内定者研修とは?適正な開催方法からおすすめの内容まで詳しく解説
内定者が入社前から抱いている不安や悩みを早期に解決するために内定者研修を行いたいけれど、どのようなことに気を付けて開催すればよいのかよくわからず悩んでいる人はいませんか?
この記事では、IT業界における内定者研修の適正な開催方法からおすすめの内容まで詳しく解説します。
内定者研修とは?
内定者研修とは採用が内定した学生に対し、入社前に行う研修のことを指します。
内定者研修の目的は次の3つです。
- 入社への不安や悩みを解消し内定の辞退を防ぐ
- 入社後に必要となるビジネスマナーやビジネススキルを身に着けて即戦力として働けるようにする
- 入社へのモチベーションを維持する
内定者研修の回数や時間は、企業によって異なるのが特徴的と言えるでしょう。
内定者研修をIT企業が重要視するようになった背景
内定者研修をIT企業が重要視するようになった背景には、どのようなことがあるのでしょうか。
3つご紹介します。
早期の離職を防ぐため
2023年に独立行政法人情報処理推進機構が発表した「DX白書2023」において、DXを推進する人材の量が確保できているかどうかについてたずねた所、次のような結果でした。
やや過剰である | 過不足はない | やや不足している | 大幅に不足している | わからない | |
割合 | 1.3% | 9.6% | 33.9% | 49.6% | 5.6% |
「やや不足している」「大幅に不足している」と回答した企業が合計で83.5%を占めることから、多くの企業ではDXを推進する人材の量が確保できていないことがわかります。
一方2021年に厚生労働省が発表した新規学卒就職者の3年以内の離職率は31.2%で、2004年に36.6%の最高値を記録して以来、30%台前半で横ばいを続けています。
IT企業には人手不足が続く中業界全体としてDXを推進しなければならないというミッションがあるため、デジタルネイティブ世代でもある新入社員を早期に離職させたくはありません。
そのため多くのIT企業において、入社への不安や悩みを解消し入社へのモチベーションを維持できる内定者研修を積極的に導入するようになったのです。
内定者からのニーズが高いため
2022年にマイナビが2023年卒業予定の大学4年生と大学院2年生3,164人に対して、内定者研修をどのような形で行ってほしいかをたずねた所、次のような結果が出ました。
対面で実施してほしい | 対面で実施希望だが、状況に応じてWebに変更してほしい | Webと対面のどちらかを選べるようにしてほしい | Webで実施希望だが、状況に応じて対面に変更してほしい | Webで実施してほしい | 実施してほしくない | |
全体 | 52.6% | 18.4% | 12.7% | 3.8% | 8.6% | 3.9% |
理系男子 | 50.5% | 17.9% | 13.1% | 4.4% | 9.1% | 4.9% |
理系女子 | 49.8% | 18.6% | 13.8% | 4.5% | 10.2% | 3.1% |
実施形態にかかわらず内定者研修をしてほしいと回答した人が全体では96%を超え、内定者からのニーズがとても高いのがわかります。
またこれからのIT業界を支える理系学生においては、対面で実施を希望する人が全体と比較して若干減るものの内定者研修への意欲は高いのがうかがえます。
上記のようなニーズの高さを背景に、近年IT企業は内定者研修に力を入れるようになったと言えるでしょう。
就職活動の内容の変化
リーマンショック以降、就職活動はその内容が大きく変化し誰でも好きな会社に応募できるようになっていきました。
インターンシップ、リファラル採用、就職エージェントの活用など採用の方法も細分化し、採用後のミスマッチを起こさない工夫も凝らされるようになってきています。
また内定についても、複数の内定を保険にして継続して就職活動をするのが前提になってきているため、企業側にも「内定辞退をされない努力」が求められるようになりました。
就職活動をする学生の採用後のミスマッチを避けたいというニーズと、企業側の内定辞退をされたくないというニーズが合致したのが、内定者研修が広まった要因の1つだと言えるでしょう。
内定者研修をIT企業で適正に開催するポイント
IT企業で内定者研修を適正に開催するには、どのようなポイントに気を付ければよいのでしょうか。
3つご紹介します。
内定者研修にかかる費用を負担する
IT企業で内定者研修を適正に行うには、研修にかかる費用を負担することが大切です。
企業と内定者の間では、内定が出た時点で始期付解約権留保付労働契約(入社前にやむを得ない理由が発生した場合内定を取り消すことができる条件つきの労働契約)が結ばれていると見なされます。
そのため、内定者研修にかかる次の3つの費用については、企業が負担する必要があるのです。
- 交通費(研修所までの往復の交通費、宿泊を伴う場合は宿泊費など)
- 賃金
- 研修にかかる実費(テキスト代、外部講師に支払う報酬など)
内定者に入社前にもかかわらず不信感を持たれないようにするためにも、内定者研修にかかる費用はしっかりと負担しましょう。
法律を順守して行う
IT企業における内定者研修は、法律を守って行うことも大切です。
例えば次のような内定者研修は違法となるので覚えておきましょう。
