プロジェクトのマイナスのリスクに対する4つの対応

プロジェクトにおいて「マイナスのリスク」とは、プロジェクトに悪影響を与える可能性があるリスクのことです。これに対して、プロジェクトマネジメントではリスク対応戦略が用意されており、主に4つの対応方法があります。これらは、回避軽減転嫁受容という方法です。それぞれの対応方法を詳しく解説していきます。


1. リスク回避(Avoidance)

リスク回避とは、リスクそのものを避ける、つまりリスクの発生可能性を完全にゼロにすることを目指す対応です。言い換えれば、リスクが発生しないように計画や行動を変更する方法です。

例:

例えば、天候に左右されやすい屋外でのイベントを計画しているとします。この場合、雨が降るリスクがありますが、屋内の会場に変更することで雨による影響を完全に避けることができます。このように、リスクそのものを取り除くことがリスク回避の典型的な例です。

メリット:

リスクが完全になくなるため、リスク発生時の損失を心配する必要がなくなります。

デメリット:

リスクを回避するために、プロジェクトの計画やスコープ(作業範囲)を大きく変更する必要がある場合があり、それがプロジェクト全体に影響を与えることもあります。


2. リスク軽減(Mitigation)

リスク軽減とは、リスクの発生確率やリスクが発生した場合の影響度を減少させる対応です。リスク自体を完全に避けることはできない場合でも、その影響を最小限に抑えることで、プロジェクトに与えるダメージを小さくすることを目的としています。

例:

ソフトウェア開発において、システム障害のリスクがある場合、定期的なバックアップを取ることで、システム障害が発生した際にデータ損失のリスクを軽減できます。また、冗長なシステム設計を採用することで、障害が発生してもすぐに復旧できるように備えます。

メリット:

リスクの影響を抑えられるため、リスクが発生してもプロジェクト全体へのダメージが少なくなります。

デメリット:

軽減策にはコストや時間がかかることがあります。例えば、システムの冗長化には追加のサーバーやソフトウェアの導入が必要になるかもしれません。


3. リスク転嫁(Transference)

リスク転嫁とは、リスクの責任を他の組織や第三者に移す方法です。リスクそのものがなくなるわけではありませんが、そのリスクが発生した場合の影響をプロジェクトチーム以外の誰かに引き受けてもらうことで、リスクの影響を直接負わないようにします。通常、リスク転嫁には保険や契約が使われます。

例:

建設プロジェクトにおいて、事故や天災などによる損害が発生した場合に備えて、保険を契約することが典型的なリスク転嫁の例です。保険会社がリスクを引き受け、損失が発生した場合には保険金が支払われます。また、特定のリスクが伴う作業を外部の専門業者にアウトソースすることも、リスク転嫁の一例です。

メリット:

リスクが発生した際に、プロジェクトチームが直接損失を被ることを回避できます。また、リスク管理に長けた専門家や保険会社に任せることができるため、リスク対応が適切に行われやすいです。

デメリット:

保険料やアウトソーシングのコストがかかることが多く、結果的にプロジェクトの予算が膨らむ可能性があります。また、完全にリスクを転嫁できない場合もあります。


4. リスク受容(Acceptance)

リスク受容とは、リスクが発生することを許容し、そのリスクに対して何も特別な対策を取らない対応方法です。この対応を選ぶのは、リスクの影響が小さい場合や、リスクに対してコストをかけて対策を講じるほどではないと判断した場合です。受容には、消極的な受容と積極的な受容の2つの形態があります。

  • 消極的な受容:リスクが発生したときに、そのリスクに対処するための予備費や緊急対応を準備せず、状況が発生するのを待つ対応。
  • 積極的な受容:リスクが発生したときに備えて、予備費や緊急対応策を準備しておく対応。

例:

あるプロジェクトで、リスクの影響が比較的小さく、発生してもプロジェクト全体に大きな影響を与えないと判断された場合、そのリスクを受け入れて対策を取らないという選択が考えられます。たとえば、天候によって作業スケジュールが数日遅れるリスクを受け入れる、といったものです。

メリット:

対応策を講じるためのコストがかからないため、予算を節約できます。特に、発生確率が低く、影響が軽微なリスクに対しては有効です。

デメリット:

リスクが実際に発生した場合、対応策がないために損失が大きくなることがあります。そのため、あらかじめどれだけの損失を許容するかを明確にしておく必要があります。


まとめ

マイナスのリスクに対する対応は、プロジェクトの性質やリスクの重大度、発生確率に応じて適切な戦略を選ぶことが求められます。

  1. リスク回避は、リスクそのものを排除してしまう方法。
  2. リスク軽減は、リスクの発生確率や影響を小さくする方法。
  3. リスク転嫁は、リスクの責任を他者に移す方法。
  4. リスク受容は、リスクを受け入れて対策を取らない方法。

プロジェクトにおけるリスク対応は、これらの方法を組み合わせて柔軟に対応することが重要です。どの対応が最適かは、リスクの種類や状況に応じて判断されるため、事前にリスク分析を行い、対応方針を決めておくことが成功のカギになります。

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投稿者プロフィール

山崎講師
山崎講師代表取締役
セイ・コンサルティング・グループ株式会社代表取締役。
岐阜県出身。
2000年創業、2004年会社設立。
IT企業向け人材育成研修歴業界歴20年以上。
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