システムシンキングとは?意味からIT業界の問題解決に使うフレームワークまで詳しく解説
IT業界が抱えるクライアントは業種が多岐に渡るため、自社の人材には複数の物事を広い視野で捉えて問題解決ができるようになってほしいけれど、どんな研修をすればそのような人材が育つのかわからず頭を抱えている人はいませんか?
この記事ではそんな人に知ってほしい、システムシンキングについて詳しく解説します。
システムシンキングとは?
システムシンキングとは「システム思考」とも呼ばれ、物事はそのもの自体では完結せず複数の物事における相互作用を含めて考える必要があることから、物事の全体像を複数の構成要素でできたシステムとして捉え問題解決につなげる手法のことを指します。
IT業界では問題の数が多くどこから手をつけてよいかわからなくなってしまったり、今まで成功していた方法で問題の解決を試みてもうまくいかなくなったりすることがあるため、広い視野で物事を捉えられるシステムシンキングが役に立つのです。
システムシンキングとロジカルシンキングの違い
同じ問題解決のための手法としてシステムシンキングと混同されやすいのがロジカルシンキングです。
システムシンキングとロジカルシンキングの違いは次の通りです。
概要 | メリット | 活用する場の例 | |
システムシンキング | ・物事の全体像を複数の構成要素でできたシステムとして捉え問題解決につなげる手法 | ・多角的に物事を捉えられる ・根本的な問題解決につながる ・顕在化した問題を分析できる | ・事業戦略の立案 ・リスクマネジメント ・組織改革 |
ロジカルシンキング | ・「論理的思考法」と訳され、事実や根拠に基づき論理を組み立て矛盾のない結論を導き問題解決につなげる手法 | ・合理的に物事を考えられる ・説得力のある意見を構築できる ・問題を明確化することから始めるため潜在的な問題を分析できる | ・プレゼンテーション ・商談 ・交渉 ・会議 |
システムシンキングもロジカルシンキングもビジネスの場で広く活用できますが、主に企業としての意思決定に役立つのがシステムシンキング、仕事の場で役に立つのがロジカルシンキングという違いがあるのがわかります。
どちらも企業が問題解決をする上で重要な手法のため、従業員には両方身に着けておいてほしいと考える企業が多いのではないでしょうか。
システムシンキングとデザインシンキングの違い
同じくシステムシンキングと混同されやすいのがデザインシンキングです。
システムシンキングとデザインシンキングの違いは次の通りです。
概要 | 思考の起点 | 活用する場の例 | |
システムシンキング | ・物事の全体像を複数の構成要素でできたシステムとして捉え問題解決につなげる手法 | ・物事 | ・事業戦略の立案 ・リスクマネジメント ・組織改革 |
デザインシンキング | ・デザイナーやクリエイターがデザインを考える時の思考方法をビジネスにおける問題解決のために利用する手法 | ・ユーザーやクライアントのニーズ | ・商品開発 ・DX推進 ・採用活動 |
システムシンキングとデザインシンキングは思考の起点が異なるため、同じような過程をたどったとしても異なる側面から物事を見られるのが大きな違いです。
活用できる場もそれぞれ違うため、企業としては両方身に着けてほしいスキルだと言えるでしょう。
システムシンキングがIT業界で注目される背景
システムシンキングがIT業界で注目される背景には、ITビジネスを取り巻く環境が複雑化していることが挙げられます。
具体的な例を3つご紹介します。
VUCAの時代を迎えたため
VUCAとはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つの英単語の頭文字を取った言葉で、先行きが不透明なため予測困難で、変化が激しい状態のことです。
VUCAの時代には次のようなことが起こりやすいとされています。
- 想定外の出来事
- 画期的な新しい商品やサービスが生まれる
- 今まで常識だったことが非常識へと変化する
近年でわかりやすい事例としては、新型コロナウイルスの感染流行という想定外の出来事をきっかけに、常識だった屋外でのライブ開催が非常識へと変化して、IT技術を活用した無観客でのライブ配信という新しいサービスが生まれたことが挙げられるでしょう。
物事を多角的に捉え根本的な問題解決ができるシステムシンキングは、VUCAの時代を迎えたIT業界で役立つスキルだと言えます。
企業にダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みが求められるようになったため
ダイバーシティ&インクルージョンとは多様性という意味を持つDiversity 、受容という意味を持つInclusionを組み合わせた言葉で、企業においては人材の多様性を認め受け入れて活かすことを指します。
IT企業においてもこれは例外ではなく、主に次のような取り組みが行われているのです。
- 女性の活躍推進
- 外国人雇用、高齢者、障がい者の雇用促進
- LGBTQへの理解促進
- 働き方改革の推進
IT業界は慢性的な人手不足に悩まされていますが、システムシンキングを活用しダイバーシティ・インクルージョンへの取り組みを加速化することで、多様な人材を採用でき定着率も上がるでしょう。
経済のグローバル化が進んでいるため
