研修費用の相場とは?内訳から一人当たりの研修費用まで詳しく解説

変化の激しいIT業界で生き残っていくためには人材育成にそれなりにお金をかける必要があるけれど、研修費用の相場がどのくらいなのかを知って妥当な予算を立てたいと考えている人はいませんか?

この記事では研修費用の相場から内訳まで詳しく解説します。

研修費用とは?

4月に新人研修にかかる費用

研修費用とは、知識やスキル向上を目的として従業員に対して行う教育やトレーニングにかかる費用のことを指します。

研修費用の内訳が具体的にイメージしにくいかもしれませんが、2023年に産労総合研究所が発表した「2023年度 教育研修費用の実態調査」では、研修費用の総額を次に掲げる各費用の合計額としています。

  • 正規従業員を対象とした自社主催研修の会場費・宿泊費・飲食費
  • 外部講師費
  • 教材費
  • 外部教育機関への研修委託費およびセミナー・講座参加費
  • eラーニング・通信教育費
  • 公的資格取得援助費
  • 研修受講者・社内講師の日当・手当・交通費
  • 事務局費
  • その他これら以外の教育研修に必要な費用 (ただし、研修受講者・教育スタッフなどの人件費は含まない)

全ての企業が研修費用の内訳を上記と同じように定義づけているとは限りませんが、おおむね上記の費用が含まれていると考えるのがよいでしょう。

参考:産労総合研究所「2023年度 教育研修費用の実態調査」

研修費用を負担するのは?

研修費用が自己負担なのでどのくらいの金額がかかるか電卓で試算する

研修費用はそもそも会社負担と自己負担、どちらにするのが望ましいのでしょうか。

研修はそもそも業務に必要な知識を身に着け、業務命令で受講させるものなので費用は会社負担とするのが原則です。

研修費用をもし自己負担とする場合は、次のようなことに留意する必要があるでしょう。

  • 研修費用を自己負担とすることを就業規則に明記し説明義務を果たす
  • 労働条件通知書に研修費用についての取り扱いを記載する
  • 入社前に研修費用について説明し同意書を書いてもらう

従業員と研修費用のことでトラブルにならないようにするためにも、自己負担にするなら丁寧な説明を心がけましょう。

研修費用の相場

企業における研修費用の相場はどのくらいなのでしょうか。

現状と今後の方向性にわけてご紹介します。

研修費用の現状

従業員1人あたりの研修費用の推移を示した棒グラフ

画像出典:産労総合研究所「2023年度 教育研修費用の実態調査」

2023年に産労総合研究所が発表した「2023年度 教育研修費用の実態調査」において、147の企業を対象に従業員一人当たりの研修費用についてたずねた所、2022年には32,432円となりました。

2020年のコロナ禍における24,841円という金額と比較するとコロナ禍前に戻っていますが、調査を開始した2012年からの推移を見てみると横ばいなのが現状です。

一人当たりの研修費用に自社の従業員数をかけた数値を相場として、研修予算の目安を考えてみるのもよいでしょう。

参考:産労総合研究所「2023年度 教育研修費用の実態調査」

研修費用の今後の方向性

教育研修費用総額の今後(1年~3年)の方向性を示した棒グラフ

画像出典:産労総合研究所「2023年度 教育研修費用の実態調査」

「2023年度 教育研修費用の実態調査」において、147の企業を対象に教育研修費用総額の今後(1年~3年)の方向性についてたずねた所、2023年度は増加する見込みと回答した企業が62.8%を占めました。

2015年度の調査開始以来最も多くなったため、人材育成にそれなりの予算をかけたいと考えている企業が増えているのがわかります。

参考:産労総合研究所「2023年度 教育研修費用の実態調査」

研修費用の負担がきつい場合は?

人材開発支援助成金と記載した白画用紙とボールペン

2022年10月に東京商工会議所人材・能力開発部研修センターが発表した「研修・教育訓練、人材育成に関するアンケート」において、研修・教育訓練を実施する上での課題についてたずねた所、研修・教育訓練に要する資金が不足していると回答した企業が11.1%でした。

また、強化・拡充を要望する行政の支援策についてたずねた所、次のような結果が出たのです。

回答割合
助成金額・助成率の引上げ56.9%
助成金の申請手続きの簡素化43.4%
助成金の通知37.2%

これらのことから研修・教育訓練を実施する上で予算に余裕がない企業は助成金を利用したいと考えているけれど、情報収集ができず機会を逃してしまったり、申請手続きが複雑すぎて申請をあきらめてしまったりしている現状がうかがえます。

もし現状上記のような状態で困っている企業があれば、ぜひ役立ててほしいのが「人材開発支援助成金」です。

人材開発支援助成金は企業が雇用している従業員に対して、職務に関連した専門的な知識や技能を身に着けてもらうための職業訓練などを計画的に実施した場合、訓練にかかる経費や訓練期間にかかる賃金の一部を助成する制度です。

2023年6月から雇用関係助成金ポータルでの電子申請が可能になったので、申請手続きが少し簡単になり、社会保険労務士や代理人による申請もできます。

人材育成開発支援助成金には次の7つのコースがあります。

  • 人材育成支援コース
  • 教育訓練休暇等付与コース
  • 人への投資促進コース
  • 事業展開等リスキリング支援コース
  • 建設労働者認定訓練コース
  • 建設労働者技能実習コース
  • 障害者職業能力開発コース

