チームビルディングとは?研修をIT企業で行う効果から事例まで詳しくご紹介
自社の組織開発のためにもチームビルディングの手法を取り入れていきたいけれど、何から始めていけばよいかわからず困っている人はいませんか?
この記事ではチームビルディング研修をIT企業で行う効果から事例で詳しくご紹介します。
チームビルディングとは?
チームビルディングとは、チームの目標を達成するため個人の能力を最大限に発揮できる環境作りや取り組みをすることを指し、組織開発の手法の1つとして位置付けられています。
チームビルディングは組織開発の手法なので、チームビルディングについて理解するためにはまず組織とは何かを理解しておかなければなりません。
アメリカの経営学者チェスター・バーナードは、組織に必要な3つの要素を「バーナードの組織の3要素」として次のように提唱しました。
項目 | 概要 |
共通目的 | ・組織は同じ目標(ビジョンやミッションなど)に向かって仕事に取り組む |
コミュニケーション | ・組織には情報共有や意思疎通が必要 |
貢献意欲 | ・組織のメンバーは組織に貢献したいというモチベーションを持つ |
バーナードの組織の3要素を満たすチームをチームビルディングによって作ることで、チームはただの人の集まりである集団から組織へと変化していくと言えるでしょう。
一方、チームビルディングの発展段階を心理学の観点から解説した理論が、1965年にブルース.W.タックマンが提唱したタックマンモデルです。
タックマンモデルでは次の5段階でチームが発展するとしています。
段階 | 段階の特徴 | 次の段階に進むためにリーダーがしなければならないこと | 具体的なリーダーの行動 |
形成期 (Forming) | ・チームメンバー同士お互いのことを知らない ・どこか他人任せな部分がある ・行動が指示待ちになる ・チームメンバーが不安や緊張から抜けきれない | ・チームの協力体制を作る | ・チームのルールや目標を明確に説明する ・具体的な指示を出して仕事を進める |
混乱期 (Storming) | ・チームメンバーに自立心が芽生える ・チームメンバー同士で意見の衝突が起こる ・ビジョンがまだ共有されていない状態 | ・課題を解決する時トップダウンにせずチームメンバー全員でアプローチする | ・話し合いを積極的に行う |
統一期 (Norming) | ・行動規範ができる ・役割分担が明確になる ・ビジョンが共有された状態 | ・チームが何らの要因で停滞したらその要因を取り除く | ・チームメンバーのより深いコミュニケーションを推進する |
機能期 ( Performing) | ・成功体験を共有する ・帰属意識が高まる ・実質的なリーダーが生まれ形式的なリーダーは退場する | ・チームメンバーの自主性に任せる | ・細かい指示は出さない |
散会期(Adjourning) | ・目標達成や時間の制約などでチームが解散する ・互いの健闘をねぎらう | ― | ― |
IT業界ではプロジェクトごとにチームを組んで目標達成のために仕事を協力して行い、プロジェクトが終わればチームが解散するため、チームビルディング研修などでタックマンモデルについて解説すると意味を理解してもらいやすい環境にあると言えるでしょう。
チームビルディングとチームマネジメントの違い
チームビルディングとチームマネジメントはとても混同されやすい言葉ですが、以下のような違いがあります。
項目 | 概要 |
チームビルディング | ・チームの目標を達成するため個人の能力を最大限に発揮できる環境作りや取り組みをすること |
チームマネジメント | ・チームの目標を達成するため個人の能力を最大限に発揮できるようマネジメントをすること |
チームビルディングは目標達成のためのチーム作り、チームマネジメントは目標達成のためのマネジメントや人材育成ととらえると違いがわかりやすいでしょう。
チームビルディングとチームワークの違い
チームビルディングとチームワークも混同されやすいですが、次のような違いがあります。
チームビルディング | ・チームの目標を達成するため個人の能力を最大限に発揮できる環境作りや取り組みをすること |
チームワーク | ・チームメンバーが共通の目標やミッションを達成するために行う協同作業のこと |
チームビルディングは目標達成のためのチーム作りを指しますが、チームワークはチームが協力して目標達成するための作業を指します。
チームビルディングの目的
チームビルディングの目的は次の通りです。
- 企業のビジョン(企業としての展望や理想)を浸透させる
- ビジョン達成のために必要なマインドセット(個人が持つ物の見方や考え方)を作る
- チームパフォーマンスとモチベーションの向上
- メンバー同士における関係性の強化
- 心理的安全性の担保
心理的安全性とは心理学の用語で、チームメンバーが誰でも自分の意見や気持ちを安心して率直に発言できる状態のことを指します。
IT企業はチームで構成されているため、チームビルディングの手法を用いて組織開発を進めることで、より業界の中で競争力を発揮し、高いパフォーマンスを維持できるようになるでしょう。
組織開発についてもう少し詳しく知りたい方は、次の記事もごらんください。
組織開発とは?目的から成功した具体例まで詳しくご紹介 (saycon.co.jp)
チームビルディングでIT企業が得られる効果
チームビルディングでIT企業が得られる効果には、次のようなことがあります。
- コミュニケーションの活性化
- 従業員のモチベーションアップ
- 新しいアイデアやビジネスモデルを着想した場合、それを形にしやすくなる
- 生産性の向上
- 人員配置の最適化
