「偏回帰係数」の偏は何から来てるの?

そう思った方、かなり鋭いですね。
実はこの「偏」には、統計学的にとても重要な意味が込められているんです!
「偏回帰係数」とは?
まずは言葉の全体像から見てみましょう。
回帰係数(regression coefficient)とは:
回帰分析において、「ある説明変数(X)が目的変数(Y)にどれだけ影響を与えるか」を表す数値のことです。
たとえば、多変量の線形回帰式がこうだったとしましょう:
このときの が「回帰係数」です。
では「偏」ってなに?
ここが本題です!
偏(partial)= 他の変数の影響を固定した上での効果
「偏回帰係数」は英語で Partial Regression Coefficient と言います。
partial(パーシャル)=部分的な、限られた、他の条件を一定にした
という意味ですね。
つまり:
ある変数を1単位だけ動かしたとき、他の変数の影響を“固定したまま”Yがどれだけ変化するか?
→ それが偏回帰係数なんです!
たとえ話で理解しよう!
例:大学の成績を予測する
目的変数:GPA
説明変数:勉強時間(X₁)、睡眠時間(X₂)
このとき、「勉強時間の偏回帰係数」が意味するのはこうです:
睡眠時間は変えずに固定したまま、勉強時間を1時間だけ増やしたとき、GPAがどれだけ上がるか?
つまり、他の変数(この例では睡眠時間)をコントロールした状態での影響度を表すんですね。
「偏」がつかない回帰係数との違いは?
実は、「単回帰分析(一つの変数だけで予測する分析)」の場合は、「偏」はありません。
たとえば:
この場合の は「単回帰係数」であって、偏回帰係数とは区別されます。
複数の変数があるときに初めて「他の変数の影響を取り除く必要」が出てくるので、
偏回帰係数(partial effect)という考え方が登場するのです。
数式的な意味
数式でも「偏」の意味ははっきりと現れます。
偏回帰係数 は、
「他の説明変数を固定して、 が 1 だけ増えたときの
の変化量」として定義されます:
つまりこれは「偏微分」の概念です。
「他の変数を一定にしたままの変化量」を求める手法なんですね。
まとめ:「偏」の意味をひとことで言うと?
「他の説明変数の影響を除いたうえで、ある変数がYに与える純粋な影響」を表すのが「偏回帰係数」です。
用語 | 意味 |
---|---|
回帰係数 | Xが1単位増えたときにYがどれだけ変わるか |
偏回帰係数 | 他のXの影響を固定したうえで、X₁がYに与える変化量 |
偏微分との関係 | 「他を固定して変化を見る」という点で共通 |
次に学ぶべきことは?
「偏」の意味を理解できたあなたには、ぜひ次の学習もおすすめです:
- 標準偏回帰係数(Standardized Partial Coefficients)
→ 各変数の単位をそろえて、影響度の大きさを比べる方法です。 - 共線性(マルチコリニアリティ)
→ 説明変数どうしが強く関連していると偏回帰係数が不安定になります。 - 偏相関係数との違い
→ どちらも「他の変数の影響を除く」指標ですが、定義が異なります。
「偏」という文字に隠れた意味をしっかり理解することで、
回帰分析の「読み解き方」がぐっと深まりますよ。
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投稿者プロフィール

- 代表取締役
-
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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