ自動車株式会社には、世界でも広く知られる考え方である「トヨタ流カイゼン」がありますが、この考え方を基にして生まれたのが「トヨタ流問題解決」です。

トヨタ自動車株式会社では問題解決を「『目指す姿』と『現状の姿』とのギャップを埋めること」と定義づけ、問題解決をするには基本となる手順に沿って効果的にPDCAサイクルを回し続ける必要があるとしました。

また仕事の基本はPDCAをまわすこと、問題解決はすべての基本と位置づけ、全ての従業員が問題解決から目をそらさないようにしているのも特徴的だと言えるでしょう。

「トヨタ流問題解決」では問題の大きさや性質を問わず問題解決を可能にするトヨタ独自の手法、「問題解決の8ステップ」を踏まえて問題解決に取り組みます。

段階概要PDCAサイクルの段階
STEP1テーマの選定と問題の明確化P
STEP2現状把握(問題点の特定)P
STEP3目標設定P
STEP4要因解析P
STEP5対策立案P
STEP6対策実行D
STEP7結果と取り組み過程の評価C
STEP8標準化と維持管理A

STEPの中でも特にPの計画段階に位置づけられるSTEP1~STEP5までをしっかり行うことでD、C、Aにかかる工数を削減できるとしています。

「トヨタ流問題解決」は成果が上がっているのはもちろんですが、問題の解決手法を一元化して従業員に理解しやすい形とし、PDCAサイクルと紐づけて実行できるようにしたので世界中の企業に取り入れられ、実践されるようになったのではないでしょうか。

参考:古谷健夫「トヨタの問題解決~問題解決の実践で、よりよい社会の実現を~」

IT業界ならではの問題を解決できる従業員の育成はセイ・コンサルティング・グループにご相談ください

セイ・コンサルティング・グループでは同じ問題解決でも「モノの問題」と「人や組織の問題」では扱い方が異なると考えているため、問題解決力研修においてはIT業界で多い「人や組織の問題」を主に扱うこととしています。

問題解決力研修を受講していただくことで、問題を冷静に分析して対策を打ち出すだけではなく、取り組みが難しい「暗黙型」や「創造型」の問題に気づき起こる前に未然に防止できるようになるでしょう。

問題解決力に対する曖昧なイメージを払拭し、IT業界で長く役立つスキルを従業員に身につけさせたい方は次のページもごらんください。

3.1 信頼されるSEに求められる問題解決力研修 - セイコンサルティンググループ (saycon.co.jp)

まとめ

問題解決力とは問題が発生した際にその本質を冷静に分析しながら見極め、素早く解決策を考えて実行する力のことで、従業員に広く身に着けてもらうことで成果の上がりやすい組織作りができるでしょう。

この記事も参考にして、ぜひ従業員の問題解決力が向上するよう取り組みを続けてみてください。