- 個々の役割の明確化
- チームパフォーマンスの向上
IT企業では特にチームで協力して1つのサービスやシステムを作ったり、サポートしたりといったことが多いので、チームビルディングの手法を積極的に用いて組織作りをするのは重要なことだと言えるでしょう。
チームビルディングのIT企業における実践事例
チームビルディングはIT企業においてどのように実践されているのでしょうか。
事例を3つご紹介します。
株式会社テンクー
2020年に経済産業省が発表した大学発ベンチャー実態調査とチームビルディング事例集で、チームビルディングの好事例として紹介されているのが株式会社テンクーです。
株式会社テンクーは代表取締役社長CEOの西村邦裕さんが2011年に創業した会社ですが、がんゲノム医療を支えるソリューションソフトウェア「Chrovis(クロビス)」を開発し、大学発ベンチャー表彰2019で文部科学大臣賞を受賞しています。
株式会社テンクーはソフトウェアの開発を主に手掛けているため、チームでもエンジニアが中心となって仕事をしているとイメージされがちですが、取締役CDO(最高デザイン責任者)がいてデザイナーが幅広く事業に関わっているのが特徴的です。
これは株式会社テンクーが人にわかりやすく伝えること全てをデザインととらえ、Webサイトやパンフレット、公表資料の作成からクロビスの患者向けレポートまで経営全般にその考え方を取り入れているためです。
デザイナーとエンジニアがスムーズに協業できているのは、テンクーがデザインの考え方を経営全般に取り入れ、デザイナーの貢献意欲を満たしているからに他ならないでしょう。
株式会社テンクーでは入社後の働きやすい環境作りも進めているため、チームビルディングによって今後もさらに組織が活発化していくでしょう。
参考:経済産業省「大学発ベンチャー実態調査とチームビルディング事例集を取りまとめました」
GMOペパボ株式会社
個人向けインターネットサービスを多数展開しているGMOペパボ株式会社では、新しいプロジェクトが始まる時や何かの節目に、チームビルディングの手法としてドラッガー風エクササイズやそれをカスタマイズしたワークショップをしています。
ドラッガー風エクササイズとはJonathan Rasmusson氏が提唱しているチームビルディングの手法で、次の4つの質問にチームメンバー全員が回答することで相互理解の促進と期待のすりあわせができるというものです。
- 自分は何が得意なのか?
- 自分はどのように仕事をするか?
- 自分が大切に思う価値は何か?
- チームメンバーは自分にどんな成果を期待していると思うか?
GMPペパボ株式会社のワークショップにおいては、この4つの質問のうち①と④、さらに「他のチームメンバーに期待することは何か?」という3つの質問をしています。
ワークショップは導入→記入タイム→発表タイム→確認タイム→クロージングと進み、お互いを少しずつ理解し、相互に期待しあっているものは何なのかを最終的に把握することができるのです。
GMOペパボ株式会社では今後もこのワークショップをさらに改善し、チームビルディングを進めていきたいと考えています。
参考:GMOペパボ株式会社「『ドラッガー風エクササイズ』で期待をすり合わせて安全なチームに」
株式会社マネーフォワード
経理向けのクラウドサービスなどを提供する株式会社マネーフォワードのPay事業本部では、組織体制の変更時にあらためてチームの結束を高めるのを目的としてチームビルディング合宿を2日間にわたって行いました。
1日目は次のようなメニューが行われました。
- チェックインと自己開示ワークショップ
- ロードマップとビジョンの共有
- アイデアソン(前半戦)
また2日目は次のようなメニューでした。
- ウォーミングアップ
- アイデアソン(後半戦)
- チェックアウト
アイデアソンというのはアイデアとマラソンを掛け合わせて作った造語で、特定のテーマを決めてグループ単位でアイデアを出し合い、その結果を競うイベントです。
アイデアソンは新体制でも事業をやれるというポジティブなマインドをチームメンバーに持ってもらうために企画されたものでしたが、最後のプレゼンでは絶対やろうというフィードバックがあるなど大成功だったのです。
チームビルディング合宿後のPay事業本部は不安定な状況でもメンバー同士がリスペクトを忘れず、チーム一丸となって目標達成に向けて取り組めるようになりました。
参考:note ナカザトマサヤ「チームビルディング合宿の思い出とその後の話」
セイ・コンサルティング・グループではチームビルディング研修でIT業界全体のチーム運営能力向上を目指しています
セイ・コンサルティング・グループのチームビルディング研修では、IT人材に必要なチームビルディングのスキルである、褒めると叱る、モチベーションマネジメント、アンガーマネジメント、リーダーシップとフォロワーシップ、報連相などを学ぶことができます。
研修参加者自体が1つのチームとなり、2日間にわたってアクティビティなどを用い、他者と交流しながら学ぶことができるので、自然にチームビルディングへの理解が深まります。
チームのコミュニケーションを深めながらチームビルディングへの意識向上を図りたい方は、ぜひ次のページもごらんください。
1.4 チームビルディング - セイコンサルティンググループ (saycon.co.jp)
まとめ
チームビルディングとは、チームの目標を達成するため個人の能力を最大限に発揮できる環境作りや取り組みをすることを指し、組織開発の手法の1つとして位置付けられています。
この記事で紹介した事例も参考にして、ぜひチームビルディングの手法を用いた組織開発を進めていってください。