【ログ変換と割り算の関係:掛け算の世界を“足し算”に変える魔法】

【ログ変換と割り算の関係:log(a ÷ b) = log(a) − log(b) の意味】

こんにちは。ゆうせいです。

この記事では、割り算の“本当の使われ方”を理解するために、「ログ変換(log変換)」という強力なツールについて解説していきます。

結論から言うと、「logを使うと割り算は引き算になる」んです!
しかも、これは統計や機械学習でも非常に役立つ性質なんですよ。


1. ログ変換とは?

ログ変換(log transformation)は、データの値に対数(logarithm)をとる操作です。よく使われるのは以下の2つ:

  • 常用対数:底が10の対数(log₁₀)
  • 自然対数:底がネイピア数 e の対数(ln)

今回は常用対数(log₁₀)を使います。

log₁₀(x)とは、「10を何回かけたらxになるか?」を表します。

たとえば:

  • log(10) = 1 (10¹ = 10)
  • log(100) = 2 (10² = 100)
  • log(1000) = 3 (10³ = 1000)

つまり、数を「指数の世界」に変換しているイメージですね。


2. ログの性質:掛け算と割り算を変換する

ログの最大の魅力は、「掛け算や割り算を、足し算や引き算に変える」性質にあります。

掛け算 → 足し算

\log(ab) = \log a + \log b

割り算 → 引き算

\log\left(\frac{a}{b}\right) = \log a - \log b

この変形は、たとえば計算の簡略化やモデルの構築時に非常に便利です。


3. 「掛け算の世界」は大きく広がる!

たとえば、年収や企業の売上、人口や感染者数など、「数字が10倍・100倍と増えていく」現象を考えてみましょう。

こうした指数的な増加はそのままだとグラフが極端になりすぎて、分析しにくくなります。

でも、ログ変換をすれば:

  • 極端に大きな値は圧縮される
  • 全体のばらつきが抑えられる

つまり、「虫眼鏡で細かい部分だけ見ていた状態」から、「俯瞰して全体像が見える地図」に切り替わるわけです。


4. 割り算との関係:比率を引き算で扱える!

ここが本題です。

たとえば、「利益率」は次のような式で定義されます。

\text{ProfitRatio} = \frac{\text{Profit}}{\text{Revenue}}

この式にlogを取ってみましょう。

\log\left(\frac{\text{Profit}}{\text{Revenue}}\right) = \log(\text{Profit}) - \log(\text{Revenue})

割り算という「比率」の関係を、引き算で扱えるようになります。

つまり、log変換を使えば「比率の世界」を「差の世界」に翻訳できるということです!


5. 具体例:どんなときに便利?

線形モデルで扱いやすくなる

線形回帰のようなモデルは、データが「足し算・引き算」で成り立っているときにもっとも使いやすくなります。

でも、現実の世界では「掛け算や割り算」で構成されていることが多い。

そこでlogを使えば:

  • 掛け算 → 足し算
  • 割り算 → 引き算

に変換できて、線形モデルで自然に扱えるようになるんです!

データのスケールが整う

  • 元の値が100万円〜10億円など広すぎると、機械学習モデルがうまく学習できない
  • log変換をすると、スケールが圧縮されて学習が安定する

成長率・倍率を比較しやすくなる

たとえば:

  • A社:100 → 200(2倍)
  • B社:10億 → 11億(1.1倍)

logを取ると:

  • log(200 ÷ 100) = log(2) ≈ 0.301
  • log(11,000,000,000 ÷ 10,000,000,000) = log(1.1) ≈ 0.041

どちらが相対的に大きな成長をしたかが数値でハッキリわかる!


6. 実用例:機械学習におけるログ変換

用途ログ変換が役立つ理由
売上や収入の予測スケールを圧縮し、大きな値の影響を減らせる
成長率・倍率を扱うタスク割り算を引き算に変換できるため、線形モデルで扱いやすくなる
ロジスティック回帰(logistic regression)確率の比(オッズ比)をlogで変換し、直線的に扱えるようになる

7. 数式のまとめ

  • 割り算のlog変換:

 \log\left(\frac{a}{b}\right) = \log a - \log b

 (a ÷ b のlogは、log a − log b)

  • 掛け算のlog変換:

 \log(ab) = \log a + \log b

 (a × b のlogは、log a + log b)


まとめ

  • log変換を使えば、割り算や掛け算の関係を引き算・足し算に変えられる
  • とくに比率や倍率などの分析において、logの引き算はとても有効
  • 機械学習や統計解析でも、logは不可欠なツール

今後の学びの指針:「基準化」の考え方へ

次回は、「統計量の基準化(standardization)」について解説します!

偏差値やzスコアのように、データをどのように“標準化”して比べやすくするかを見ていきましょう。
「なぜ平均からの差を使うのか?」といった素朴な疑問も丁寧に扱っていきます。

それでは、次回もお楽しみに!

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
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