ダンパー数から考える、他人のメンツを潰してはいけない理由 新入社員向け
こんにちは。ゆうせいです。
エンジニアとしてのキャリアを歩み始めるにあたり、技術力と同じくらい重要なのが、周囲との信頼関係の構築です。他者のメンツを潰す行為が、なぜプロフェッショナルとして致命的な損失を招くのか、人類学的な知見であるダンパー数と、DNAに刻まれた生存戦略の観点から解説します。
ダンパー数とエンジニアコミュニティの特性
ダンパー数とは、人類学者のロビン・ダンバーが提唱した、人間が円滑に安定して維持できる関係の人数的な上限(約150人)を指します。
この概念を高校生にも分かるように比喩で説明すると、スマートフォンのメモリ(RAM)のようなものです。メモリには限界があり、あまりに多くのアプリを同時に立ち上げすぎると、動作が重くなったりフリーズしたりします。人間にとっても、相手の性格や自分との関係性を詳細に記憶し、適切に交流できる人数には限界があるということです。
現代のエンジニアリングは、この150人程度の信頼のネットワークが多重に重なり合うことで成立しています。
DNAに刻まれた「集団内生存」と負の感情
現代では、転職によって所属する集団を移動することが容易になりました。しかし、人類の歴史の大部分において、集団からの離脱は死を意味していました。そのため、私たちの脳(DNA)には、集団内での評価を維持し、他者との致命的な対立を避けるための強力な本能が組み込まれています。
技術的な指摘であっても、公の場で相手のメンツを潰すような形で伝えてしまうと、相手の脳はそれを「社会的生存への脅威」と認識します。これは生物学的な防衛本能を刺激し、相手を建設的な議論ではなく、自己防衛のための攻撃や拒絶に走らせる原因となります。
メンツを潰すことによる実務上のデメリット
エンジニアが同僚やリーダーのメンツを潰すことには、客観的事実として以下のデメリットが存在します。
- ナレッジ共有の遮断メンツを潰された相手は、あなたに対して心理的な障壁を築きます。これにより、トラブルの予兆や重要な仕様の変更といった、円滑な開発に不可欠な情報の共有が滞るようになります。
- 長期的なリファレンス・リスクエンジニアの界隈は意外に狭いものです。ダンパー数の範囲内での悪評は、将来の転職先やプロジェクト先にも「協力しづらい人物」という情報として伝播するリスクがあります。これは生存戦略上、非常に非合理的な選択です。
他者の尊厳を守るメリット
- レビューの生産性向上コードレビューなどで相手の自尊心を尊重した伝え方を徹底することで、相手は防御姿勢をとる必要がなくなります。結果として、純粋に技術的な改善に集中できる環境が整います。
- チームの心理的安全性の向上お互いの尊厳が守られている環境では、失敗を隠さず報告できるようになります。これはシステム障害の早期発見や、技術的な課題の早期解決に直結します。
まとめと今後の学習ステップ
エンジニアの仕事は、コードを書くだけでなく、人間が運用するシステムを構築することです。私たちの脳には、原始時代から続く「集団内での安全」を求める仕組みが残っていることを理解し、技術的な正しさと他者への敬意を両立させてください。
これからの学習ステップとして、以下の順序で理解を深めていくことをお勧めします。
- 『心理的安全性』という概念を学び、チームのパフォーマンスと人間関係の相関を理解してください。
- アサーティブ・コミュニケーションの手法を習得し、相手を尊重しながら自身の意見を適切に伝える技術を身につけてください。
- コードレビューのプラクティスを学び、人格否定を避け、コードそのものを改善するための具体的なフィードバック手法を実践してください。
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