キャリートレードとは?

キャリートレードは、異なる国の金利差を利用して利益を得る投資手法の一つです。簡単に言うと、金利の低い国の通貨を借りて、金利の高い国の通貨に投資する方法です。この手法をうまく活用すれば、金利差分の利益を得ることができますが、リスクもある投資法です。

例えば日本の金利は歴史的な低金利ですが、日本円を借りて、他国の通貨に投資する取引を円キャリートレードといいます。私は「円借りートレード」と覚えています。


キャリートレードの仕組み

キャリートレードの基本的な仕組みは次のように動きます。

  1. 低金利の通貨を借りる
    まず、金利が低い国の通貨(例:日本円やスイスフラン)を借りる、またはその通貨を持っている状態にします。借りたお金には低い金利しかかかりません。
  2. 高金利の通貨に投資する
    借りた低金利の通貨を売って、高金利の通貨(例:オーストラリアドルやニュージーランドドル)を購入します。その高金利通貨を保有することで、その通貨にかかる高い利子(利回り)を得ることができます。
  3. 金利差分の利益を得る
    低金利で借りたお金のコストよりも、高金利通貨から得られる利息の方が大きければ、その金利差分が投資家の利益になります。これがキャリートレードの基本的な考え方です。

キャリートレードの例

具体的な例を使ってイメージしやすく説明します。

  • 日本の金利が0.1%(低金利)
  • オーストラリアの金利が3.0%(高金利)

この状況下で、投資家が日本円でお金を借りて、そのお金をオーストラリアドルに変え、オーストラリア国内の金融商品に投資したとしましょう。オーストラリアドルを保有している間、その金利差である3.0%(オーストラリアの金利)− 0.1%(日本の金利)=2.9%の利益を得ることができます。


キャリートレードのメリット

  • 金利差から得られる利益
    低金利の国から借り入れを行い、高金利の国に投資することで、金利差がそのまま利益になります。特に、安定した為替市場では、この金利差が長期間にわたって得られるため、安定したリターンを期待できます。
  • 通貨の価値が上がればさらに利益
    高金利通貨(例:オーストラリアドル)の価値が上がれば、為替差益も得られる可能性があります。たとえば、オーストラリアドルを購入した後、その通貨の価値が上昇すれば、通貨を売る時点でさらに利益が増えることになります。

キャリートレードのリスク

キャリートレードは短期的に利益を上げやすい手法ですが、いくつかのリスクも伴います。

  1. 為替レートの変動リスク
    キャリートレードでは、金利の高い通貨を買っているため、その通貨の価値が下がると損失が発生します。たとえば、オーストラリアドルが急激に下落すると、いくら金利差で利益を得ても、為替差損によって利益が相殺されるか、それ以上の損失を出すことがあります。 例え:
    3%の金利差で利益を得ていても、通貨の価値が5%下がってしまえば、2%の損失が出てしまうということです。
  2. 金利の変動リスク
    高金利通貨の金利が下がると、キャリートレードの魅力は薄れます。たとえば、オーストラリアの金利が3.0%から1.0%に引き下げられた場合、金利差が小さくなり、得られる利益が減ります。
  3. 市場の変動による投資家の行動変化
    市場全体が不安定になると、多くの投資家がリスクを回避するためにキャリートレードを一斉にやめることがあります。このとき、高金利通貨が急激に売られ、その価値が大きく下落することがあります。

キャリートレードが注目される背景

キャリートレードが広く行われる背景には、世界的な金利差があります。特に先進国では、長期間にわたり低金利政策が続いている国が多く、これを利用して投資家がリターンを狙うために高金利通貨へ資金を流し込む傾向があります。


キャリートレードを行う際のポイント

もしキャリートレードに興味を持ち、実際に行う場合は、次の点に注意が必要です。

  • 為替リスクの管理
    為替レートの変動に対するリスクを理解し、リスクヘッジ(損失を抑える手段)を考える必要があります。たとえば、為替予約などの金融商品を利用して、為替リスクを軽減する方法があります。
  • 経済状況のチェック
    高金利通貨を発行する国の経済状況や、中央銀行の金利政策を定期的にチェックすることが重要です。金利の変更やインフレの進行がキャリートレードの利益に大きく影響します。
  • 市場のボラティリティ(変動性)
    市場全体の動向を把握し、急激な変動が起こりそうな状況では、キャリートレードを控えることも検討する必要があります。特に政治的・経済的な不安定要因が増えた際には、為替市場に大きな影響を及ぼします。

今後の学習の指針

キャリートレードの仕組みとそのリスク・メリットを理解した上で、次に学ぶべきポイントは以下です。

  • 為替ヘッジ手法の詳細
    キャリートレードに伴う為替リスクをどのように管理するのか、具体的なヘッジ方法を学んでみましょう。
  • 各国の金利政策と経済状況の分析
    キャリートレードにおいては、金利の動向が大きな鍵を握ります。各国の中央銀行の政策や、インフレ率、経済成長の見通しを常に把握することが重要です。
  • リスク管理の手法
    キャリートレードは大きなリターンを狙うことができる反面、リスクも高い取引手法です。そのため、どのようにしてリスクを分散し、管理するかを考えることが成功のカギです。

キャリートレードは非常にダイナミックな投資手法で、世界の経済状況や金利政策を理解する上で役立つ概念です。

投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
すべての無駄を省いた費用対効果の高い「筋肉質」な研修を提供します!
この記事に間違い等ありましたらぜひお知らせください。