- 就職活動の妨害を目的とした内定者研修
- 給料を支払わずに働かせるのを目的とした内定者研修
- パワハラとなる内定者研修
- 強制参加の内定者研修
学生は勉強が本業なので、本人の同意なく研修に参加させることはできません。
また、内定者研修で精神論ばかりを語ったり、飲み会への参加を強制したりするのはパワハラにあたります。
内定者研修を行う時は法律違反となる行為をしないよう、十分な注意が必要です。
学業に配慮したスケジュールとする
IT企業における内定者研修では、内定者の学業に配慮したスケジュールを組むことも大切です。
前の項目でもご紹介した通り学生は勉強が本業なので、入社前に卒業論文や卒業試験に時間を割かなければならない人も多いでしょう。
ただでさえ忙しいスケジュールの中、内定者研修にさらに大きく時間を取られたのでは内定者にかかる負荷が大きくなりすぎてしまいます。
オンラインでも受講できるe-ラーニング、通信教育などを活用すると内定者のスケジュールを圧迫せず、本人のペースで研修を受けてもらえるでしょう。
IT企業における内定者研修の好事例
IT企業における内定者研修の好事例を3つご紹介します。
クルーズ株式会社
クルーズ株式会社は入社と同時に内定者を即戦力とするため、「業界一ビジネスリテラシーとITリテラシーの高い新入社員となる」をビジョンに掲げて、合計240時間もの内定者研修をCTOが直接行っています。
研修内容はビジネスリテラシー、ITリテラシー、物流倉庫研修の3つに大きく分かれており、週に2回のリモート研修と、月に1回の集合研修を組み合わせて行うのです。
入社後にはPL/BSやタイピング、プログラミングなど複数項目の卒業検定があり、合格した人から現場に配属となります。
一見とても厳しい内定者研修に思えますが、内定者は「重要プロジェクト」という仕事を入社前にすでに任されており、入社式ではその成果報告が行われることからその成長の速さがうかがえます。
内定者研修のビジョンをしっかりと定め、信頼して仕事も任せることで研修の成果を高めている好事例と言えるでしょう。
参考:note「スーツを着させない入社式、総時間数240時間越えの内定者研修。全ては『業界一、ビジネスリテラシー&ITリテラシーの高い新卒になってほしいから』【クルーズ流入社式&内定者研修】
G2 studios株式会社
G2 studios株式会社では社会人としてのマインドとスキルを整え、現場に配属後すぐにゲーム作りに集中できるようになるのを目的として、任意参加の内定者研修を行っています。
人事研修以外にセクション研修として職種別に次のような研修も行われ、毎回課題やワークには先輩社員からフィードバックが受けられるのです。
職種 | 研修内容 |
エンジニア | ・Unityでテトリスを開発 ・公開APIを利用してお天気アプリを開発 ・サーバー環境構築 |
デザイナー | ・Adobe系ツールの講義 ・バナーの模写/制作 ・UIのレイアウト調整、アイテム画像作成 |
プランナー | ・企画書作成 ・仕様書作成 ・Excel課題 |
テトリス、Adobe、Excelなど、誰でも一度は名前を耳にしたことのあるソフトを用いて、内定者が親しみやすい内容の内定者研修をしている様子がうかがえます。
参考:note「スマホゲーム会社がオンライン内定者研修でフォローアップする話」
株式会社Bridge
株式会社Bridgeでは対人関係を良くするのを目的に、コミュニケーションをテーマとした内定者研修を行っています。
具体的には心理学に基づいた「ソーシャルスタイル理論」で人の言動を4つに分類し、自分に合う人と合わない人の性格を理解した上でコミュニケーションを進めていくのです。
内定者は4つのタイプについて理解した後、各タイプに対してどのようなコミュニケーションを取ればよいかをロールプレイングで実践することができます。
仕事を円滑に進めるためのコミュニケーションの方法を早期に身に着けてもらうことで、新入社員に気持ちの良いスタートダッシュをしてほしいという思いが垣間見えます。
参考:note「ベンチャー企業の23新卒・内定者研修を公開します!~ソーシャルスタイル理論~」
セイ・コンサルティング・グループでは「新人エンジニア研修」でIT企業の皆さまの内定者研修をお手伝いしています
セイ・コンサルティング・グループでは、「新人エンジニア研修」でIT業界における内定者研修をサポートしています。
新人エンジニア研修は、2023年度の参加者のうち94%が来年度の新入社員にも「非常に推薦できる」と回答した、セイ・コンサルティング・グループが自信を持ってお勧めする研修の1つです。
コンピュータやシステム開発の基礎から始め、発表会をはさんでマナー研修で終わる60日間が過ぎると、内定者が一人前のエンジニアになるのを目の当たりにすることができるでしょう。
興味のある方は、ぜひ次のページもごらんください。
新人エンジニア研修(2023) - セイコンサルティンググループ (saycon.co.jp)
まとめ
内定者研修とは採用が内定した学生に対し、入社への不安を取り除きモチベーションを維持するため入社前に行う研修のことですが、内定者からのニーズが高いのが特徴的だと言えるでしょう。
この記事も参考にして、ぜひ自社に合った形で内定者研修を行ってみてください。