日本貿易振興機構が2022年11月に発表した「海外進出日系企業実態調査(全世界編)」で通信・IT企業237社に対し今後1~2年間の事業展開の方向性についてたずねた所、次のような結果が出ました。
拡大 | 現状維持 | 縮小 | 第三国へ移転・撤退 | |
通信・IT企業 | 51.1% | 43.5% | 4.6% | 0.8% |
通信・IT企業においては海外での事業展開は拡大戦略を取る企業が半数を占め、グローバル化が進んでいるのがわかります。
またデジタル技術の活用状況について7,339社にたずねた所、次のような結果だったのです。
すでに活用している | 今後活用予定 | 活用する予定はない | 現時点ではよくわからない | |
全地域の企業 | 42.0% | 21.7% | 8.4% | 27.9% |
デジタル技術をすでに活用している企業と今後活用予定の企業の合計が63.7%で、海外で事業を展開する企業ではデジタル技術を活用した問題解決が重要視されているのがうかがえます。
これらのことから経済のグローバル化が進むほど多角的に物事を捉え、早期に根本的な問題解決に取り組む必要性が出てくるため、システムシンキングの導入はメリットが大きいと言えるでしょう。
参考:日本貿易振興機構「2022年度 海外進出日系企業実態調査(全世界編)(2022年11月)」
システムシンキングをIT業界で活用するメリット
システムシンキングをIT業界で活用するメリットは次の通りです。
- 多角的に物事を捉えられるため偏りのない柔軟な考え方で問題を解決できる
- 見方や考え方の違いが原因のトラブルが減りチームで共通認識を持てるため、早期の問題解決につながる
- 物事を部分的に見て誤った判断を下しにくくなるためリスクマネジメントができる
IT自体も1つのシステムと呼べるため、IT業界で働く人にとってシステムシンキングは身近で取り入れやすい思考方法だと言えるでしょう。
システムシンキングをIT業界で活用するデメリット
システムシンキングをIT業界で活用するデメリットは、システムの枠に囚われやすくなることです。
システムシンキングでは思考の起点が物事をシステムと捉えることになるのがその理由です。
問題解決に行き詰まったらシステムシンキングだけで物事を解決しようとせず、他の思考方法も試してみるのがおすすめです。
システムシンキングで問題解決をする時に使えるフレームワーク
システムシンキングで問題解決をする時に使えるフレームワークを3つご紹介します。
氷山モデル
氷山モデルとは「出来事」が水面より上で氷山の一角として目に見えているものの、水面下には「パターン」「構造」「メンタルモデル」が階層化しているのを示したモデルで、物事の全体像を把握するために用いるフレームワークです。
氷山モデルの4つの要素の概要は次の通りです。
項目 | 概要 |
出来事 | ・水面より上にあり可視化されている ・実際に何が起きたかを指す |
パターン | ・水面より下にあり可視化されていない ・出来事が起きた要因となる行動パターンを指す |
構造 | ・水面より下にあり可視化されていない ・パターンを引き起こす根本的な原因を指す ・構造を結び付けて1つのかたまりにしたものが「システム」 |
メンタルモデル | ・水面より下にあり可視化されていない ・構造が生まれる人間の価値観や信念 |
氷山モデルに当てはめてシステムシンキングをすると、問題を引き起こす根本的な原因は人間の信念や価値観にあることがわかります。
ループ図
ループ図とは、氷山モデルにおける出来事を引き起こす構造やシステムを分解した「変数」を、因果関係を表す矢印で結んだ図のことです。
出来事を引き起こす構造を分解してサークル状に配置するため、変数が変化した時に全体に与える影響をつかみやすく、システムシンキングを用いて問題解決をするためにはどの変数を変えればよいのかが判断しやすくなります。
時系列変化パターングラフ
時系列変化パターングラフとは、縦軸で氷山モデルのパターン、横軸で時間の経過を表し、過去から未来にかけてどのような変化が現れるかを可視化できるグラフのことです。
今までのパターンを書いた後、このままのパターンと望ましいパターンの2つをグラフ化し、望ましいパターンにするためにはどのようにシステムの構造を変えればよいかを考えるのに使います。
時系列変化パターングラフを用いてシステムシンキングをすると、問題解決をするためにいつまでに何をどのように変化させればよいかが明確になるでしょう。
セイ・コンサルティング・グループでは広い視野で問題解決ができるようになるシステムシンキング研修を行っています
セイ・コンサルティング・グループでは、IT技術者向けに広い視野で問題解決ができるようになることを目的としたシステムシンキング研修を行っています。
トレーニングと演習を交えながら研修を進めるため、すぐに現場でシステムシンキングを活用できるようになり、他者と協力してシステムシンキングをする方法も紹介しているのでチームワークにも活かせます。
よりIT技術者のニーズに沿ったシステムシンキング研修を行いたいなら、ぜひ次のページもごらんください。
3.6 IT技術者のためのシステムシンキング - セイコンサルティンググループ (saycon.co.jp)
まとめ
システムシンキングとは「システム思考」とも呼ばれ、物事の全体像を複数の構成要素でできたシステムとして捉え問題解決につなげる手法のことを指します。
IT業界では問題解決の手法として幅広く活用できるため、ぜひ積極的に従業員の研修にも取り入れてみてください。