【割り算で“信頼”を更新する:ベイズ統計と事後確率のしくみ】

こんにちは。ゆうせいです。
前回は、情報理論の中にある割り算――とくにKLダイバージェンスが「確率のズレ」を比率として測るという話をしましたね。
今回は、そこからさらに一歩進んで、「ベイズ統計(Bayesian statistics)」の世界を見ていきましょう。
実は、ベイズの考え方は非常に日常的です。
私たちは何気なく、「何かを観測して、信じていることをアップデートする」――そんな行動を毎日しています。
その仕組みを、数式で、割り算で、論理的に整理したものが「ベイズの定理」なのです!
1. ベイズ統計とは?
ベイズ統計とは、「事前の信頼」と「新しい証拠」を組み合わせて、「更新された信頼」を導くという考え方です。
つまり:
● もともと〇〇だと思っていたけど
● 実際に△△を観測したから
● 今は□□と思うようにした
こうした思考のアップデートを、確率と割り算で表現していきます。
2. ベイズの定理の式
まずは、超基本であるベイズの定理を確認しましょう。
(ピーエー条件付きビーは、ビー条件付きエー×ピーエー、わることのピービー)
この式は、次のように読むことができます:
項目 | 意味 |
---|---|
$P(A | B)$ |
$P(B | A)$ |
$P(A)$ | Aが起きる前の信頼(事前確率) |
$P(B)$ | Bが観測される全体の確率(正規化項) |
3. 割り算の意味とは?
この式のポイントは、分母にあるP(B)で割っているという点です。
なぜ割るのか?
→ 「全体に対して、自分の仮説がどれくらい説明力を持っているか?」
つまり、“信頼できる理由の比率”を示すために割り算が使われているのです。
4. 例で理解しよう!
【例:風邪かインフルか?】
あなたが熱を出しました。
そこで「風邪」か「インフルエンザ」かを考えます。
- インフルの事前確率:10%(P(flu) = 0.1)
- 熱が出る確率:
- インフルなら90%(P(fever|flu) = 0.9)
- 風邪なら30%(P(fever|cold) = 0.3) - 全体の熱発生確率P(熱)はどうなる?
ベイズの定理で「インフルの可能性」を計算:
P(fever)は全体として:
なので:
つまり、熱が出たときのインフルの確率は25%になるのです!
5. 図でイメージしよう!
【図1:事前・事後・割り算の関係】
- 円グラフA:事前確率(インフル10%、風邪90%)
- 縦棒グラフB:熱が出る確率(インフル90%、風邪30%)
- 結果:熱を見た後で、「信頼の重み」が再配分される
→ インフルの事後確率が10%→25%に“増える”
6. 割り算が果たしている本当の役割
この一連の計算で、割り算が担っているのは何か?
それは:
「さまざまな仮説の中で、自分の仮説がどれだけ相対的に優れているかを評価する」
ということです。
割り算がなければ、尤度×事前確率だけで信頼度を出してしまい、他の可能性とのバランスを無視してしまいます。
つまり、分母による正規化=全体の中での“位置づけ”がなければ、信頼の意味が成り立たないのです。
7. ベイズの応用:現代のAIにも使われている!
分野 | ベイズ的な活用 |
---|---|
スパム判定 | メールの単語がスパムに現れる確率で更新 |
医療診断 | 症状から病気の可能性を計算 |
強化学習 | 状態遷移と報酬の不確実性を扱う |
自然言語処理 | 単語の出現確率をベイズ的に更新 |
ベイズ最適化(機械学習) | 不確実な関数の最良値を推定(効率よくパラメータ調整) |
まとめ
- ベイズの定理は、「信頼の更新」を割り算の構造で表現したもの
- 割り算は「どれだけ相対的に説明力があるか?」という評価の道具
- 分母は全体を正規化し、分子は「自分の主張の強さ」
- 日常の意思決定や、現代のAIの多くに応用されている
次回予告:「割り算で読み解く因果推論:相関と因果の決定的な違いとは?」
次はいよいよ、因果推論(causal inference)の領域に入っていきます!
- 相関と因果の違いって?
- なぜ「割り算」だけでは因果を判断できない?
- 交絡因子・条件付き確率・介入の考え方とは?
複雑に見える因果の話も、「割り算的な考え方」から切り込むと、意外とスッと理解できます!
次回もどうぞお楽しみに!
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投稿者プロフィール

- 代表取締役
-
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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