「記述統計」と「推測統計」の違い
統計学には大きく分けて2つのアプローチがあります。「記述統計」と「推測統計」です。この2つは、データを扱う際に異なる役割を持っています。ここでは、それぞれの意味や使い方、そして具体例について分かりやすく解説していきます。
記述統計とは?
記述統計は、データを「整理してわかりやすくする」ための手法です。大量のデータがあっても、そのままでは分析しにくいですよね。記述統計では、データを単純化し、全体の傾向や特徴を視覚的に理解できるようにします。
主な手法
- 平均: データの中心的な値を表します。例えば、クラス全員のテストの点数を足して人数で割ると、そのクラスの「平均点」がわかります。
- 中央値: データを大きさの順に並べたとき、真ん中に位置する値です。例えば、5人のテストの点数が70, 75, 80, 85, 90だとすると、中央値は80です。
- 最頻値: 最も頻繁に出現する値です。例えば、身長のデータを集めたとき、一番多い身長の値が最頻値です。
- 標準偏差: データの散らばり具合を示す指標です。平均からどれだけ離れているかを示します。標準偏差が小さいと、データは平均に近い値が多く、大きいとデータのばらつきが大きいことを意味します。
これらの指標を用いて、データの傾向を簡単に理解することができます。例えば、クラスの平均点が80点で、標準偏差が5点であれば、大体の生徒は75点から85点の間に集中していると考えられます。
グラフによる可視化
記述統計では、データを視覚的に表現することも重要です。よく使われるグラフの例には以下のようなものがあります。
- ヒストグラム: データの分布を棒グラフで表す方法です。
- 箱ひげ図: データの散らばりや外れ値を視覚的に示す図です。
- 散布図: 2つの変数間の関係を視覚化するためのグラフです。
これらのグラフを使うことで、データの全体像を視覚的に捉えやすくなります。
推測統計とは?
推測統計は、手元にある「一部のデータ」から「全体の特徴を推測」するための手法です。これが記述統計と大きく異なる点です。現実には、全てのデータを集めることが難しいことが多いです。例えば、全世界の全員にアンケートを取るのは現実的ではありません。そのため、ある集団(標本)を調査して、その結果から全体(母集団)の特徴を推測します。
主な手法
- 推定: 標本データから母集団の平均や割合を推測する手法です。例えば、1000人のアンケート結果から、日本全体の消費者の意見を推測することができます。
- 仮説検定: ある仮説が正しいかどうかを検証する手法です。たとえば、「この薬は効果がある」という仮説を検証する際に、実験データを基に判断します。
信頼区間とp値
推測統計では、結果にどれだけの信頼性があるのかを示すための指標として「信頼区間」や「p値」が使われます。
- 信頼区間: 推定値がどの範囲に収まるかを示すものです。例えば、「このアンケートの結果、支持率は45%±3%」といった具合です。この場合、実際の支持率は42%から48%の間にあると推測されます。
- p値: 仮説検定の結果が偶然である確率を示す値です。p値が小さいほど、結果は偶然ではなく、仮説が正しい可能性が高いとされます。
具体例
例えば、100人の学生にテストを実施し、その平均点が85点だったとします。ここで、クラス全体(1000人)の平均点を知りたいとき、推測統計を用いて100人のデータから1000人の平均点を推測します。
推測統計では、このように標本を基にして全体像を予測し、仮説を検証します。
記述統計と推測統計の違い
項目 | 記述統計 | 推測統計 |
---|---|---|
目的 | データを整理・要約する | データから全体を推測する |
扱うデータ | 手元にあるデータ | 一部のデータから全体を推測 |
主な手法 | 平均、中央値、標準偏差など | 推定、仮説検定など |
結果の範囲 | 収集したデータに限定される | データの一部から全体を推測する |
記述統計はデータをまとめ、見やすくする役割があり、推測統計はそこからさらに未来や未知の部分についての予測を行う役割を果たします。両者は異なる目的を持っているものの、どちらも統計分析に欠かせないアプローチです。
今後の学習の指針
これら2つの統計学の手法は、日常のさまざまなデータ分析や意思決定の場面で役立ちます。まずは記述統計を学び、データを整理する方法に慣れることが第一歩です。その後、推測統計を学ぶことで、手元のデータを使って全体を予測する力を身につけましょう。信頼区間やp値の意味を深く理解することで、より実践的な統計分析ができるようになります。
次のステップとしては、具体的なデータセットを使って自分でグラフを作成し、記述統計の結果を解釈してみてください。続いて推測統計に進み、仮説検定や推定の実践を行うことで、より深い理解が得られるはずです。
投稿者プロフィール
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セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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