この中からIT企業で活用しやすい「建設労働者認定訓練コース」「建設労働者技能実習コース」以外の5つのコースについて概要をご紹介します。

参考:東京商工会議所人材・能力開発部研修センター「研修・教育訓練、人材育成に関するアンケート」

人材育成支援コース

人材育成支援コースとは、次の3つの訓練を企業が行った場合、訓練にかかる経費や訓練期間中の賃金の一部の助成が受けられるコースです。

訓練項目概要
人材育成訓練・職務に関連した知識や技能を習得してもらうためのOFF-JTを10時間以上行った場合に助成する
認定実習併用職業訓練・中核人材を育成するためOFFーJTとOJTを組み合わせた訓練を行った場合に助成する
有期実習型訓練・有期契約労働者などの正社員転換を目的としてOFF-JTとOJTを組み合わせた訓練を行った場合に助成する

e-ラーニングや通信制による訓練にも助成金が支給されるため、IT企業にとっては敷居が低いコースだと言えるでしょう。

教育訓練休暇等付与コース

教育訓練休暇等付与コースとは、次の制度を導入して従業員が訓練を受けた場合に助成が受けられるコースです。

制度の項目概要
教育訓練休暇制度・3年間に5日以上の取得ができる有給の教育訓練休暇を導入し、実際に適用した事業主に助成する(制度導入に対して30万円を支給)
長期教育訓練休暇制度・30日以上の長期教育訓練休暇の取得ができる制度を導入し、実際に適用した事業主に助成する(制度導入に対して20万円を支給し、有給休暇に対して一人につき一日あたり6,000円、最大150日分の賃金を助成)
教育訓練短時間勤務等制度・30回以上の所定労働時間の短縮や所定外労働時間の免除ができる制度を導入し、実際に1回以上適用した事業主に助成する(制度導入に対して20万円を支給)

今まで従業員に研修を行う時間的な余裕を作れなかったIT企業も、このコースに申請することで少しゆとりができるのではないでしょうか。

人への投資促進コース

人への投資促進コースは、次の3つを目的とした5種類の訓練を行った場合訓練経費や訓練期間中の賃金の一部などを助成してもらえるコースです。

目的訓練の種類
デジタル人材・高度人材の育成・高度デジタル人材訓練 ・成長分野等人材訓練
・情報技術分野認定実習併用職業訓練
労働者の自発的な能力開発の促進・長期教育訓練休暇等制度
・自発的職業能力開発訓練
柔軟な訓練形態の助成対象化・定額制訓練

デジタル人材や高度人材の育成は優先順位を高めて取り組みたいIT企業が多いため、人への投資促進コースはIT業界のニーズに合ったコースだと言えるでしょう。

また流行りのサブスクリプション型の定額制訓練も助成対象となったため、助成金申請への敷居が少し下がったと感じるIT企業も少なくないのではないでしょうか。

事業展開等リスキリング支援コース

事業展開等リスキリング支援コースとは、企業が新規事業の立ち上げなどの事業展開に伴い、新しい事業で必要となる知識や技能の訓練を行った場合に助成を受けられるコースです。

また事業展開を行わず、DXの推進やカーボン・ニュートラル化を進めるのを目的に訓練を行った場合でも助成が受けられます。

DXの推進に積極的に取り組むIT業界にとって、申請しやすいコースだと言えるでしょう。

障害者職業能力開発コース

障害者職業能力開発コースとは、障がい者の職業に必要な能力を開発・向上させるため一定の教育訓練を継続的に実施するための施設を設置・運営する場合その費用を一部助成するコースです。

2022年6月1日に厚生労働省のホームページで発表された障害者雇用状況報告の集計結果では、情報通信業の実雇用率は1.84%で、全ての産業の中で最も低い結果となっています。

そのためIT企業で障がい者に教育や訓練を行い、即戦力として働いてもらうのは他の企業との差別化にもつながるでしょう。

どのコースについても、厚生労働省の「人材開発支援助成金」のページに詳細なパンフレットや必要な申請書類が掲載されているので、興味のある方は確認してみてください。

参考:厚生労働省「人材開発支援助成金」

参考:厚生労働省「障害者雇用状況報告の集計結果について」

セイ・コンサルティング・グループではお客様の予算に応じた研修内容をご提案しています

セイ・コンサルティング・グループではホームページのFAQで研修費用の目安となる価格を明示しています。

どれだけホームページに研修内容やお客様の声が記載されていたとしても、費用の目安が全くわからないのでは不安に感じるお客様もいらっしゃるためです。

人材育成方針に合わせた研修のカスタマイズはスライド1枚からご相談可能ですが、費用とのバランスを考慮しながらご提案させていただきます。

セイ・コンサルティング・グループが行う研修の費用や依頼に関する詳細を知りたい方は、次のページもごらんください。

研修料金など依頼に関するFAQ - セイコンサルティンググループ (saycon.co.jp)

まとめ

企業における1人あたりの研修費用の相場はコロナ禍前に戻りましたが、それ以前と比較すると横ばいを続けているのが現状です。

費用負担がきつい場合は助成金なども活用し、自社の人材育成計画に必要な研修を積極的に取り入れてみてください。